第一部
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6.狙われる猫
雨で濡れるのにも関わらず、ジッとこちらを見る雄猫たちにみーこは震えた。
逃げ腰になりながらもきょろきょろとする。
すると雄猫は互いに気付いたのか、咄嗟に臨戦体勢に入ったのだ。
「お前、誰だ!」
「ここは俺の縄張りだ。俺の縄張りで雌猫を口説くとはな」
「……んなこと関係ねぇ! 今日から俺が仕切ってやる」
「んだと!? 俺が仕切る!」
「いや、俺が!」
何匹もの雄猫が争い合おうと声を荒げた。
しかしそれは人間の耳には鳴き声にしか聞こえないわけで――。
「何だ!?」
と、沢山の幹部や平隊士が集まって来たのである。当然、この騒ぎを疑問に思った土方が「どうした、原田の部屋の前で」と来るわけだが、他の者と同様その光景に驚くしかなかった。
猫が大喧嘩しているのだ。死闘を繰り広げ、雨の中を僅かだが血が舞った。
「これ、何なんだ!」
「よく見たら、全部雄猫ですよ。前、屯所で煩かった猫じゃない?」
「何で、その猫が雨の中死闘を繰り広げてんだよ!!」
「知りませんよ、そんなこと。僕に聞かないでください」
みーこの姿は縁側の下。彼らの足元である。見えるはずがない。
「にぎゃぁっ!」と声を荒げ、喧嘩する猫はその数、ざっと二十はいるだろうか。
その異常な光景に一同は言葉を失うばかり。
しかしその一方でみーこを、隙あらば狙って来る雄猫がいるのだ。他の雄猫が喧嘩をしている間にみーこに近付く。それに気付いた別の猫が襲い掛かる。
そういったことが何度も続いた時、ついにここら辺の長であるあの黒猫がみーこに近付いたのだ。
「俺と来い!」
「え?」
強引に迫ってくる黒猫に、みーこはついに暴れ出す。
そして、たまたま剥き出しになっていた爪が黒猫の目を引っ掻いたのだ。
驚いたのは黒猫の方。突如襲った痛みに声をあげ、飛び退く。
「――っの! くそ雌猫!!」
黒猫は激怒し、みーこに飛び掛かった。
「にゃああああ!!」
みーこは上手く交わして、縁側の下から飛び出した。
そしてそのまま塀まで全力で走り、登って逃げた。
それを見逃さなかったのは、新選組の面々。
みーこが走って行った方向を見て、切り出したのは沖田であった。
「今のって……みーこだよね?」
「え、違うだろ。みーこは一君が戻したって」
「あぁ。だが、俺にもあの猫はみーこに見えたが……」
そこで、原田に視線が集まる。原田ならばみーこかどうか、見分けがつくだろうと思ったのだ。
「左之さん、どう思う?」
「……どうって」
「分かるのか? いくら左之だって、あんな一瞬じゃわかんないだろ?」
永倉の問いに、原田はみーこが去って行った方向を見た。
そして答えた。
「……あれは、みーこだった」
と。
「何で、あいつがここにいるんだ? 斎藤、ちゃんと戻して来たんだろうな?」
「勿論です、俺は副長に言われた通りみーこを戻して来ました」
「じゃあ何であいつがここにいたんだ!?」
すると沖田がそんなの決まってるじゃないですか、と言い放つ。
「戻ってきたんですよ、自分で」
「戻ってきただと?」
「ええ。左之さんの元に自分で帰ってきたんです」
もしそうなら何と可愛い猫なんだ。原田はそう思った。
だが、発情した雄猫に狙われ結局は屯所を出て行った。恐い思いをしたのだ。もう二度と戻って来ない可能性もある。
何にせよこれが猫の世界なのか、と実感してしまうのであった。
――庭の雄猫は、もういなかった。
6.狙われる猫END
⇒7へ続く
雨で濡れるのにも関わらず、ジッとこちらを見る雄猫たちにみーこは震えた。
逃げ腰になりながらもきょろきょろとする。
すると雄猫は互いに気付いたのか、咄嗟に臨戦体勢に入ったのだ。
「お前、誰だ!」
「ここは俺の縄張りだ。俺の縄張りで雌猫を口説くとはな」
「……んなこと関係ねぇ! 今日から俺が仕切ってやる」
「んだと!? 俺が仕切る!」
「いや、俺が!」
何匹もの雄猫が争い合おうと声を荒げた。
しかしそれは人間の耳には鳴き声にしか聞こえないわけで――。
「何だ!?」
と、沢山の幹部や平隊士が集まって来たのである。当然、この騒ぎを疑問に思った土方が「どうした、原田の部屋の前で」と来るわけだが、他の者と同様その光景に驚くしかなかった。
猫が大喧嘩しているのだ。死闘を繰り広げ、雨の中を僅かだが血が舞った。
「これ、何なんだ!」
「よく見たら、全部雄猫ですよ。前、屯所で煩かった猫じゃない?」
「何で、その猫が雨の中死闘を繰り広げてんだよ!!」
「知りませんよ、そんなこと。僕に聞かないでください」
みーこの姿は縁側の下。彼らの足元である。見えるはずがない。
「にぎゃぁっ!」と声を荒げ、喧嘩する猫はその数、ざっと二十はいるだろうか。
その異常な光景に一同は言葉を失うばかり。
しかしその一方でみーこを、隙あらば狙って来る雄猫がいるのだ。他の雄猫が喧嘩をしている間にみーこに近付く。それに気付いた別の猫が襲い掛かる。
そういったことが何度も続いた時、ついにここら辺の長であるあの黒猫がみーこに近付いたのだ。
「俺と来い!」
「え?」
強引に迫ってくる黒猫に、みーこはついに暴れ出す。
そして、たまたま剥き出しになっていた爪が黒猫の目を引っ掻いたのだ。
驚いたのは黒猫の方。突如襲った痛みに声をあげ、飛び退く。
「――っの! くそ雌猫!!」
黒猫は激怒し、みーこに飛び掛かった。
「にゃああああ!!」
みーこは上手く交わして、縁側の下から飛び出した。
そしてそのまま塀まで全力で走り、登って逃げた。
それを見逃さなかったのは、新選組の面々。
みーこが走って行った方向を見て、切り出したのは沖田であった。
「今のって……みーこだよね?」
「え、違うだろ。みーこは一君が戻したって」
「あぁ。だが、俺にもあの猫はみーこに見えたが……」
そこで、原田に視線が集まる。原田ならばみーこかどうか、見分けがつくだろうと思ったのだ。
「左之さん、どう思う?」
「……どうって」
「分かるのか? いくら左之だって、あんな一瞬じゃわかんないだろ?」
永倉の問いに、原田はみーこが去って行った方向を見た。
そして答えた。
「……あれは、みーこだった」
と。
「何で、あいつがここにいるんだ? 斎藤、ちゃんと戻して来たんだろうな?」
「勿論です、俺は副長に言われた通りみーこを戻して来ました」
「じゃあ何であいつがここにいたんだ!?」
すると沖田がそんなの決まってるじゃないですか、と言い放つ。
「戻ってきたんですよ、自分で」
「戻ってきただと?」
「ええ。左之さんの元に自分で帰ってきたんです」
もしそうなら何と可愛い猫なんだ。原田はそう思った。
だが、発情した雄猫に狙われ結局は屯所を出て行った。恐い思いをしたのだ。もう二度と戻って来ない可能性もある。
何にせよこれが猫の世界なのか、と実感してしまうのであった。
――庭の雄猫は、もういなかった。
6.狙われる猫END
⇒7へ続く