こころ〜家族になる〜
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「自分で決めろ? 分かった」
その言葉に二人は安心した顔つきになる。
しかし総司はこれまでにない絶対零度な眼差しを向けて答えた。
「じゃあ……二度と僕の前に現れないで」
「……なっ!」
「大切な“家族”に近付かないで。もし近付いたら……殺すよ?」
物騒な言葉に祖父母だけでなく、平助まで顔を青くしている。
「忘れてないよ。あなた達が僕にやったこと。腐りかけのバナナ一本が夕食だったり、唐揚げの衣のクズばっかりくれたり、お腹を壊してもだらしないとかいって一日中放置だったり……忘れるわけないじゃない。それともそれを広い心で許すって言うと思ったわけ? なかったことにして、自分達に尽くせって言いたいの?」
総司の発言に平助は驚いている。総司がかつてそのような境遇にあったことすら知らなかったのである。
「あれは、私たちも反省しているわ。これからはね、貴方のために私たちも――」
「絶対嫌だ。あなた達見てたら、僕の父さんが母さんと駆け落ちして逃げたのも頷けるよ。……僕は今が幸せなんだ。どんなに優遇されても、今以上の幸せなんてあなた達じゃ僕に与えられない」
「っ……」
その時であった。
「え!? 千夏ちゃん!?」
妹の名前が聞こえて振り返ると、鬼のような形相で走ってくる千夏が見えた。
その後ろに呆然と立つ千夏の友達、雪村千鶴がいた。
そして千夏は
「私のお兄ちゃんに近付くなー!!」
と、突進してきたのである。
これにはそこにいる誰もが目を見開いた。
鞄を振り回す千夏に祖父母は何歩か下がる。
「千夏、何やってるの?」
「お兄ちゃん大丈夫!? この人たちまた来たの!?」
「大丈夫だけど、よく覚えてたね。顔。僕なんか一瞬誰だか分からなかったのに」
忘れられるわけがなかった。大好きな兄が嫌がることをした挙句、自分勝手に突然引き取りたいと来て、叶わないと分かると暴言を吐き、去り際に自分を睨み付けた奴らだ。
強烈すぎて脳裏にその顔がこびりついていた。
総司の祖父母は千夏の顔を見るなり、あの時の娘だと分かったらしく良い顔をしていなかった。
「千夏は下がってて。もうこの人たちは帰るから」
ファイティングポーズを取る千夏を下がらせ、総司は前に出た。
そこで追いついた千鶴が平助に事情を聞いている。
「今度、僕の前に現れたらストーカーで警察に突き出すから。今すぐ消えて。そして二度と来ないで」
道行く人がひそひそと話し始めたのに気付いたのか、祖父母は顔を見合わせ悔しそうな表情をした。
そして
「良いわ。貴方なんてやっぱり私たちの孫じゃない! あの白状な息子とも思いたくない男と、淫乱女の子供なんてやっぱり気持ち悪いわ!」
と吐いて、逃げるように去って行ったのである。
「総司、大丈夫か?」
真っ先に口を開いたのは平助だった。
「何が?」
「だって、あんなひでぇこと言われてさ……」
「え? 全然。全く何も思わないけど」
ケロッとしている総司に、平助は納得していないようだった。
「何で平助がそんな顔するの」
「だってよ、総司のじいちゃんとばあちゃんだろ? その人たちに気持ち悪いとか言われたり孫じゃないとか言われたり……」
「別に。むしろ孫だと思われている方が気持ち悪いんだけど。……あぁ、そうか平助には話してなかったね。僕は昔色々あってあの人たちに捨てられて、施設に行って近藤さんに引き取ってもらったんだよ」
簡潔に説明する。その事実に平助だけでなく千鶴も驚いた。
「あ、同情なんてしないでね。今の方が何倍も幸せなんだから」
「いや、ってかまじか……総司が近藤さんのこと何でそう呼ぶのかって思ってたけど、そういうことだったのか」
「ってことは、千夏ちゃんと先輩って……」
漸く口を開いた千鶴は、衝撃をくらったかのように目を丸くしていた。
「うん、血は繋がってないよ」
「でもお兄ちゃんとは血が繋がってないって感覚がないよね!」
「そうだね。気付いたらそのこと忘れちゃってるよね」
それから平助は家が近くの千鶴と一緒に、総司は千夏と帰路についた。
「ただいまー! お母さん、お腹すいた!」
「おかえり千夏。あら、総司も一緒だったの。もうご飯食べる? 出来てるわよ」
「勿論!」
「千夏って昔っからそうだよね。まず手を洗って荷物下ろして着替えなよ」
――初めてこの家に来た日からずっと、総司の帰る場所は此処なのだ。
END
その言葉に二人は安心した顔つきになる。
しかし総司はこれまでにない絶対零度な眼差しを向けて答えた。
「じゃあ……二度と僕の前に現れないで」
「……なっ!」
「大切な“家族”に近付かないで。もし近付いたら……殺すよ?」
物騒な言葉に祖父母だけでなく、平助まで顔を青くしている。
「忘れてないよ。あなた達が僕にやったこと。腐りかけのバナナ一本が夕食だったり、唐揚げの衣のクズばっかりくれたり、お腹を壊してもだらしないとかいって一日中放置だったり……忘れるわけないじゃない。それともそれを広い心で許すって言うと思ったわけ? なかったことにして、自分達に尽くせって言いたいの?」
総司の発言に平助は驚いている。総司がかつてそのような境遇にあったことすら知らなかったのである。
「あれは、私たちも反省しているわ。これからはね、貴方のために私たちも――」
「絶対嫌だ。あなた達見てたら、僕の父さんが母さんと駆け落ちして逃げたのも頷けるよ。……僕は今が幸せなんだ。どんなに優遇されても、今以上の幸せなんてあなた達じゃ僕に与えられない」
「っ……」
その時であった。
「え!? 千夏ちゃん!?」
妹の名前が聞こえて振り返ると、鬼のような形相で走ってくる千夏が見えた。
その後ろに呆然と立つ千夏の友達、雪村千鶴がいた。
そして千夏は
「私のお兄ちゃんに近付くなー!!」
と、突進してきたのである。
これにはそこにいる誰もが目を見開いた。
鞄を振り回す千夏に祖父母は何歩か下がる。
「千夏、何やってるの?」
「お兄ちゃん大丈夫!? この人たちまた来たの!?」
「大丈夫だけど、よく覚えてたね。顔。僕なんか一瞬誰だか分からなかったのに」
忘れられるわけがなかった。大好きな兄が嫌がることをした挙句、自分勝手に突然引き取りたいと来て、叶わないと分かると暴言を吐き、去り際に自分を睨み付けた奴らだ。
強烈すぎて脳裏にその顔がこびりついていた。
総司の祖父母は千夏の顔を見るなり、あの時の娘だと分かったらしく良い顔をしていなかった。
「千夏は下がってて。もうこの人たちは帰るから」
ファイティングポーズを取る千夏を下がらせ、総司は前に出た。
そこで追いついた千鶴が平助に事情を聞いている。
「今度、僕の前に現れたらストーカーで警察に突き出すから。今すぐ消えて。そして二度と来ないで」
道行く人がひそひそと話し始めたのに気付いたのか、祖父母は顔を見合わせ悔しそうな表情をした。
そして
「良いわ。貴方なんてやっぱり私たちの孫じゃない! あの白状な息子とも思いたくない男と、淫乱女の子供なんてやっぱり気持ち悪いわ!」
と吐いて、逃げるように去って行ったのである。
「総司、大丈夫か?」
真っ先に口を開いたのは平助だった。
「何が?」
「だって、あんなひでぇこと言われてさ……」
「え? 全然。全く何も思わないけど」
ケロッとしている総司に、平助は納得していないようだった。
「何で平助がそんな顔するの」
「だってよ、総司のじいちゃんとばあちゃんだろ? その人たちに気持ち悪いとか言われたり孫じゃないとか言われたり……」
「別に。むしろ孫だと思われている方が気持ち悪いんだけど。……あぁ、そうか平助には話してなかったね。僕は昔色々あってあの人たちに捨てられて、施設に行って近藤さんに引き取ってもらったんだよ」
簡潔に説明する。その事実に平助だけでなく千鶴も驚いた。
「あ、同情なんてしないでね。今の方が何倍も幸せなんだから」
「いや、ってかまじか……総司が近藤さんのこと何でそう呼ぶのかって思ってたけど、そういうことだったのか」
「ってことは、千夏ちゃんと先輩って……」
漸く口を開いた千鶴は、衝撃をくらったかのように目を丸くしていた。
「うん、血は繋がってないよ」
「でもお兄ちゃんとは血が繋がってないって感覚がないよね!」
「そうだね。気付いたらそのこと忘れちゃってるよね」
それから平助は家が近くの千鶴と一緒に、総司は千夏と帰路についた。
「ただいまー! お母さん、お腹すいた!」
「おかえり千夏。あら、総司も一緒だったの。もうご飯食べる? 出来てるわよ」
「勿論!」
「千夏って昔っからそうだよね。まず手を洗って荷物下ろして着替えなよ」
――初めてこの家に来た日からずっと、総司の帰る場所は此処なのだ。
END