それは会議の後、こっそりリヴァイの私室に行ったマーラ。そこで別の手作りクッキーをリヴァイにあげたのである。

その時にリヴァイに「さっきは悪かった」と謝られた。
曰く、あの場でリヴァイがクッキーを食べてしまうとエルヴィンが疑うと思ったのだという。
リヴァイが潔癖で、他人と皿をつつき合うのは勿論のこと他人が汚い手で触った食材を食べるのも嫌だというのを、エルヴィンは知っているのだ。

その状態でクッキーを食べてしまえば、当然エルヴィンは疑問に思うし場合によってはリヴァイとマーラの関係を疑うだろう。
それはめんどくさいと思ったリヴァイは頑なに拒否したのである。

本当のことを言えないので、ハンジに問い詰められた時にも辻褄合わせに「気持ち悪い」と答えたのである。

だが、マーラにはリヴァイの言動の真意が分かっていたし正直、全然ショックでも何でもなかった。

だから、一年経った今でもハンジが自分を心配し怒ってくれていることが心苦しかった。


「受け取ってくれなくても、一応と思いまして。自分だけ貰えなかったって結構悲しいことですよ」

「えー、まぁ……マーラがそれでいいならやってみてもいいかもしれないけど。でも私は断言するからね。リヴァイは悲しいなんてこれっぽっちも思わない！」


リヴァイが潔癖で他人が汚い手で触ったものが食べられないのは事実だ。
しかし、恋人であるマーラのは違う。昨年も、別に渡したクッキーは食べたのをマーラは知っている。

それはマーラが、汚い手でリヴァイにあげるものを作ったりしないと信用しているからだった。

要は、潔癖を理解し作ることが出来ると認めた人間が作った物は食べられるのである。


「とにかく作ってみます。ハンジさんのも作りますので、楽しみにしててくださいね！」

「ありがとう！　マーラの作ったクッキーは美味しいからね！　じゃ、私は行くよ」


ハンジは手を振って調理場を出て行った。