思想と仲間
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4.後悔
「民子ちゃん、また甘味処行こうね」
「うん。是非」
夕餉の後、こっそり伊東さんのところへ向かおうとしたら総司に呼び止められた。何かと思えば、お菓子の話。何気ない会話。
しかし、総司の笑みには意味があるような気がしてならなかった。
「何?」
「んー?」
「そこ、通してよ」
無理に通ろうとすれば、総司はその身体で遮った。
「総司」
「民子ちゃん、どこ行くの?」
「どこって、(伊東さんの)部屋だけど」
すると、総司は「ふーん」と意味あり気な目を向けて、どこかへ行った。
一体、何だったのだろうか。訳が分からないまま、私は伊東さんのところへ向かった。
もしかしたら、総司に知られるかもしれないという思いが、意味あり気に見せているのかもしれないからね。気にしないことにした。
「いらっしゃい」
――笑顔で、伊東さんは迎えてくれた。静かな部屋には、ほんのり香が漂っている。
床の間には、一輪の薔薇。
「綺麗でしょ。沖田君がくれたのよ」
「……は?」
「ふふっ」
一笑して、伊東さんは入れたてのお茶をくれた。
「北西さん貴女……今の新選組に不満はないかしら?」
「不満、ですか」
皆だったら「伊東さんがいることが不満だ」と言いそうだ。しかし、私は特に不満はない。毎日、楽しいし。
それを伊東さんに言えば「本当に」と、目を細められた。
「……本当に不満はないのかしら」
「ええ」
「ふぅ、貴女は女性だし政には興味ないのかもしれないわね。でもね、よく考えてちょうだい」
伊東さんは、この後幕府の体制や自分の考えを述べた。しかし、正直よく分からなかった。
「……正直」
「分からない? じゃあ、貴女はなぜここにいるの?」
「え?」
「ここにいる理由よ。結局、貴女は佐幕と尊王どちらでも良いんじゃありませんの?」
そう指摘され、私は揺らいだ。
私は、どっちなんだろう。試衛館から一緒にいたから、着いてきた。それが理由だ。
でも――本当にそれが正しいの? いや、これが正しいという答えはないはず。
すると、私の考えは?
きっと、泣きそうな顔をしてたんだと思う。伊東さんは「あらあら」と息を吐いた。
そして、尊王派である理由と考えを私に語った。
「よく考えてみてちょうだいね。良い返事を期待していますわ」
伊東さんとの話し合いも終わり、一人でふらふらと自室へ帰る。それから、布団へ倒れ込む。
思想・派閥・考え――莫大な情報が、私の頭を混乱させる。
私はただ、皆に着いてきただけ。そこに幕府とか朝廷とか、そういう考えはなかった。
けれど今、どっちか決めなければならない。
自分はどっちなのだろうか。こんなに難しいことだとは思わなかった。
自ら伊東さんに近付いたことを、後悔した。あのまま、知らんぷりしておけば私はこのまま何も知らず新選組だけを信じていたはず。
「……ああっ、もう! 寝よ!」
一晩寝たら、何か決められるかもしれない。そう信じて、瞼を閉じた。
4.後悔 END
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「民子ちゃん、また甘味処行こうね」
「うん。是非」
夕餉の後、こっそり伊東さんのところへ向かおうとしたら総司に呼び止められた。何かと思えば、お菓子の話。何気ない会話。
しかし、総司の笑みには意味があるような気がしてならなかった。
「何?」
「んー?」
「そこ、通してよ」
無理に通ろうとすれば、総司はその身体で遮った。
「総司」
「民子ちゃん、どこ行くの?」
「どこって、(伊東さんの)部屋だけど」
すると、総司は「ふーん」と意味あり気な目を向けて、どこかへ行った。
一体、何だったのだろうか。訳が分からないまま、私は伊東さんのところへ向かった。
もしかしたら、総司に知られるかもしれないという思いが、意味あり気に見せているのかもしれないからね。気にしないことにした。
「いらっしゃい」
――笑顔で、伊東さんは迎えてくれた。静かな部屋には、ほんのり香が漂っている。
床の間には、一輪の薔薇。
「綺麗でしょ。沖田君がくれたのよ」
「……は?」
「ふふっ」
一笑して、伊東さんは入れたてのお茶をくれた。
「北西さん貴女……今の新選組に不満はないかしら?」
「不満、ですか」
皆だったら「伊東さんがいることが不満だ」と言いそうだ。しかし、私は特に不満はない。毎日、楽しいし。
それを伊東さんに言えば「本当に」と、目を細められた。
「……本当に不満はないのかしら」
「ええ」
「ふぅ、貴女は女性だし政には興味ないのかもしれないわね。でもね、よく考えてちょうだい」
伊東さんは、この後幕府の体制や自分の考えを述べた。しかし、正直よく分からなかった。
「……正直」
「分からない? じゃあ、貴女はなぜここにいるの?」
「え?」
「ここにいる理由よ。結局、貴女は佐幕と尊王どちらでも良いんじゃありませんの?」
そう指摘され、私は揺らいだ。
私は、どっちなんだろう。試衛館から一緒にいたから、着いてきた。それが理由だ。
でも――本当にそれが正しいの? いや、これが正しいという答えはないはず。
すると、私の考えは?
きっと、泣きそうな顔をしてたんだと思う。伊東さんは「あらあら」と息を吐いた。
そして、尊王派である理由と考えを私に語った。
「よく考えてみてちょうだいね。良い返事を期待していますわ」
伊東さんとの話し合いも終わり、一人でふらふらと自室へ帰る。それから、布団へ倒れ込む。
思想・派閥・考え――莫大な情報が、私の頭を混乱させる。
私はただ、皆に着いてきただけ。そこに幕府とか朝廷とか、そういう考えはなかった。
けれど今、どっちか決めなければならない。
自分はどっちなのだろうか。こんなに難しいことだとは思わなかった。
自ら伊東さんに近付いたことを、後悔した。あのまま、知らんぷりしておけば私はこのまま何も知らず新選組だけを信じていたはず。
「……ああっ、もう! 寝よ!」
一晩寝たら、何か決められるかもしれない。そう信じて、瞼を閉じた。
4.後悔 END
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