こころ〜家族になる〜
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―番外編2―
「千夏、僕とデートしようか」
「えっ?」
放課後、総司は一個下の妹の首根っこを掴んで引きずるようにして学校を出た。
唐突に冗談を言ったり、訳の分からないことを言うのはいつものことである。今回はどういう意図があるのだろうか。
千夏は考えながらも総司の後を着いて行った。
「奢ってあげるから、好きなの頼みなよ」
「お兄ちゃんが、奢る……?」
学生にとって手頃なファミレスに来た。メニューを広げるなり奢るという総司に、千夏は目を見開いた。
「何その信じられないものを見るかのような目」
「だって!」
総司は昔からよく遊んでくれるが、ちょいちょい意地悪なところがあった。別に悲しくなるように意地悪ではないが、彼女でもない女に奢るような人物ではない。
これは何かある。
これらのことをやんわりと告げる。
「僕がそんなことで奢ったりするように見える?」
いつもなら途端に機嫌が悪くなりそうなのだが、今日はどういう訳かそれを聞いても嬉しそうな表情だ。
「見える」
「傷つくなぁ」
そうは言っても、本当に傷ついたような顔ではなかった。
「僕だって何もなくても奢ったりするときはあるよ」
「じゃあ、良いことあったの?」
「別にないよ」
そう言って窓の外を眺める総司はやはりどこか嬉しそうだ。
これは何か良いことがあったな、と千夏は長年の勘で感づいたが聞かないことにした。
教えてくれなさそうだし、どんなことでもその良いことのお陰でこの瞬間があるのだから。
「というか、よく私と二人で来ようと思ったよね。兄妹に見えないってよく言われるのに。私は気にしてないけど」
「一つしか離れてないし、カップルに見えるのは仕方ないよ。でも誰がどう思おうと、千夏と僕は兄妹だからね」
店員が水を運んできた。まだ決めていなかったので、店員はそのまま「お決まりになりましたらボタンを押してお呼びください」と去る。
「千夏、早く決めなよ」
「だって迷うんだもん」
「夕飯の事も考えないとね」
分かってるよ、それくらい。と呟くように言った千夏が見ているのはデザートのページだった。
「お兄ちゃんはもう決めたの?」
「僕はドリンクバーだけでいいから」
「えっ!」
メニュー表を見ていた顔を上げて声をあげた。
「何で!?」
「何でって、今食べちゃったら夕飯入らないもん」
「あぁ……お兄ちゃん、少食だもんね。運動部の割に」
同じ運動部の男子より圧倒的に食べる量が少ない総司。よくそんなに少食だと血肉が作られないぞ、と数学教員の永倉や保健体育教員の原田に心配されていた。
それでも、全国レベルの剣道の腕前や必要な筋肉はついていて逆にどこからそのエネルギーは来ているんだ? と不思議がる人もいた。
「僕だって今食べても夕飯入るっていうんなら食べるけどね。で、決まった? 千夏は僕に合わせることなく食べていいからね」
「うーん、迷うんだよね。苺フェアのメニューにするか年中あるメニューにするか……」
「フェアメニューって期間限定でしょ? これを逃すと食べられないんじゃないの?」
「でも、この前別のとこで苺のデザート食べたんだよね。……どうしてファミレス業界って同じようなメニューを同じ時期に出すんだろう?」
「旬だったり流行りだったりかな? たまに数か月遅れで別の店が同じようなメニュー出すこともあるよね」
「あるある! もはやパクってんじゃないかって思うくらい」
二人で笑い合う。どっかから「リア充がっ」という声が聞こえた気がしたが、総司と千夏は全く気にしない。
「決めた、これにする!」
「千夏、僕とデートしようか」
「えっ?」
放課後、総司は一個下の妹の首根っこを掴んで引きずるようにして学校を出た。
唐突に冗談を言ったり、訳の分からないことを言うのはいつものことである。今回はどういう意図があるのだろうか。
千夏は考えながらも総司の後を着いて行った。
「奢ってあげるから、好きなの頼みなよ」
「お兄ちゃんが、奢る……?」
学生にとって手頃なファミレスに来た。メニューを広げるなり奢るという総司に、千夏は目を見開いた。
「何その信じられないものを見るかのような目」
「だって!」
総司は昔からよく遊んでくれるが、ちょいちょい意地悪なところがあった。別に悲しくなるように意地悪ではないが、彼女でもない女に奢るような人物ではない。
これは何かある。
これらのことをやんわりと告げる。
「僕がそんなことで奢ったりするように見える?」
いつもなら途端に機嫌が悪くなりそうなのだが、今日はどういう訳かそれを聞いても嬉しそうな表情だ。
「見える」
「傷つくなぁ」
そうは言っても、本当に傷ついたような顔ではなかった。
「僕だって何もなくても奢ったりするときはあるよ」
「じゃあ、良いことあったの?」
「別にないよ」
そう言って窓の外を眺める総司はやはりどこか嬉しそうだ。
これは何か良いことがあったな、と千夏は長年の勘で感づいたが聞かないことにした。
教えてくれなさそうだし、どんなことでもその良いことのお陰でこの瞬間があるのだから。
「というか、よく私と二人で来ようと思ったよね。兄妹に見えないってよく言われるのに。私は気にしてないけど」
「一つしか離れてないし、カップルに見えるのは仕方ないよ。でも誰がどう思おうと、千夏と僕は兄妹だからね」
店員が水を運んできた。まだ決めていなかったので、店員はそのまま「お決まりになりましたらボタンを押してお呼びください」と去る。
「千夏、早く決めなよ」
「だって迷うんだもん」
「夕飯の事も考えないとね」
分かってるよ、それくらい。と呟くように言った千夏が見ているのはデザートのページだった。
「お兄ちゃんはもう決めたの?」
「僕はドリンクバーだけでいいから」
「えっ!」
メニュー表を見ていた顔を上げて声をあげた。
「何で!?」
「何でって、今食べちゃったら夕飯入らないもん」
「あぁ……お兄ちゃん、少食だもんね。運動部の割に」
同じ運動部の男子より圧倒的に食べる量が少ない総司。よくそんなに少食だと血肉が作られないぞ、と数学教員の永倉や保健体育教員の原田に心配されていた。
それでも、全国レベルの剣道の腕前や必要な筋肉はついていて逆にどこからそのエネルギーは来ているんだ? と不思議がる人もいた。
「僕だって今食べても夕飯入るっていうんなら食べるけどね。で、決まった? 千夏は僕に合わせることなく食べていいからね」
「うーん、迷うんだよね。苺フェアのメニューにするか年中あるメニューにするか……」
「フェアメニューって期間限定でしょ? これを逃すと食べられないんじゃないの?」
「でも、この前別のとこで苺のデザート食べたんだよね。……どうしてファミレス業界って同じようなメニューを同じ時期に出すんだろう?」
「旬だったり流行りだったりかな? たまに数か月遅れで別の店が同じようなメニュー出すこともあるよね」
「あるある! もはやパクってんじゃないかって思うくらい」
二人で笑い合う。どっかから「リア充がっ」という声が聞こえた気がしたが、総司と千夏は全く気にしない。
「決めた、これにする!」