三つ子妊娠中の妻誘拐事件
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この章の夢小説設定【概要】
二本立て!
三つ子騒動:爆豪勝己の妻である貴女は妊娠していた。一人目は、二人目はと人生計画があったのにある日の妊婦健診にてまさかの三つ子と判明!
色んな意味で不安になる貴女は、爆豪の両親に相談して――。
誘拐編:お腹が大きくなった頃、一人の知らない男に「ダイナマイトの嫁か?」と声をかけられ誘拐される。しかしその男は妙に優しくて何か事情がありそうだと思い――。
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――……‥‥
輪合さんの奥さんとご両親が私に深々と頭を下げた。
輪合さんが逮捕される時。奥さんは輪合さんを引っ叩いて「人様に迷惑かけるなんてバカなの!? そういうとこが嫌いで出ていったの!」と叫んだそうだ。ご両親も「バカ息子!」と激しく叱咤し、輪合さんは泣き崩れたという。
奥さんとご両親は私に対してひたすら謝罪の言葉を述べ、土下座までする勢いだったので「頭を上げてください。意外にも優しく扱ってくれたので私、元気です!」と力こぶを作った。
ピンピンしてますよアピールしたつもりだったが、隣にいた勝己からは
「そういう問題じゃねー」
と口を挟まれてしまった。
「分かってるよ、でも」
「でもじゃねぇ! どれだけ心配したと思ってんだ」
そこで丁度デクとチャージズマがやってくる。勝己の言葉は聞こえていたのだろう。デクが
「かっちゃん心配しすぎて寝れないし、助けに行く車中でも奈生さんに何かあったらコロスコロスうるさかったんだよね。奥さんとご両親横にいるのにさ」
と口にした。
「勝己、コロスは良くないよ。それに寝れなかったって……」
「おい、クソデク……何バラしとんだ……!」
「イテテテ! かっちゃんほっぺた引っ張らないでよ……!」
デクから発せられるほっぺたという表現に、その場にいた誰もが可愛いと思ったに違いない。
……私だけかしら?
「緑谷と俺がその度に、すみませんすみませんって謝って。爆豪、緑谷みたいにブツブツ言っててさー耳澄ましたら、聞かせらんねーくらいお怒りの言葉だったなぁ」
「アホ面黙れ」
それは良くないな。うん。
そう思った私は、輪合さんの奥さんとご両親に向かって
「すみません、人様のご家族に物騒なこと言ってたみたいで……」
と謝った。勝己が不満げにしているが、流石にヒーローが言っていい言葉ではない。
まぁ”あの”大爆殺神ダイナマイトが言うことだからとは思ってるかもしれないが。
「いえ、ダイナマイトの言う事は最もな意見ですから思わず賛同しました」
頭を下げる私に、奥さんは元気な声色で気にしないでと笑った。
賛同しましたっていう言葉は本当に共感しているような印象を受けた。
これは本当に結婚生活に何か想像を絶する苦労があったのかもしれない。
奥さんに続いてご両親も
「はい。もしあなたに何かあったら私たちが制裁を加えてました。本当に申し訳ない」
と答えた。深々と再度頭を下げた三人に、私はまた
「頭を上げてください」と口にする。お互いさっきから同じことを言っているような気もする。
引き時が分からずにいると、チャージズマが間を持ってくれて区切りがついた。
「でもよかったよ。何もなくて」
「まだ安心出来ねぇ。医者に診察させてからだ」
「見た目は元気そうだけど……お腹とかも痛がってる様子ないし」
「念の為だ」
デクと勝己が私達を見ながら、そんな会話を交わしていたことは私は知らない。
――……‥‥
その後、私はお医者さんに診てもらったが
「うん、びっくりするくらいねー超絶健康だよー! 本当に誘拐されてたのー? ってくらいね健康だよー」
って言われた。癖の強い喋りのお医者さんだった。
勝己と二人でほっと一安心したのだが、その後やっぱり誘拐中の行動について勝己から説教された。
防犯カメラ映像で私がパーキングエリアとかで逃げ出さなかった上に、自ら輪合さんとこに戻ったことについてである。
何で逃げなかったのか聞かれたから、正直に答えたら勝己にめちゃくちゃ怒られたのだ。
「そんなことだろうとは思ったが、ふざけんな! んなのお前が考えなくていいことだ。プロでもねーやつが余計なことすんな!」
私が、輪合さんが誘拐した心情を考えたりしているのを勝己は分かっていたらしい。
「だって! 見過ごせなかったんだもん」
「テメェは腹にガキ抱えた状態なんだぞ。軽率にも程がある。なんかあったら病院にも行けねー状態で他人を助けるだ? まずテメェが考えんのは腹にいるガキらの命だろうが!」
「……」
何も言えなかった。正論だからだ。
私がすべきことはお腹の子供の命を守ることだ。分かってはいるのだけど……。
葛藤した気持ちが顔に出てたらしい。
「なんか言えやァ!」
勝己の怒りは更にヒートアップし、手からバチバチ小さな爆発が起きている。
そこが、病院の駐車場ってこともあって少ないけど数人がチラチラとこちらを見ていた。近くにデクやチャージズマもいたのだけど(付き添ってくれた)、それを見てすっ飛んできた。
「か、かっちゃん! そのくらいにしてあげて!」
「ァ゛ア゛!? テメェは黙ってろ、出久」
「奥さんに対してそれは酷くね!?」
「夫婦の事に首突っ込んでくるんじゃねぇよ、アホ面」
チャージズマの顔を掴んで、キレ散らかす勝己は大人げない怒り方をすると思った。
けれど、それは私の行動が良くなかったからだ。怒るのも無理はない。分かってはいたけど……。
これ以上何か言っても勝己に反論ぶちかまされてデクとチャージズマが更にとばっちり食らうだけだし、喧嘩したいわけじゃないから素直に謝ることにした。
チャージズマの顔を掴む勝己の腕に手を添える。
「勝己、チャージズマ離してあげて。顔面骨折しちゃう」
「そんな強くしてねぇわ!」
「私が悪かったからその手をまず離してあげて。あと、その……周りにほら、ね? 順位落としちゃうよ」
チラチラ見てる周りは訝しむような目だ。
勝己は舌打ちをしながらもチャージズマを解放する。
「テメェは大袈裟」
「いや、メリメリ言ってたからね!?」
チャージズマは顔をさすりながら声を上げる。
そして痛かったと呟いていた。
デクが周りの人に「すみませんすみません、ただの仲いいじゃれ合いです!」とか言っている。
私は勝己の手を握ったまま話し始める。
「……あのね、見捨てられないと思ったの。普通の敵とは違って、何か抱え込んだものがあってそうなったんじゃないかって思ったら……。けど、今の私が優先して守るのはこの子たちなんだよね」
お腹にそっと片手をあてる。ごめんねと心の中で呟いた。
「分かったなら良い。二度と心配かけんな」
「ごめんなさい……」
するとデクが歩み寄ってきて私に言う。
「プロのヒーローだって、手の届かない知らないところは助けてあげられない。本当は助けてあげたいけど、出来ないことの方が多いんだ。それはやっぱりどうしても仕方ないことだよ。だから手の届くとこは出来る範囲で最大限に助ける。その為に訓練してプロになったんだ。かっちゃんだってそう。……だから奈生さんは無茶しないでほしい」
「……はい、そうですね。本当にすみません」
デクも勝己と同じように思っているらしい。学校の先生みたいな指導をされた。……あ、先生だった。
「まわりくどい言い方しやがって。要はプロじゃねーからすっこんどけって話だろうが」
「そうよね、ごめんなさいデク先生」
「え!? 頭上げて! かっちゃん、僕そんな言い方してない!」
「でもそういうことだろうが。それと人の嫁に説教してんじゃねー」
「ええ! 説教じゃないってば! というか何その言い草!」
ぎゃーぎゃー言い合う二人は幼馴染なんだなぁと思わせる。仲良しだな本当に。
「あれでもさ、かっちゃんすっげー心配してんのよ。分かってると思うけどさ」
「チャージズマ……痛いの直ったんですか?」
「え? ああ、もう大丈夫! ってか敬語じゃなくていいのにー前も言ったっしょ?」
「いや、でも……何となく……ね」
「意味深な言い方するじゃん。でもまぁとりあえず、奈生ちゃんもお腹の子供も無事で良かった良かった」
色んな人に私は助けられた。
改めてお礼をしないとなと思いつつ、未だに口論?している勝己たちをそろそろ止めようと一歩踏み出した。
めでたしめでたし……?
――……‥‥
〈爆豪光己視点〉
某日。
「爆豪さん! もう少し! もう少しよ!」
「駄目駄目駄目!! 痛すぎる! 死ぬ!」
「死なないから大丈夫! ちょっと、中本さんもう少しヒーリング個性強めて!」
「最大出力でやってます!」
「痛いー! 無理無理無理!」
「最大出力なのにこの痛がりようは尋常じゃないわ!」
奈生ちゃんが分娩室に入って一時間くらい経っただろうか。難産なのかなんなのか分からないけど、中からけたたましい声が漏れ出ていた。
勝さんと顔を見合わせると、心配そうな表情をしていた。奈生ちゃんのご両親も祈るように手を合わせている。
「大丈夫かな……」
勝さんがぼそりと呟いた。
「三人も一気に産むってなったら体力も使うだろうけど……きっと大丈夫」
今までの私が知る奈生ちゃんを思い出す。
色んなことがあったなと記憶が蘇る。
勝己が結婚したい女がいると連れてきたときは、上手くやっていけるか心配になったものだ。でも勝己の暴言に近い言葉の悪さにも平気で受け答えする様子。勝己の顔色をうかがうような感じではなく、自分をしっかり持っている様子などを少なからず見てきた。
妊娠した子供が三つ子だと打ち明けてくれた時も勝己のことを考えてくれているなって思った。
勝己も奈生ちゃんにはベタ惚れだと感じる。何ってあるわけじゃないけど、親の勘だ。何となくそうじゃないかって気がしている。
だから大丈夫じゃないと困る。
「……というか、勝己はまだなの!?」
「光己さん落ち着いて……!」
「あの子はいつ来るの!? 遅い!」
スマホを取り出した私に、奈生ちゃんのお母さんが「勝己くんプロヒーローだから、忙しいんじゃないでしょうか。だから待ちましょう」とやんわり言ってきた。
「プロヒーロー関係ないです。さっさと来いって言ってやります!」
「光己さん、落ち着いて。勝己だって楽しみにしてるんだから絶対来るよ!」
するとスマホをポチポチいじっていた奈生ちゃんのお父さんが「もうすぐ来ると思います」と言って、持っていたスマホをこちらに向けた。
「これは?」
「SNSです。トレンド入りしてますよ。“ダイナマイト”“子供生まれる”って」
「え?」
教えてもらったSNSを手持ちのスマホで見ると、確かにトレンド入りしていた。
詳細を見ると様々な人の投稿があったが
[ダイナマイト、ヒーローインタビュアーを無視して去る。ショート「子供が生まれるらしい」]
という速報記事がトップに上がっていた。
あの子はまた……一言くらい断って去れっての!
しかしネット上では沢山の祝福メッセージが溢れていた。
奥さん頑張れ、という書き込みもあったりして第三者ながら胸が熱くなった。
その時だ。廊下にざわざわとした空気が漂う。同時に「走らないでください!」と声が響く。バタバタと足音が聞こえ――
「悪い、遅くなった。間に合ったか?」
勝己がヒーロースーツのまま姿を現した。
「遅いわよ!」
「大丈夫だよ。間に合ってるよ」
私と勝さんの言葉を横目に、奈生ちゃんのご両親に挨拶する勝己。そういうとこはちゃんとする子で良かった。
分娩室からはずっと奈生ちゃんの「痛い、無理、死ぬ」という叫ぶ声と、お医者さんや助産師さんの「死なないから、大丈夫、息吸って!」という声が聞こえている。
「痛い、二度と産まないんだからー!」
「はいはいそう言って何回も産んでる人いっぱいいるから大丈夫よー」
「いや無理! 四人は無理!」
「まだ一人目もこれから出るって言うのに、四人目の話は早いって」
「先生! もう無理なの!」
「はいはい」
奈生ちゃんの声が大きすぎて先生たちの声も大きくなってるのか筒抜けだ。
「大丈夫……なんか?」
初めての出産現場で勝己は珍しくビビっているらしい。
大丈夫よきっと、と声をかけるしかなかった。
――……‥‥
〈奈生視点〉
「はいはい、最後の一人出たよ。おめでとう! よく頑張りました!」
「男の子三人、元気に泣いてますよ」
泣き声三人分の中でお医者さんと助産師さんの声が辛うじて聞こえ、やっと終わったという気持ちだった。
「死ぬかと……」
「大丈夫、ちゃんと生きてるわ。ちょっと待ってね処置しちゃうから」
疲労困憊。
お医者さんが何か色々やっているけど、もうされるがまま。動きたくない。
「ご家族来てるけどどうする? 旦那さんだけ入ってもらう? それとも入ってもらわずもう少し待ってもらう?」
「どっちでもいいです……夫に聞いてください……」
助産師さんの一人が分娩室を出ていき、他の助産師さんたちが赤ちゃんを連れてくる。
「お顔を見てあげて」
「……やっと会えたね」
三卵性の三つ子、しかも全員男の子だとは検診で聞いていた。
不思議な気持ちだった。顔が全員違う。よく見たら、髪の毛の色素も違う気がする。
この子たちがお腹にいたと思うと、感慨深かった。
「旦那さん来ましたよ」
分娩室を出ていった助産師さんが勝己を連れて戻ってきた。
「勝己、お疲れ様」
「……お疲れ様なのはお前の方だろ」
恐る恐る歩み寄ってきた勝己は子供たちの顔を見ると、少し涙ぐんでいる気がした。
「生まれたんか」
「生まれたんよ」
助産師さんに抱っこしてみますかと言われ、勝己はぎこちない動作で赤ちゃんをその腕に抱いた。
「……奈生に似とる」
「その子は長男くんです」
感動して言葉が出ない雰囲気を感じ取った。
「次、次男くん」
「お、おぅ」
三人の子供が一気に生まれると抱っこも代わる代わるになりそうだなぁと見ていて思った。
三男も抱っこをすると、勝己は「生まれて来てくれてありがとな」と呟いた。
まさかあの大爆殺神ダイナマイトがそんな言葉を口にするとは思ってなかったのか、助産師さんたちが少し驚いた表情をした。でも彼女たちは何も言わず、見守ってくれている。
「奈生」
「ん?」
「お疲れ様。俺の子を生んでくれてありがとう」
真っ直ぐこちらを見て軽く微笑む勝己に、私も笑んで頷いた。
「これから俺、頑張る」
「頑張りすぎは良くないからほどほどにね」
「奈生もこいつらもちゃんと守る。だから……」
「一緒に頑張ろうね」
優しい顔をするこの人と、元気な男の子三人を見つめながら私はこれからの人生を想像した。
きっと大丈夫。きっと楽しく幸せな家庭になる。
明るい未来に希望を抱いて生きていく。
終わり
●あとがき●
こんなに長くなる予定じゃなかったんですけど……。
2ヶ月ちょいくらい執筆してました。体調不良や仕事忙しくて書いてない日もありましたが。何とか書き終えました。
元々は三つ子騒動で終わる予定だったんですけど、なんか物語として味気ないと思ったので誘拐編を追加したら長くなってダラダラ……。
ちょっとあんま満足いく出来ではないんですが、せっかく書いたのでそのまま公開します。
爆豪夢は難しいものがあって、ツンツンした爆豪はかけそうなんですが優しい爆豪は難しい(笑)
そう思いました。
とりあえず終わりです!ありがとうございました。