こころ〜家族になる〜
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―番外編1―
いつもお腹が空いていた。貰えるのは腐ってるんじゃない? っていうような食べ物や、本来なら捨てる部分の所や揚げ物の衣とか。
一緒に住んでいた祖父母の顔は二度、僕の前に現れたから覚えていたけれど伯父夫婦や従兄弟の顔は覚えていない。ただ、彼ら全員からやられたことは全部ではないけど覚えている。
欲しいと手を伸ばせば叩かれ卑しいと言われる。誰かがくれば、人気のないところにある部屋に入れられて静かにしているように言われる。
水だけはくれるけど、トイレもお風呂も駄目でたまに体を拭くものを渡される。
病気になったら最悪。部屋に閉じ込められ、誰も近づかない。
あと――笑うと怒られた。泣いても一緒。物心ついた時には、鉄のような面が僕には貼りついていた。
従兄弟たちも親や祖父母を見習って悪さをしてきた。僕を突き落とそうとしたり蹴ったり。ただそれは大人に止められた。
大怪我をしたら流石に病院連れて行かなきゃいけなくなるでしょ、と笑って口にした。そして従兄弟たちに、病院代はアンタたちのお菓子代から引くことになるよと言い、従兄弟たちはそれを聞くと僕に肉体的暴力を振るわなかった。
そんな日々を送っていた時。
廊下で知らない男の人と会ってしまった。来客中は部屋から出るなと言われていたけれど、僕はたまに逆らってこっそり出ていたことがある。だって、来客の相手で誰も監視なんかしてないから。
だから、僕もこの時は焦った。それ以上に大人たちが騒いでいたけれど。
そしたら、その人が傍にやって来て色々聞いて来た。
話すことに慣れていなくて、かつ答えたら何をされるか分からないから僕は口を閉ざした。
でもあまりにもしつこいから一言だけ「何でもないです」というようなことを言った気がする。
その時久々に声を出した。
そのあとはよく覚えていない。僕はその男の人に連れられて初めて外に出た。記憶にある初めての外だった。
それからは施設で過ごした。男の人はそこの施設長だったのだ。僕以外の子供が沢山そこにはいた。
初めて他人と過ごす空間。従兄弟たちがやったこと、この子たちもやるんだと思って怖かった。
でもそんなことはなかった。皆、普通に話してきた。
でも上手く喋れなくて、何を言っていいのかも分からなかった。
僕をあの家から連れ出した男の人――桜田さんも一日中一緒にいるわけじゃないし、離れていく皆とも遊べず一人で過ごすことの方が楽だと感じた。
初めてご飯を沢山貰ったのもこの施設だった。
見たことないものもあった。でも、食べていいのか分からなかった。そこで出て来るものはどれも立派だった。中身のある揚げ物や新鮮な野菜や果物なんか、食べたことなくて……。
でもお腹はやっぱり空くし、少しだけ食べるようにした。
次第に“少しだけ”の量が増えて、気付けばお腹いっぱいと感じるようになった。
その感覚は初めてだった。お腹いっぱいになっても出されたご飯は余っていた。皆も同じ量なのに皆は全部食べられることが不思議だった。
桜田さんに遠慮するなと言われたことも多々あったけど、それ以上はお腹がいっぱいで食べられなかった。
――九歳の時、転機が訪れた。
今まで沢山の人が僕を引き取りたいと言ったけど、僕が何言っても反応せず笑わないと知ると言葉を濁して別の子供を引き取って行った。(成長して桜田さんに会ったことがあった。その時改めて聞けば、僕は美少年だったからそれで希望者が続々だったのでは、と笑った)
もうどうでも良かった。僕はただ大人に生かされているだけ、存在するだけの人間なんだと感じていた。
面倒だったんだ。僕に関わってく人たち皆が。とてつもなく嫌いだった。
そんな時に現れたのが近藤さんだった。太陽のような笑顔が眩しく見えた。
僕のこと引き取りたいと顔を合わせた時、この人も他の大人のようにやっぱり止めると言うんだろうなと思った。
だから対面してもそこにいるだけ、話さなくても良いやと口を利かなかった。
でも、近藤さんは僕を引き取った。
いつもお腹が空いていた。貰えるのは腐ってるんじゃない? っていうような食べ物や、本来なら捨てる部分の所や揚げ物の衣とか。
一緒に住んでいた祖父母の顔は二度、僕の前に現れたから覚えていたけれど伯父夫婦や従兄弟の顔は覚えていない。ただ、彼ら全員からやられたことは全部ではないけど覚えている。
欲しいと手を伸ばせば叩かれ卑しいと言われる。誰かがくれば、人気のないところにある部屋に入れられて静かにしているように言われる。
水だけはくれるけど、トイレもお風呂も駄目でたまに体を拭くものを渡される。
病気になったら最悪。部屋に閉じ込められ、誰も近づかない。
あと――笑うと怒られた。泣いても一緒。物心ついた時には、鉄のような面が僕には貼りついていた。
従兄弟たちも親や祖父母を見習って悪さをしてきた。僕を突き落とそうとしたり蹴ったり。ただそれは大人に止められた。
大怪我をしたら流石に病院連れて行かなきゃいけなくなるでしょ、と笑って口にした。そして従兄弟たちに、病院代はアンタたちのお菓子代から引くことになるよと言い、従兄弟たちはそれを聞くと僕に肉体的暴力を振るわなかった。
そんな日々を送っていた時。
廊下で知らない男の人と会ってしまった。来客中は部屋から出るなと言われていたけれど、僕はたまに逆らってこっそり出ていたことがある。だって、来客の相手で誰も監視なんかしてないから。
だから、僕もこの時は焦った。それ以上に大人たちが騒いでいたけれど。
そしたら、その人が傍にやって来て色々聞いて来た。
話すことに慣れていなくて、かつ答えたら何をされるか分からないから僕は口を閉ざした。
でもあまりにもしつこいから一言だけ「何でもないです」というようなことを言った気がする。
その時久々に声を出した。
そのあとはよく覚えていない。僕はその男の人に連れられて初めて外に出た。記憶にある初めての外だった。
それからは施設で過ごした。男の人はそこの施設長だったのだ。僕以外の子供が沢山そこにはいた。
初めて他人と過ごす空間。従兄弟たちがやったこと、この子たちもやるんだと思って怖かった。
でもそんなことはなかった。皆、普通に話してきた。
でも上手く喋れなくて、何を言っていいのかも分からなかった。
僕をあの家から連れ出した男の人――桜田さんも一日中一緒にいるわけじゃないし、離れていく皆とも遊べず一人で過ごすことの方が楽だと感じた。
初めてご飯を沢山貰ったのもこの施設だった。
見たことないものもあった。でも、食べていいのか分からなかった。そこで出て来るものはどれも立派だった。中身のある揚げ物や新鮮な野菜や果物なんか、食べたことなくて……。
でもお腹はやっぱり空くし、少しだけ食べるようにした。
次第に“少しだけ”の量が増えて、気付けばお腹いっぱいと感じるようになった。
その感覚は初めてだった。お腹いっぱいになっても出されたご飯は余っていた。皆も同じ量なのに皆は全部食べられることが不思議だった。
桜田さんに遠慮するなと言われたことも多々あったけど、それ以上はお腹がいっぱいで食べられなかった。
――九歳の時、転機が訪れた。
今まで沢山の人が僕を引き取りたいと言ったけど、僕が何言っても反応せず笑わないと知ると言葉を濁して別の子供を引き取って行った。(成長して桜田さんに会ったことがあった。その時改めて聞けば、僕は美少年だったからそれで希望者が続々だったのでは、と笑った)
もうどうでも良かった。僕はただ大人に生かされているだけ、存在するだけの人間なんだと感じていた。
面倒だったんだ。僕に関わってく人たち皆が。とてつもなく嫌いだった。
そんな時に現れたのが近藤さんだった。太陽のような笑顔が眩しく見えた。
僕のこと引き取りたいと顔を合わせた時、この人も他の大人のようにやっぱり止めると言うんだろうなと思った。
だから対面してもそこにいるだけ、話さなくても良いやと口を利かなかった。
でも、近藤さんは僕を引き取った。