「んな怖がるなよ。もう来ないだろうぜ」
「え……?」
「あいつは、自分も入りたかったんだろうな。多分、千鶴と話したかったんだろうぜ。
澪がもういねぇって分かったんだ。これで、やっと成仏出来るかもしれねぇ」
「だろうね。あの子、何気嫉妬深いし。
澪ちゃんらしいや」
今思えば、
澪さんは幹部や他の隊士さんたちがいない時に現れた。
今まで誰かが側にいたから――でも、何でだろう?
何で他の皆には姿を隠し、私の前に現れたのか。原田さんのおっしゃる通り、話したかっただけ?
存在を知ってもらいたかったのかな。
それから釈然としないまま、二人はお仕事のため立ち去って行った。
「……」
しばらく呆然としていた私だが、不意に
「ちーづるちゃん」
と聞こえ、肩を震わせた。
ぞくぞくっと背筋が凍るのを感じた。
そんなはずはない。そんなはず――
気配一つ、物音一つすらしなかった。背後で聞こえた声は、明らかに女性の声だった。
「ねぇ、千鶴ちゃん。こっち向いて?」
背中に冷や汗が伝う。でも、振り返らないわけにはないかない。
私は、恐る恐る振り向くことにした。心の臓が、これでもかというくらい煩い。
――静寂。
今、目の前の“ヒト”から地に落ちたのは
血?
「きゃあああああ!!!!」