思想と仲間
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8.予感
新選組を離隊して、数ヶ月。別れの言葉も言えなかったことに、少し後悔をしていた。
後ろめたい気持ちがあって、顔を合わせるのが嫌だったから何も声をかけられなかった。今となってはどうしようもないが、せめて総司にだけは自分で言った方が良かったかな。
なんて思ってたり――。
まぁ、何にせよ今は御陵衛士に滞在しているわけだが。
それなりに上手くやってる。新選組時代からの知り合い(斎藤君や平助以外の)もいるし、最初から伊東派だった人も話せば良い人ばかりだ。
だけどやっぱり、私の心には少し物足りなさを感じていた。思い出すのはいつも試衛館からの仲間なのだから。
「ちょっと良い? 斎藤君」
御陵衛士の屯所を出ようとしていた彼を止めたのは、少し話をしたかったから。
「どうした」
私の趣味は人間観察といっても良いだろう。皆を知りたい、ただその思いから人を観察し始めた。だからこそ、あまり表情に出ない斎藤君の些細な変化に気付いてしまった。
「最近、時々だけど……どこ行ってるのかなって」
「……俺が出かけては不味いことでもあるのか?」
「そうじゃないけど、さ」
なら何故止める、そう訝しい顔をして聞く斎藤君はやはり何か隠しているような――気のせいかもしれないが、どこか違和感を覚えた。
「……定期的に仲間と飲みに行ったり、仲間と稽古したり。今までの斎藤君じゃないみたい」
「……新しい仲間との交流はだ。飲みに行くことや稽古は、今までもしてきた」
「でも、稽古は一人ですること多かった。わざわざ……誘ったりしなかった」
そう指摘すれば、意外にも斎藤君は黙ってしまった。それでも、しばらく目が合う。しかし、その鋭い目つきに(睨んでいるわけではない)私は目をそらしてしまった。
「何か他に言いたいことはあるか」
「……特には」
「では、俺は行く。打ち粉を切らしてしまったからな」
そのまま背を向けて去って行った。
新選組を離隊して、数ヶ月。別れの言葉も言えなかったことに、少し後悔をしていた。
後ろめたい気持ちがあって、顔を合わせるのが嫌だったから何も声をかけられなかった。今となってはどうしようもないが、せめて総司にだけは自分で言った方が良かったかな。
なんて思ってたり――。
まぁ、何にせよ今は御陵衛士に滞在しているわけだが。
それなりに上手くやってる。新選組時代からの知り合い(斎藤君や平助以外の)もいるし、最初から伊東派だった人も話せば良い人ばかりだ。
だけどやっぱり、私の心には少し物足りなさを感じていた。思い出すのはいつも試衛館からの仲間なのだから。
「ちょっと良い? 斎藤君」
御陵衛士の屯所を出ようとしていた彼を止めたのは、少し話をしたかったから。
「どうした」
私の趣味は人間観察といっても良いだろう。皆を知りたい、ただその思いから人を観察し始めた。だからこそ、あまり表情に出ない斎藤君の些細な変化に気付いてしまった。
「最近、時々だけど……どこ行ってるのかなって」
「……俺が出かけては不味いことでもあるのか?」
「そうじゃないけど、さ」
なら何故止める、そう訝しい顔をして聞く斎藤君はやはり何か隠しているような――気のせいかもしれないが、どこか違和感を覚えた。
「……定期的に仲間と飲みに行ったり、仲間と稽古したり。今までの斎藤君じゃないみたい」
「……新しい仲間との交流はだ。飲みに行くことや稽古は、今までもしてきた」
「でも、稽古は一人ですること多かった。わざわざ……誘ったりしなかった」
そう指摘すれば、意外にも斎藤君は黙ってしまった。それでも、しばらく目が合う。しかし、その鋭い目つきに(睨んでいるわけではない)私は目をそらしてしまった。
「何か他に言いたいことはあるか」
「……特には」
「では、俺は行く。打ち粉を切らしてしまったからな」
そのまま背を向けて去って行った。