――……‥‥

「ンだこれ！！」


騒動解決の数日後。
家でのんびりしていると、スマホ片手にわなわな震えて叫ぶ勝己。私は「どうしたの？」とマグカップ片手に横から画面を覗き込んだ。
そこには


［大爆殺神ダイナマイトとフラワーウェーブの衝撃馴れ初め――雄英高校のトイレで付き合う！？］


という記事タイトルがデカデカと書かれていた。


「あれま」

「あれまじゃねぇええ！　テメェのせいだろ！」

「ごめんって。だって勝己がいかに桃兎の理想とかけ離れてるか知ってほしくて」


怒る勝己を無視してソファに腰掛け、マグカップ内の飲み物を飲む。

クソが、誰だよ記事にしたやつ！
とかなんとか言っている。
私も自分のスマホを開いて、該当の記事をネットで探す。

公園での出来事の次の日には、［大爆殺神ダイナマイトの本命はヒーローフラワーウェーブ！］という記事も出ていた。そこから私たちの記事が時々上がっていたのだが、今日はまさかあの馴れ初めが上がるとは。

勝己は見ている記事と同じものを見つけた私は、中身を読んでいく。
［大爆殺神ダイナマイトの真の熱愛相手がヒーローフラワーウェーブと公になったが、二人の馴れ初め話に注目が集まっている。有名動画配信者・桃兎と大爆殺神ダイナマイトやフラワーウェーブ、セロファンら有名ヒーロー達が街中の公園で言い争うのを目撃した人に取材を行うことができた。］

そう始まっている記事を呼んでいくと、あの日の会話が赤裸々に語られていた。
この記事を書いた人はヒーロー信者かもしれない。
敵相手に行うようなやり取りだったのにもかかわらず、いいようにいいように書いてくれている気がした。

記事を読んでいると、勝己が隣にドカッと腰を下ろした。


「春花、弁明しろやァ……」

「えー何を」

「何をじゃねぇよ。これじゃ俺が空気読めねークソ男みたいじゃねーか！」

「……フレンチレストラン」

「行きたいなら連れて行ってやるが？」


チラッと見れば勝己は苛立ちを隠しきれてない顔をしていた。苛立ちというか、ふざけんなっていう顔だ。


「んー興味ないからいいや」

「知っとるわ！　だから弁明しろって言っとんだ」


本当は、フレンチレストランなんて興味ないしデートも庶民派っていうのも私がそれで良いと思っているから。
ラーメンだろうかファストフード店だろうか、そこらへんの居酒屋だろうが勝己といれるならどこでもいい。
それを知っているからこそ、勝己もおしゃれな店とかわざわざ行かないのである。


「でもさ」

「あ？」

「ちょっとくらい行こうって言ってくれても良いじゃん？　格式高いとこは嫌だけど、私だっておしゃれな店とか行ってみたいなー」


勝己に寄りかかって見上げれば、少し言葉に詰まっていた。
「あー」とか言っている。


「弁明してもいいけど、トイレで告白されたのは事実だし？」

「……悪い。けど、話の流れであん時は……今言わねぇと先にとられるって思った」

「そういうのも含めて全部好きだよ」

「……そうかよ」

「勝己は？　私が変ったって皆言うけど、昔の私の方が良かった？」

「前も言った。んなことで嫌いにならねぇ。それ変わったって言っても良いとこを出せるようになった。そういうんじゃねーの？」

「え？　どういうこと？」

「本質は一緒だ。高校ん時から、大胆なこと時々するやつだってのは知ってた。だからそこに惚れた。でも昔は色々と自信なかっただろ。けど、ヒーローとして自信ついてそれが強く出るようになった。俺はそう思っとる」


勝己の言葉に今度は私が言葉を詰まらせる。
そんな風に思ってくれてたんだって。今まで変わったと言われ、性格が変わったと言われてるのだと思った。実際私自身もそう思ってた。
だから、勝己が好きになってくれた頃の私と今の私全然違うんだろうなって。
心変わりされるのもあるんじゃないかって思っていた。

浮気はしない人だって信じてたから、別れを言われてない以上今は大丈夫だって思い込もうとしていたと思う。
それでも不安が拭いきれなくなって、梅雨ちゃんに泣きついて勢いで乗り込んで。

でも勝己が今も側にいてくれてるのは……。


「ありがとうね。でもそんなこと言ったら、私ますます調子のるかもしれないよ」

「度が過ぎんのはヒーローとして良くないが、俺としては……まぁ助かった」

「皆に怒られちゃった」

「そりゃあな。ヒヤヒヤすっから」

「もうちょっと落ち着くよう心掛けるね」


そう伝えれば、勝己はそうかと言うように鼻で息を吐いた。


「んで？」

「ん？」

「しゃれた店行きてーって、どこがいいんだよ」


連れてってくれるの！？
と聞いてみれば、場所によると言われた。
それでも嬉しいなって思った私は思考をフル回転させて


「スタバ！」


って答えた。
すると勝己は一瞬ポカンとした表情をした。


「そんなとこで良いんか？」

「え？　めっちゃおしゃれじゃん！　なんかよく分からないけど、長ったらしい名前でカスタムとかするんでしょ？　おしゃれじゃん！　え、逆に何があるの！？」

「いや、ナイトプール付きのホテルとか言われるんかと」

「ナナナナナイトプール！？　破廉恥な！　それにそういうとこって高いんでしょ！？　ハリウッドセレブの子供達が利用するところじゃん！」

「……どういう認識しとんだ。決めた。ナイトプール付きのホテル行くぞ」

「え！？　スタバ……」

「それも近々連れてったるわ」


有言実行。
勝己は翌週スタバに連れて行ってくれ、一月後にはナイトプール付きのホテルに連れて行ってくれた。
結構楽しく過ごしていると弁明しろやって言ってくるので、しょうがないからSNSに写真をあげてこう付け加えた。


［ナイトプール、初めてきました！　私は普段デートならどこでもいいと思ってたんですけど、ふとおしゃれな所にも行ってみたいと思って言ったら快く連れてきてくれました！］


これも結構勝己の推敲が入ったことは内緒で。

そしてしばらく勝己のSNSの方は「今日はファミレスが良いっていうからファミレスきた」「たこ焼き食べてーってことでたこ焼き買った」「今日は俺が麻婆作った。食べたいといったから作ったが、俺好みの食べれんのか？」とか投稿されており元A組の皆んなから「みみっちい……」と言われていたのであった。
（あ、食べたいっていったのは嘘ではないよ）






終わり


●あとがき●
長くなっちゃた。こんなつもりじゃ……。
爆豪夢でしたがなかなか書いてるうちに難しくなってしまいました。矛盾点とかあったら申し訳ない。
……普通だったら展開的に、爆豪くんが勝って帰って来て迎えに来るのを待ってると思うんですよ。途中までそういう流れだったし。
でも今回ぶち壊していくタイプを書いてみたくてこういう展開になっちゃいました。
でもオーソドックス展開なのも今後書いていきたいなとは思います。

あとがき終わり