「今日、左之さんが作ったからな～。千鶴の飯に慣れ親しんでるから、ちょっと不安だぜ」

「何だよ平助。文句あるなら食わなくても良いんだぞ？」

「ちょ、誰も食わねぇなんて言ってねぇし！」


いつもの会話、いつもの風景に私は笑みが零れた。
一番後ろを行く私は、皆が部屋を出てから最後に障子を閉める。だから廊下に出て振り返り、障子に手をかけ閉めていく。

その時だったのだ。閉める寸前に部屋の中を何気なく見た。
すると、そこには口元に笑みを浮かべ、顔中が血に塗れた澪さんがこちらを見ていた。

手は止まらず、そのまま閉めてしまったが私は一瞬にして混乱状態に陥った。

――今のは何？

あの僅かな時間と隙間で、澪さんだと何故、判別出来たのか自分でも分からなかった。

恐怖に心臓が震え、障子を再び開けて確認することも出来ない私は、そのまま前を行った沖田さんの後を急いで追った。


「逃がさない」


そう聞こえた気もした。






～END～
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