久しぶりに呼ばれた名前。それだけで少し寂しいような嬉しいような、何とも言えない感覚を抱いた。
返事する間もなく、ジャンは行ってしまう。

調査兵団の新しい団長の許へ走る姿。少し逞しい背中になったなぁと思った。

ミカサもすぐに行ってしまうと思っていたが、なぜか動かない。
不思議にも思って見上げたところで、ミカサが口を開いた。


「一つ。聞きたいことがある、ので答えてほしい」

「あ、はい」


思わず敬語になってしまった。
ミカサとはあんまり話したことがなく、親しいってわけじゃなかったからだ。


「ジャンとは、どういう関係？」

「え？」


意外な質問に即答が出来なかった。
まさかそんな質問がミカサから飛び出すなんて……実はミカサはジャンのこと好き、とか？

答えられないでいると


「サシャとコニーが……聞いてほしいって言う、ので聞いた」


と、一瞬にして私の不安が吹き飛ぶ答えを口にした。
視線を巡らせば、遠くでサシャとコニーがこちらをちらちら見ているのを発見した。


「あー……ジャンとは幼馴染だよ」

「幼馴染……。私とエレンとアルミン、みたいな？」

「そうだね。家が近所で、小さい頃からよく遊んでた。でも、ミカサたちと違うのは私たちは訓練兵になった途端に疎遠になったってことかな」

「なるほど。一緒にいるところを見たことなかったから、さっき話しているの不思議だった」


そりゃそうか。私も久々に話しかけられてびっくりしたくらいだもん。

その時だった。ピクシス司令が現れて集合の号令がかかったのは。


「行かなくちゃ」


今日は、ジャンにも話しかけられミカサとも喋った。いつもと違う日だったなぁと司令の許に行きながら思っていると、急にミカサが


「メルーナも調査兵団に来るといい」


と言いだたのである。思わず「はぁ？」と口にしそうになったが、続けて発せられたミカサの言葉に私は衝撃を受けることになった。


「そしたら、メルーナもジャンと一緒にいられる」

「……はい？」

「？　メルーナはジャンが好きなのでは……」


衝撃過ぎて思わず足を止めてしまった。
他の兵士が次々に横を通っていく。


「え？　や、え？　何で知ってるの？」

「訓練兵の時から有名だった。メルーナはジャンのことが好きって」


え、なぜ？
これは誰にも話したことないはずなのに何で！？


「行かなきゃ。集合かかってる」

「え、ちょ、ミカサ！？」


結局、答えを聞けないまま私は次の任務へと移行したのである。