第一部
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
2.人間に恋された猫
※R15要素あり(だけど鍵はつけてません)
人になりたい。
みーこは毎日そう思うようになった。何を言っても、人間には「にゃー」としか聞こえず、伝えたいことが伝わらない。
「好きだよ」と、頭を撫でる原田に伝えても口から出るのは鳴き声のみ。撫でられるのは嬉しいものの、それがたまらく辛くもあった。
「にゃー……」
閉め切られた襖越しにみーこが声をかけてみれば、少ししてから開いた。
「どうした、こんな夜に」
いつもとは違う。寝間着で迎えた原田はしゃがみ、みーこを膝の上に乗せて頭を撫でた。
「もう俺は寝るから、お前も寝床に帰れ」
優しい口調で廊下に下ろした原田は、襖を閉めようとした。しかし、みーこは一声鳴くと瞬時に原田の部屋の中へ侵入したのである。
「あっ! お前っ」
掴もうとする原田の手をみーこは持ち前の俊敏さですり抜け、既に敷いてあった布団の上に丸まる。
「おい、そこは……はぁ。まぁ良いか」
諦めた原田は、布団に入ると寝転んだ。するとみーこは、座っていた掛け布団の上から降りて原田の隣に擦り寄った。
「一緒に寝るか?」
「にゃー」
本当はいけないと思いながらも、原田は眠気に勝てずそのまま落ちた。
――しかし事件は起こる。
翌朝、原田が目を覚ますと布団の中に違和感を真っ先に感じた。
横向きに寝ていたのだが、視界には何も見当たらない。しかし、布団の中に感じる何かの存在。
それは、昨晩共に就寝したみーこだろう。が、原田はそうは思えなかった。
なぜなら、布団の中の何かは明らかに猫の大きさには感じないからだ。
意を決して、布団の中を覗こうと恐る恐るめくってみる。
「……っ、な!」
目を見開くしかなかった。
そこには、ありもしない存在があったからだ。ありもしないというより、現段階でここにはいるはずのない存在。
そう――女だ。
しかも真っ裸の。
「……」
一人混乱し、どうして良いか分からない原田。女には慣れているはずだったが、流石に身に覚えのない女。知らない顔だし、何より裸であるというのが原田を戸惑わせた。
すると、その女は小さく音を発すると目をゆっくりと開けたのである。そしてばっちりと目が合ったのである。
「……お前」
「……さ、の?」
「!?」
確かに、原田のことを呼んだのである。当然、こんな女は会ったことがないし自分を知っているなんて驚きだった。
が、それ以上にその女自身が驚愕したのだ。
「え!? 私、え!?」
そして女は自分の体を見て、声をあげるどころか何と原田に抱き着いたのである!
「は、え!? おまっ」
「やったよ!! 左之! 私、私……」
――人間になれた!
そう叫んだのである。
「は、え? 人間? お前、誰だよっ」
原田がやっとの思いで言葉を発すると、女は困った顔をして原田の顔を見た。
「誰って、私……みーこだよ?」
「みーこ……? は!? 嘘だろ!?」
「嘘じゃないもんっ!」
「だって、あいつは猫で――」
そこで視界に入ったのは、赤い帯状の織物。
見れば、女の尻の辺りから猫の尻尾らしきものが生えていてその先にみーこが着けていた赤い織物があるではないか。
原田は一瞬、思考が止まったがすぐに状況を理解した。
そして、みーこと名乗る女の顔を見つめて言う。
「お前、本当に……」
みーこは頷いて、頬を赤らめた。
原田から見れば、その顔は美しかった。整った輪郭に猫のような(実際猫だが)目。みーこだと窺わせる色合い。
そして、紅潮した頬。
「みーこ……」
思わず、顔を近付けてしまった。
その時である。
「左之さーん、飯ができ――……」
藤堂が襖を開けたのである。そして、停止。
それはそうだ。藤堂が目の当たりにした光景は、全裸の女が原田の膝の上に乗り見つめ合い、そして原田が女に接吻しようとしているというものだったから。
「へ、平助! 違ぇんだ、これは!」
この時ばかりは、原田も慌てた。藤堂は叫びながら廊下を全力疾走した。
――……‥‥
土方は険しい顔をしていた。斎藤も似たような顔付きで、沖田は笑っている。藤堂は全裸を思い出し赤面し、永倉は唖然。原田は微笑ましそうに見て、雪村千鶴は苦笑いだった。
「どういうことだ、これは」
口火を切ったのは土方である。目の前にいるみーこは、鞠に興味津々らしく手で転がして遊んでいる。人間が猫のように遊んでいる光景に見えるが、実際猫なのだから当然だ。
服を調達してもらい、着替えたみーこは鞠に夢中だ。
「どういうって、可愛い着物ですよね。それでいて色気がある。女忍者みたいですね。僕が調達したんですよ。僕の感覚最高ですよね!」
「俺はそういうことを聞いてるんじゃねぇよ!! んで、自分の美的感覚に酔ってんじゃねぇ!」
「確かに、腰のでけぇ帯の結びといい着物の丈(膝上)といい……悪くねぇな。(胸もでけぇし)」
「原田、テメェまで何言ってやがる!! 俺は何でこいつが、人間になっちまったのか聞いてんだよ! 非現実的だろうが!」
そんなこと誰も知るはずなく、部屋は静まり返った。
「副長、なってしまったものは仕方ありません。こうなったら議論の題は、この女をどうするかということです」
「斎藤の言うとおりだぜ、土方さん。屯所にこんな明らかな女がいたら、隊士たちも気が散るだろ。見た目は美人な姉ちゃんだし」
「確かに、斎藤と新八の言うことは尤もだ。だが、どうするって言われても放り出すわけにはいかねぇし……。原田、悪いが匿ってくれ」
「俺がか? そりゃ良いが、こういう時は千鶴の方が良いんじゃねぇのか」
「んなことしたって、そいつはあのみーこなんだろ? 原田から離れると思うか?」
その言葉に一同「離れるわけない」と声を揃えた。
こうして、人間になってしまったみーこは原田が匿うことになった。
しかし匿うのは簡単なことではなかった。猫の性分かほいほいほっつき歩き、屋根の上でひなたぼっこをしていたりと、それは大変なものであった。
原田は仕事どころではなく、みーこに言い聞かせても気まぐれ猫には効果がなかったのでとうとう土方から「みーこの世話に専念しろ。それが仕事だ」と言い渡されてしまったのである。
だが、原田は嫌な気はしなかった。むしろ良く感じていたのだ。
目の前で尻尾を立てて、原田が振る猫じゃらしに夢中で手を伸ばし掴もうとするみーこの姿を見ればこういう仕事も悪くない。
「にゃっ、意地悪しないでっ」
「んなこと言ったって、楽しいだろ?」
必死に猫じゃらしと格闘するみーこ。その姿を見て原田は心の奥から、何やら熱い這ったようなものが沸き起こるのを感じた。
そして、原田が手の動きを止めると猫じゃらしは簡単にみーこに捕らえられる。その瞬間、原田はみーこを引き寄せ押し倒していたのだ。
「左之……?」
「みーこ」
「にゃ!?」
色っぽい吐息がみーこの耳にかかる。
みーこが人間になって、三日目の夜の出来事だった。
「左之、何するのっ? にゃ、ぅっ!」
「……可愛いぜ」
足掻くみーこも、原田の前では無力。耳、首、鎖骨、と唇を這わす原田に思わず体を震わせてしまう。
「さ、のっ……」
「みーこ……好きだ」
帯を解く音。
みーこは何が起こるのか理解出来なかった。しかし、原田の「俺に任せとけば大丈夫だ」という言葉で自然と身体の力が抜ける。
部屋の灯が、妖しく揺らいだ。
2.人間に恋された猫END
⇒3へ続く
※R15要素あり(だけど鍵はつけてません)
人になりたい。
みーこは毎日そう思うようになった。何を言っても、人間には「にゃー」としか聞こえず、伝えたいことが伝わらない。
「好きだよ」と、頭を撫でる原田に伝えても口から出るのは鳴き声のみ。撫でられるのは嬉しいものの、それがたまらく辛くもあった。
「にゃー……」
閉め切られた襖越しにみーこが声をかけてみれば、少ししてから開いた。
「どうした、こんな夜に」
いつもとは違う。寝間着で迎えた原田はしゃがみ、みーこを膝の上に乗せて頭を撫でた。
「もう俺は寝るから、お前も寝床に帰れ」
優しい口調で廊下に下ろした原田は、襖を閉めようとした。しかし、みーこは一声鳴くと瞬時に原田の部屋の中へ侵入したのである。
「あっ! お前っ」
掴もうとする原田の手をみーこは持ち前の俊敏さですり抜け、既に敷いてあった布団の上に丸まる。
「おい、そこは……はぁ。まぁ良いか」
諦めた原田は、布団に入ると寝転んだ。するとみーこは、座っていた掛け布団の上から降りて原田の隣に擦り寄った。
「一緒に寝るか?」
「にゃー」
本当はいけないと思いながらも、原田は眠気に勝てずそのまま落ちた。
――しかし事件は起こる。
翌朝、原田が目を覚ますと布団の中に違和感を真っ先に感じた。
横向きに寝ていたのだが、視界には何も見当たらない。しかし、布団の中に感じる何かの存在。
それは、昨晩共に就寝したみーこだろう。が、原田はそうは思えなかった。
なぜなら、布団の中の何かは明らかに猫の大きさには感じないからだ。
意を決して、布団の中を覗こうと恐る恐るめくってみる。
「……っ、な!」
目を見開くしかなかった。
そこには、ありもしない存在があったからだ。ありもしないというより、現段階でここにはいるはずのない存在。
そう――女だ。
しかも真っ裸の。
「……」
一人混乱し、どうして良いか分からない原田。女には慣れているはずだったが、流石に身に覚えのない女。知らない顔だし、何より裸であるというのが原田を戸惑わせた。
すると、その女は小さく音を発すると目をゆっくりと開けたのである。そしてばっちりと目が合ったのである。
「……お前」
「……さ、の?」
「!?」
確かに、原田のことを呼んだのである。当然、こんな女は会ったことがないし自分を知っているなんて驚きだった。
が、それ以上にその女自身が驚愕したのだ。
「え!? 私、え!?」
そして女は自分の体を見て、声をあげるどころか何と原田に抱き着いたのである!
「は、え!? おまっ」
「やったよ!! 左之! 私、私……」
――人間になれた!
そう叫んだのである。
「は、え? 人間? お前、誰だよっ」
原田がやっとの思いで言葉を発すると、女は困った顔をして原田の顔を見た。
「誰って、私……みーこだよ?」
「みーこ……? は!? 嘘だろ!?」
「嘘じゃないもんっ!」
「だって、あいつは猫で――」
そこで視界に入ったのは、赤い帯状の織物。
見れば、女の尻の辺りから猫の尻尾らしきものが生えていてその先にみーこが着けていた赤い織物があるではないか。
原田は一瞬、思考が止まったがすぐに状況を理解した。
そして、みーこと名乗る女の顔を見つめて言う。
「お前、本当に……」
みーこは頷いて、頬を赤らめた。
原田から見れば、その顔は美しかった。整った輪郭に猫のような(実際猫だが)目。みーこだと窺わせる色合い。
そして、紅潮した頬。
「みーこ……」
思わず、顔を近付けてしまった。
その時である。
「左之さーん、飯ができ――……」
藤堂が襖を開けたのである。そして、停止。
それはそうだ。藤堂が目の当たりにした光景は、全裸の女が原田の膝の上に乗り見つめ合い、そして原田が女に接吻しようとしているというものだったから。
「へ、平助! 違ぇんだ、これは!」
この時ばかりは、原田も慌てた。藤堂は叫びながら廊下を全力疾走した。
――……‥‥
土方は険しい顔をしていた。斎藤も似たような顔付きで、沖田は笑っている。藤堂は全裸を思い出し赤面し、永倉は唖然。原田は微笑ましそうに見て、雪村千鶴は苦笑いだった。
「どういうことだ、これは」
口火を切ったのは土方である。目の前にいるみーこは、鞠に興味津々らしく手で転がして遊んでいる。人間が猫のように遊んでいる光景に見えるが、実際猫なのだから当然だ。
服を調達してもらい、着替えたみーこは鞠に夢中だ。
「どういうって、可愛い着物ですよね。それでいて色気がある。女忍者みたいですね。僕が調達したんですよ。僕の感覚最高ですよね!」
「俺はそういうことを聞いてるんじゃねぇよ!! んで、自分の美的感覚に酔ってんじゃねぇ!」
「確かに、腰のでけぇ帯の結びといい着物の丈(膝上)といい……悪くねぇな。(胸もでけぇし)」
「原田、テメェまで何言ってやがる!! 俺は何でこいつが、人間になっちまったのか聞いてんだよ! 非現実的だろうが!」
そんなこと誰も知るはずなく、部屋は静まり返った。
「副長、なってしまったものは仕方ありません。こうなったら議論の題は、この女をどうするかということです」
「斎藤の言うとおりだぜ、土方さん。屯所にこんな明らかな女がいたら、隊士たちも気が散るだろ。見た目は美人な姉ちゃんだし」
「確かに、斎藤と新八の言うことは尤もだ。だが、どうするって言われても放り出すわけにはいかねぇし……。原田、悪いが匿ってくれ」
「俺がか? そりゃ良いが、こういう時は千鶴の方が良いんじゃねぇのか」
「んなことしたって、そいつはあのみーこなんだろ? 原田から離れると思うか?」
その言葉に一同「離れるわけない」と声を揃えた。
こうして、人間になってしまったみーこは原田が匿うことになった。
しかし匿うのは簡単なことではなかった。猫の性分かほいほいほっつき歩き、屋根の上でひなたぼっこをしていたりと、それは大変なものであった。
原田は仕事どころではなく、みーこに言い聞かせても気まぐれ猫には効果がなかったのでとうとう土方から「みーこの世話に専念しろ。それが仕事だ」と言い渡されてしまったのである。
だが、原田は嫌な気はしなかった。むしろ良く感じていたのだ。
目の前で尻尾を立てて、原田が振る猫じゃらしに夢中で手を伸ばし掴もうとするみーこの姿を見ればこういう仕事も悪くない。
「にゃっ、意地悪しないでっ」
「んなこと言ったって、楽しいだろ?」
必死に猫じゃらしと格闘するみーこ。その姿を見て原田は心の奥から、何やら熱い這ったようなものが沸き起こるのを感じた。
そして、原田が手の動きを止めると猫じゃらしは簡単にみーこに捕らえられる。その瞬間、原田はみーこを引き寄せ押し倒していたのだ。
「左之……?」
「みーこ」
「にゃ!?」
色っぽい吐息がみーこの耳にかかる。
みーこが人間になって、三日目の夜の出来事だった。
「左之、何するのっ? にゃ、ぅっ!」
「……可愛いぜ」
足掻くみーこも、原田の前では無力。耳、首、鎖骨、と唇を這わす原田に思わず体を震わせてしまう。
「さ、のっ……」
「みーこ……好きだ」
帯を解く音。
みーこは何が起こるのか理解出来なかった。しかし、原田の「俺に任せとけば大丈夫だ」という言葉で自然と身体の力が抜ける。
部屋の灯が、妖しく揺らいだ。
2.人間に恋された猫END
⇒3へ続く