思想と仲間

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民子も、伊東さんについていくのか?」

「だから迷ってる」

「意外だな。民子は総司と同じかと思ってたけど……。……俺の言うこと、あてにならないかもしれない」


それでも聞きたい。私は馬鹿だから、自分じゃ考えられない。考えても考えても答えが出ない。
平助にそう告げれば。彼は一瞬躊躇った。しかし、やがて口を開いた。


「俺はさ、正直伊東さんが間違ってるとは思わないんだ。俺が伊東さんを連れてきたって責任を感じてるのも事実だけど、やっぱ幕府の武士っていうより天皇さんの武士の方が俺の意志に近いっていうか」

「皆のこと嫌いとか、そういうんじゃ……」

「それは違えって!! 皆のこと好きだし、それは変わらない。だけど、近藤さんは幕府幕府っていう。俺はそこまで幕府に“執着”してないんだよな。天皇さんの武士になる、それが俺には正しい気がした」


執着。その言葉に、私ははっとさせられた。以前、伊東さんにも言われた。
“ここにいる理由”
元々、貧乏だったから平助が持ち込んできた上洛の話に皆食いついた。当時の私たちは、浪士組の募集に純粋な思いで江戸を出た。

平助も私も、皆がいるから自然に着いてきた。皆がいるから、幕府のために戦ってきた。――でも、それ以外に理由はない。
平助と同じ。幕府に執着する理由は、私にもないのだ。


「……民子? 大丈夫か?」


心配そうに覗き込む平助と目が合った。
昔からの知り合い。平助だけじゃない。斎藤君だっている。私は一人じゃない。


民子? どこ行くんだ?」

「平助」

「何だよ?」


背を向けた私に、一つの風が吹く。
静けさに瞳を閉じ、風の音を聞く。そして、目を開け真っ直ぐ前を見た。


「ありがとう」


平助は「へ?」という声を出したが、私は振り返らず歩みを進めた。

曖昧な理由はいつか、崩壊する。結局は、自分の意志や考え。偽りで、仲間をとっても自分が辛いだけ。
皆とは仲良しだった。特に総司とは、一番の仲良し。
それでも、彼らのように私には強く信じるものがなかった。新選組は好きだけど、こだわる理由が“仲間”だけじゃ崩れやすい。

天皇は神。羅刹という恐ろしいものを作る命を出した幕府とは真逆。羅刹のせいで、沢山の人が悲しみ、そして人の道を失った。皆のことは嫌いじゃない。好き。
大丈夫。友好的な離隊だから。

――私は、伊東さんのところへ向かった。

大丈夫。私は一人じゃない。きっと、大丈夫。







6.御陵衛士 END
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