「でも、沖田さんから“みよちゃん、可愛いね”って言われたことは、ある」

「え！　それ、羨ましすぎやんか！」

「……嘘」

「嘘かいな！」


みよのは、笑って謝った。


「ほんまは、あんたのことよ」

「え？」

「あんたのこと“やんちゃな子”言うとったわ」

「え！？」


そりゃ、私は元気いっぱいの子どもだった。行動力があったと思う。急にいなくなって、両親を怒らせたこともある。その時は、ちょうちょを追いかけてたんだけど。


「嘘」

「え！？」

「あははは、加子ってば凄い顔やん。嘘に決まっとる。私が思うとっただけ」

「何だー……」


ほっと一安心。
だって、まだ好きと言えば好きなのだから。

みよのは、ひとしきり笑ったあとに真顔になりため息を吐いた。


「新撰組も、いつの間にか京からいなくなったなぁ」

「そうやなぁ。総司君が、うちらと遊ばんようになって、しばらくしていなくなったもんなぁ。確か」


しばしの、無言。そして、二人同時に


「どうしとるんやろ」


と呟いた。

総司君を、見なくなって初めてみよのと語った彼との思い出。まさか、こんなにも心が寂しくなるなんて思っていなかった。

でも、きっと総司君この空の下――どこかにいる。

そう思うと、少しは寂しさも紛れる気がした。