こころ〜家族になる〜
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指さしたのはレアチーズケーキだった。
総司が呼び出しボタンを押すと、数十秒で店員がやってくる。
千夏のケーキとドリンクバーを二つ頼むと、店員は申し訳なさそうに告げた。
「ドリンクバーを頼まれるには、何か一品頼まないとご注文を承れないんですよ」
「……そうなんですか? 前は頼めましたけど」
「申し訳ございません。先月より規定が変わりまして。ドリンクバー一つにつき別のものを一品、という決まりに……」
「そうなんですか。……千夏、もう一個頼みなよ」
総司の提案に千夏は「えっ!?」と焦りをみせた。
「いやいや流石に食べられないよ!」
「僕だって無理だからね。じゃあ、僕がドリンクバー飲むから千夏は水でも飲んでなよ」
「ひどっ!」
店員はどうしたものかと苦笑いである。
「冗談だから、何か頼んで」
「えー……じゃあ……」
とりあえずサイドメニューのページを開いて一通り目を通した。
結局、ポテトフライを頼むことにした。
「はぁ……会社の規定が変わったとか僕にとって死活問題だよね」
店員が戻って行った後、総司が溜め息を吐いた。
「大袈裟な……。でも二人でポテトなら食べられるでしょ」
「え? 僕も食べるの?」
「当たり前じゃん! 私流石に無理だから!」
「千夏なら行けるよ。大丈夫」
「行けるけど、これ以上太りたくないので」
「まぁいいや。飲み物何にする? 僕取って来るけど」
「自分で行く。お兄ちゃん何入れるか分かんないから」
「心外だな」
荷物番をするべく、まず千夏が行きその後に総司が行った。
――……‥‥
「それにしてもお兄ちゃん、本当食べないよね。どっから日々の動力源来てるの?」
頼んだものを食べ終わり、二人はドリンクバーだけでまったりしていた。
「それ他の人にも言われるんだけど。まぁ、自分でもあんまり食べてないのは分かってるよ。でも、すぐお腹いっぱいになるんだもん」
「それにしても、剣道してるし授業で体育あるわけだし? 登下校も歩きだし。エネルギー足りてる?」
「別に体に異常はないし、足りてるんじゃない? 食べる物が良いんだと思うよ。米とか魚とか、いかにもバランスが取れてそうじゃない」
千夏はつねが毎朝作るご飯やお弁当の中身を思い浮かべる。
「あー……そういえば、保健室の山南先生に前にお弁当見られて栄養バランスが良いですね、って言われた。でも、それにしてもお兄ちゃんは量が少ないと思う! いくらバランス取れてたって一日の必要なエネルギー量に足りてなさそうだもん」
「そんなこと言われても知らないよ」
「まぁ、お兄ちゃんが初めて来た頃よりは食べてると思うけど」
千夏は思い出す。総司が近藤家の養子となった頃を。
「一口、二口食べて箸置いてたよね」
「……よく覚えてるね。でも僕だって千夏が無理矢理食べさせようと食べ物を口に押し付けて来たこと忘れないから」
「……あの時はゴメンナサイ」
頭を下げる千夏に総司はふっと笑った。
「もう怒ってないよ。あの時は僕も悪かったなぁって今は思うよ」
「え?」
「食べたら負けだと思ってた」
初めて聞く話に千夏は総司をじっと見た。
「卑しい、というべきかな。施設の時も時々思ってたんだけど、それまでろくな食べ物を貰ってなかったからさ……食べたら何となく負けたみたいに思えて。がっついてるって思われるのが嫌だった」
「……」
「千夏が唐揚げをさ僕に押し付けて来た夜、朴部屋に行ったじゃない? そのあと――」
近藤が部屋に食べ物を持って来た。総司は終始ベットの上で背を向けていた。
「千夏がすまんかったなぁ。夕飯、食べにくかっただろう。しかし食べないと健康にも影響が出る。……ここに置いておくから食べてくれ」
そう言って、近藤は机の上に食べ物を置いて部屋を出て行った。
「絶対食べるもんかって思った」
「……」
「でも、匂いが漂ってくるんだよね。空腹には耐えられなかった」
それからベットから起き上がると机に座った。
箸を手に取り、唐揚げに手をつけた。施設で何度か唐揚げを食べていたが、それは知っている味と違ったという。
唐揚げといっても色んな味があるんだと知った。
「お母さんの唐揚げ、嫌いだった?」
千夏の問いに総司はまさかと口にした。
「好きだったよ。施設のよりこっちが好きだなと思ったくらい」
次に手をつけたのは野菜だった。
トマトは施設で食べて苦手意識を持った。でも、これも違う味かもしれないと思い二つあったうち一つを食べてみた。
「でもやっぱりトマトはトマトだったよね」
無理だと思ったから一つは残した。
次にキャベツを食べたが、ドレッシングも何もかかってなくて味がなかった。そこで箸を置いた。
唐揚げは何個かあったが結局、油に慣れなくて二個しか食べられなかった。
「お母さんの唐揚げ油っぽくないよね?」
「当時の僕にとっては、揚げ物が慣れなくて。それまでもそんなに沢山出てたわけじゃないし、数える程しか食べたことなかったんだよね。だから何個か食べるとお腹がもたれるっていうか」
「今は平気だよね」
「うん。あ、でもとんかつは場合によってはきついかなぁ……」
つねが作るのは良いが、店の惣菜でたまにある油ぎとぎとのとんかつのことだ。
千夏もそれには納得する。
「というわけで、帰ろっか」
「どういうわけ!? まぁ、でももう六時前かー。本当に奢りでいいの?」
「良いよ。バイト代入ったばかりだし」
帰る仕度を整えた二人は会計を済ませて店を出たのだった。
夕飯は偶然か、唐揚げだった。
番外編2 END
総司が呼び出しボタンを押すと、数十秒で店員がやってくる。
千夏のケーキとドリンクバーを二つ頼むと、店員は申し訳なさそうに告げた。
「ドリンクバーを頼まれるには、何か一品頼まないとご注文を承れないんですよ」
「……そうなんですか? 前は頼めましたけど」
「申し訳ございません。先月より規定が変わりまして。ドリンクバー一つにつき別のものを一品、という決まりに……」
「そうなんですか。……千夏、もう一個頼みなよ」
総司の提案に千夏は「えっ!?」と焦りをみせた。
「いやいや流石に食べられないよ!」
「僕だって無理だからね。じゃあ、僕がドリンクバー飲むから千夏は水でも飲んでなよ」
「ひどっ!」
店員はどうしたものかと苦笑いである。
「冗談だから、何か頼んで」
「えー……じゃあ……」
とりあえずサイドメニューのページを開いて一通り目を通した。
結局、ポテトフライを頼むことにした。
「はぁ……会社の規定が変わったとか僕にとって死活問題だよね」
店員が戻って行った後、総司が溜め息を吐いた。
「大袈裟な……。でも二人でポテトなら食べられるでしょ」
「え? 僕も食べるの?」
「当たり前じゃん! 私流石に無理だから!」
「千夏なら行けるよ。大丈夫」
「行けるけど、これ以上太りたくないので」
「まぁいいや。飲み物何にする? 僕取って来るけど」
「自分で行く。お兄ちゃん何入れるか分かんないから」
「心外だな」
荷物番をするべく、まず千夏が行きその後に総司が行った。
――……‥‥
「それにしてもお兄ちゃん、本当食べないよね。どっから日々の動力源来てるの?」
頼んだものを食べ終わり、二人はドリンクバーだけでまったりしていた。
「それ他の人にも言われるんだけど。まぁ、自分でもあんまり食べてないのは分かってるよ。でも、すぐお腹いっぱいになるんだもん」
「それにしても、剣道してるし授業で体育あるわけだし? 登下校も歩きだし。エネルギー足りてる?」
「別に体に異常はないし、足りてるんじゃない? 食べる物が良いんだと思うよ。米とか魚とか、いかにもバランスが取れてそうじゃない」
千夏はつねが毎朝作るご飯やお弁当の中身を思い浮かべる。
「あー……そういえば、保健室の山南先生に前にお弁当見られて栄養バランスが良いですね、って言われた。でも、それにしてもお兄ちゃんは量が少ないと思う! いくらバランス取れてたって一日の必要なエネルギー量に足りてなさそうだもん」
「そんなこと言われても知らないよ」
「まぁ、お兄ちゃんが初めて来た頃よりは食べてると思うけど」
千夏は思い出す。総司が近藤家の養子となった頃を。
「一口、二口食べて箸置いてたよね」
「……よく覚えてるね。でも僕だって千夏が無理矢理食べさせようと食べ物を口に押し付けて来たこと忘れないから」
「……あの時はゴメンナサイ」
頭を下げる千夏に総司はふっと笑った。
「もう怒ってないよ。あの時は僕も悪かったなぁって今は思うよ」
「え?」
「食べたら負けだと思ってた」
初めて聞く話に千夏は総司をじっと見た。
「卑しい、というべきかな。施設の時も時々思ってたんだけど、それまでろくな食べ物を貰ってなかったからさ……食べたら何となく負けたみたいに思えて。がっついてるって思われるのが嫌だった」
「……」
「千夏が唐揚げをさ僕に押し付けて来た夜、朴部屋に行ったじゃない? そのあと――」
近藤が部屋に食べ物を持って来た。総司は終始ベットの上で背を向けていた。
「千夏がすまんかったなぁ。夕飯、食べにくかっただろう。しかし食べないと健康にも影響が出る。……ここに置いておくから食べてくれ」
そう言って、近藤は机の上に食べ物を置いて部屋を出て行った。
「絶対食べるもんかって思った」
「……」
「でも、匂いが漂ってくるんだよね。空腹には耐えられなかった」
それからベットから起き上がると机に座った。
箸を手に取り、唐揚げに手をつけた。施設で何度か唐揚げを食べていたが、それは知っている味と違ったという。
唐揚げといっても色んな味があるんだと知った。
「お母さんの唐揚げ、嫌いだった?」
千夏の問いに総司はまさかと口にした。
「好きだったよ。施設のよりこっちが好きだなと思ったくらい」
次に手をつけたのは野菜だった。
トマトは施設で食べて苦手意識を持った。でも、これも違う味かもしれないと思い二つあったうち一つを食べてみた。
「でもやっぱりトマトはトマトだったよね」
無理だと思ったから一つは残した。
次にキャベツを食べたが、ドレッシングも何もかかってなくて味がなかった。そこで箸を置いた。
唐揚げは何個かあったが結局、油に慣れなくて二個しか食べられなかった。
「お母さんの唐揚げ油っぽくないよね?」
「当時の僕にとっては、揚げ物が慣れなくて。それまでもそんなに沢山出てたわけじゃないし、数える程しか食べたことなかったんだよね。だから何個か食べるとお腹がもたれるっていうか」
「今は平気だよね」
「うん。あ、でもとんかつは場合によってはきついかなぁ……」
つねが作るのは良いが、店の惣菜でたまにある油ぎとぎとのとんかつのことだ。
千夏もそれには納得する。
「というわけで、帰ろっか」
「どういうわけ!? まぁ、でももう六時前かー。本当に奢りでいいの?」
「良いよ。バイト代入ったばかりだし」
帰る仕度を整えた二人は会計を済ませて店を出たのだった。
夕飯は偶然か、唐揚げだった。
番外編2 END
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