「俺はな、大坂で〇×％＆☆＃だったからよ、◎※★▽§！！」

「あ？　言ってること分かんねぇよ。ちょっと待ってろ。水飲んでから聞くから」

「うぃー。ん？」


ふと男が、夏を捉えた。


「良い女がいるじゃねぇーかよー。姉ちゃん」

「！」


近付く男に夏は、嫌な顔をした。しかし、逃げるわけにはいかない。
夏が身構えた時、永倉が男の体を止めた。


「おい、絡むんじゃねぇって言ってんだろ。大丈夫か？　夏ちゃん」

「あ、はい。ありがとうございます」

「そーいうなよー。女がいてこその男だろー？　なー姉ちゃん、俺と……うっ、おえ～」

「だぁーっ、汚ねっ」


幸い、男が出したそれは誰にもかからなかった。そして、そこでやっと水が届く。
永倉はそれを受け取ると、男に差し出した。


「ほら、飲めよ」

「何だぁ～水なんか、いらねーよ」

「あー分かった。分かった。こりゃ、酒だ」


水を酒と偽って呑ませる。男は一口呑んで、酒ではないことを見破る。しかし、永倉がなおも酒と言い張ると、男は納得し上機嫌になった。


「んじゃ、詳しい話は屯所で聞くから、来てくれるよな？」

「あぁ。良いってことよ！」


男は二つ返事で、隊士とその場を後にした。


「あ、あのっ」

「おー、大丈夫だったか？　嬢ちゃん」

「はい！　ありがとうございました」


頬を染め、頭を下げる女の子。それに対し永倉は


「い、いや俺はただ当たり前のことをしたまでだ」


と照れていた。


「……」


その様子を眺めて、夏は眉を顰めていた。嫌な予感と、押し寄せる不安が襲う。