こころ〜家族になる〜
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それから
――六年。
近藤勇は、夢だった学校を建て学園長になっていた。そして総司はそこの二年生、千夏は一年生で在学していた。
「総司! お前、さっきの授業のあれなんなんだよ!」
「何って、何のこと?」
「とぼけんじゃねぇ! 総司のせいで俺が土方先生に怒られたじゃんか!」
総司は今や友達も出来て、むしろ人に干渉したい男の子へと成長していた。
ふと廊下から外を見下ろすと見知った顔を見つけた。友達と楽しそうに会話するその様子を見て自然と総司も嬉しそうな顔になった。
「総司聞いてるのか!?」
「え? あぁ……平助さ、何でも人のせいにするのは良くないよ」
「はぁ!? 明らかにさっきのはお前のせい――って、何見てんだ?」
総司が見ている場所に視線を向ける。
「あ、千鶴と千夏じゃん。本当仲良いよなぁ」
「そりゃ、この学園で女の子はあの二人しかいないんだし」
「まぁ、そうだけど……総司、本当シスコンだよなぁー……いってー!!!!! 叩くことねぇだろ!?」
平助の頭を叩いた総司は教室に戻った。
近藤一家の家族になり初めて家族と呼べるものが出来た総司にとって、もはや幼い頃の出来事は遠い過去になっていた。
だからか、ある日突然目の間に現れた彼らが一瞬誰だか分からなかったのである。
「総司なの?」
テスト週間で部活がない日。友達の藤堂平助と校門を出て直ぐだった。
自分を呼ぶ声が聞こえ、視線を向けるとそこには老夫婦らしき人物が立っていた。
「……誰ですか?」
そう呟いて、はっとした。
蘇る記憶。それはかつて自分を捨てた祖父母であった。
「やっぱり総司ね! 大きくなって!」
昔、近藤家に訪れた頃よりも老けている。
しかしその声は変わっておらず、総司にとって耳障りで仕方がない。
眉間に皺を寄せる総司に平助が「知り合い?」と聞く。
「あら、お友達? 私、総司の祖母です。こっちはおじいちゃんよ」
突然の祖父母の登場に平助は驚くものの、律儀に自己紹介を始めた。
「……平助、こんな人たちに自己紹介なんてしなくていいよ」
やっとのことで声を振り絞り、平助と祖父母の間に入った。
「え、でもよ」
「何しに来たの」
平助の言葉を遮り尋ねた。
「何って、貴方を迎えに来たの」
「……何の冗談?」
「冗談じゃない。それにしても、お前本当にがたいが良くなったなぁ。あんなに小さかったのに」
祖父の言う通り、総司は昔では想像出来ない程に体つきが良くなっていた。
それもこれも父である近藤が剣を習わせたからである。身長も176㎝と高くなった。
黙り込む総司に祖母が続ける。
「実はあれから何度か貴方を見てたのよ」
堂々とストーカーしてました、と言われ良い気がするわけない。
あからさまに嫌そうな顔をする総司。
「様子を見てたんだけど、もう頃合いかなって思って。もう十七歳でしょ? そろそろ自分の意思を持ってる頃だと思って」
「どういうこと」
「昔はまだ子供だったから、あの近藤という人に言わされてたんでしょ? でも今なら分かるわよね? 何たって、私たちは貴方と血が繋がってるもの」
隣でうんうん頷く祖父。
総司は吐き気がした。
「馬鹿なの? あれは僕の意思だけど?」
「まさかまだ洗脳されてるというの……!?」
「何言ってるのか意味が分からないんだけど」
「もう大きいんだから自分で決めなさい、ってことよ」
平助が気まずそうに様子を窺っている。ただ事ではない雰囲気にどうしようか迷っているようだった。