見つめてくる
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――……‥‥
クレハ・ベルティーニ。
恐らく、それが俺を見つめてくる女の名前だ。
女が誰か分からなかったが、アルミンと一緒に聞き込みをして得た情報だ。
恐らく、というのには理由がある。
そのクレハさんは俺達104期の一つ上の先輩らしいのだが、あまり人と関わる印象はなく他の先輩方もよく知らないという。
だから俺達が探しているのは、多分その人だろうということだった。
彼女はよく兵団本部の書庫で一人本を読んでいるらしい。
そういうわけで、俺とアルミンは午後の訓練前に書庫に寄った。
「どうだ、いるか。アルミン」
「えっと……」
そっとドアを開けて入る。資料がある書庫ではなく、こっちの娯楽のための書庫はこじんまりとしていていつも人が少ない。
気配がないかとも思われたが、アルミンが小さく声をあげた。
「いたか?」
「うん。奥のところに」
窓際の読書スペースに彼女はいた。間違いない、あの見つめてくる女だ。
集中しているようで、俺達が入ったことにも気づかないようだ。
「行くよ、エレン」
「……あぁ」
意を決して近付いた。
「あの、すみません。クレハ・ベルティーニさんですよね」
アルミンが声をかけるまで、彼女は気付いていなかった。
ゆっくりと顔を上げ、こっちを見るとほんの少し驚いたような表情を見せた気がする。
話しに聞いた通り、あまり感情が表に出るタイプじゃなさそうだ。
「ええ、そうですけど……何か……?」
漸く、この人がクレハさんだと確定した。
「あ、えっと……ほら、エレン」
「は!? 俺!?」
「そりゃそうだよ。用事があるのはエレンなんだから、自分で話した方が良いと思うんだけど」
尤もなことだ。
ここまで来たら腹を括るしかない。
「あの……えっと……」
「?」
「最近、俺のこと……見てますよね?」
俺は馬鹿か。
こんな聞き方、まるで告白みたいじゃねぇか。
ちょっと言葉選びに後悔したが、言っちゃったものはしょうがない。
「その、あんまり見ないで欲しいって言うか……視線が気になっちゃうんで、止めてほしいんですけど」
するとクレハさんは僅かに目を逸らした。
「ごめん……。そんなに見てた?」
「ええ、凄く」
「ごめんなさい。悪気があったわけじゃないんだけど、気を付ける」
相変わらず表情は変わらなかったが、悪い人ではなさそうだ。
「何か、ミカサみたいだね」
アルミンがふと俺だけに聞こえる声で言った。
「はぁ?」
「何となくさ」
いや、まぁそう言われたらそうかもしれないがまだ会ったばかりで、言葉もそれほど交わしてないからいまいち分からない。
「用件は以上?」
俺が考え込んでいると、クレハさんが問いかけて来た。
「あ、えっと。もう一つだけ良いでしょうか」
「何?」
「何で俺を見てくるんですか?」
あれほど聞くのを躊躇っていたのに、スラスラと理由を求めて口にしていた。
それは、この人が思ったより話せる人だと知ったからだろう。
クレハ・ベルティーニ。
恐らく、それが俺を見つめてくる女の名前だ。
女が誰か分からなかったが、アルミンと一緒に聞き込みをして得た情報だ。
恐らく、というのには理由がある。
そのクレハさんは俺達104期の一つ上の先輩らしいのだが、あまり人と関わる印象はなく他の先輩方もよく知らないという。
だから俺達が探しているのは、多分その人だろうということだった。
彼女はよく兵団本部の書庫で一人本を読んでいるらしい。
そういうわけで、俺とアルミンは午後の訓練前に書庫に寄った。
「どうだ、いるか。アルミン」
「えっと……」
そっとドアを開けて入る。資料がある書庫ではなく、こっちの娯楽のための書庫はこじんまりとしていていつも人が少ない。
気配がないかとも思われたが、アルミンが小さく声をあげた。
「いたか?」
「うん。奥のところに」
窓際の読書スペースに彼女はいた。間違いない、あの見つめてくる女だ。
集中しているようで、俺達が入ったことにも気づかないようだ。
「行くよ、エレン」
「……あぁ」
意を決して近付いた。
「あの、すみません。クレハ・ベルティーニさんですよね」
アルミンが声をかけるまで、彼女は気付いていなかった。
ゆっくりと顔を上げ、こっちを見るとほんの少し驚いたような表情を見せた気がする。
話しに聞いた通り、あまり感情が表に出るタイプじゃなさそうだ。
「ええ、そうですけど……何か……?」
漸く、この人がクレハさんだと確定した。
「あ、えっと……ほら、エレン」
「は!? 俺!?」
「そりゃそうだよ。用事があるのはエレンなんだから、自分で話した方が良いと思うんだけど」
尤もなことだ。
ここまで来たら腹を括るしかない。
「あの……えっと……」
「?」
「最近、俺のこと……見てますよね?」
俺は馬鹿か。
こんな聞き方、まるで告白みたいじゃねぇか。
ちょっと言葉選びに後悔したが、言っちゃったものはしょうがない。
「その、あんまり見ないで欲しいって言うか……視線が気になっちゃうんで、止めてほしいんですけど」
するとクレハさんは僅かに目を逸らした。
「ごめん……。そんなに見てた?」
「ええ、凄く」
「ごめんなさい。悪気があったわけじゃないんだけど、気を付ける」
相変わらず表情は変わらなかったが、悪い人ではなさそうだ。
「何か、ミカサみたいだね」
アルミンがふと俺だけに聞こえる声で言った。
「はぁ?」
「何となくさ」
いや、まぁそう言われたらそうかもしれないがまだ会ったばかりで、言葉もそれほど交わしてないからいまいち分からない。
「用件は以上?」
俺が考え込んでいると、クレハさんが問いかけて来た。
「あ、えっと。もう一つだけ良いでしょうか」
「何?」
「何で俺を見てくるんですか?」
あれほど聞くのを躊躇っていたのに、スラスラと理由を求めて口にしていた。
それは、この人が思ったより話せる人だと知ったからだろう。