タバコの男 二部
名前変換とあらすじ
この章の夢小説設定【概要】
現パロ。タバコの男 一部
の続編。
土方に裏切られ、激しく
傷ついた。同じタバコの
臭いがすると、思わず振
り返ってしまう。そして
貴女は土方に復讐を決意
していたのだった。
【ページ数】
全9ページ
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「……早苗ちゃん、どう?」
千鶴ちゃんが真剣な表情で見てくる。
「バッチリ」
私がニヤリと笑って言うと、千鶴ちゃんも同じように笑った。
鞄のポケットから私は“ある物”を取り出す。
「ちゃんと録れてる?」
「録れてなきゃ困る」
その機械をちょいちょいっと操作すると、それは再生された。
《聞きたいことが……の》
《なん、よ》
《トシは最後、私にメ、ルをくれ……子供の頃は私を好きだっ、と言ってくれたけど……は本当なの? 私、騙したの、思い付きだって言った……本当、子供の頃から計画して……じゃない……》
鞄に入っていたから、少し音が小さくて雑音が入って聞き取りにくいが、間違いなく録れていた先程の会話。
この日のために買ったボイスレコーダーが役に立ったのだ。
「早苗ちゃん、やったね! これで……」
「うん、ありがとう。千鶴ちゃん。後は私がこれ持って警察に行くから。千鶴ちゃんは、この計画を知らない……それで良いね?」
「……本当はそんなことしたくないけど」
知らないふりをしてくれなきゃいけないのだ。
悪いのはあっちだけど、故意に騙されにいったと警察に知られるのはよくない気がするからだ。
「後は陰で応援しているからね!」
「ありがとう」
千鶴ちゃんはトシにまだお金の被害を受けていない。だから、警察に話を聞かれても長引くことはないだろう。
それから私と千鶴ちゃんは店のマスターにお詫びを繰り返し言い、店を後にした。
千鶴ちゃんは家に帰り、私はその足で警察に向かった。
勿論緊張はした。
トシに会った時のために常にボイスレコーダーを持ち歩いていた。たまたまバーで友達と会い、たまたま連れがトシだった。
そういう話をして、私が警察にレコーダーを提出する。
警察の人は、しばらく音声を聞くと「これを証拠として預かります」と私の被害届を受理してくれた。
その時から数日、聞き取りや調査の協力で拘束時間が長かったけどこの三年に比べたら軽いものだ。
数週間後、トシは指名手配にされあっさり逮捕された。
調査期間中に、私が小鳥遊さん家にトシが入るのをたまたま目撃したと言ったらそこから早かったのだ。
その後、全員ではないが今までの被害女性が出てきて裁判を起こした。
トシは当然の如く有罪になり、懲役六年が課せられた。
――……‥‥
そして私は今、トシの目の前にいる。
「よく会いにこれたな」
「一応、幼馴染なもので」
面会時間は限られている。話したいことはいっぱいあるが、手短にまとめよう。
「てっきり私を逆に訴えるかと思った」
「……俺の罪を隠してたことに関してか?」
「そう。まぁ、隠蔽したことに関しては私も警察から言われたよ。でも、被害者でもあるし今回協力してくれたから特別だって言われた。何で逆に主張しなかったの?」
「情けをかけてやったんだ。俺が長年やってこれたのも、早苗のお陰だからな」
でも刑務所入れたきっかけも私だ。
トシは恨んでいるだろうか?
でもそれは怖くて聞けなかった。
「……煙草、臭いしないね」
「刑務所は禁煙なんだよ。……寂しいか?」
「全然。トシに騙されたと分かったあの日から、あの煙草の臭いは大嫌いだから」
「……そうかよ」
「今でもトラウマなんだけど。同じ臭いがすると、不愉快になる」
「そりゃ悪かったな。どうせ俺の溜めこんだ金から慰謝料支払うんだ。その分も払うようにしてやる」
あっさりと言うトシは、本当に全て金で解決できると思っているみたいで、何となく寂しを感じた。
私は話題を変える。
「おじさんとおばさんにトシのこと言えなかった」
三年前、トシと一緒にいる時もトシが詐欺をやっていること私とトシのそれぞれの家族には言えなかった。
騙された後も、トシは元気だよ。仕事が忙しいみたいとしか言えなかった。ちなみに結婚はトシの仕事の関係で先延ばしになったとだけ伝えた。
「全く、あの子は……! 早苗ちゃんに全部伝言で頼んで自分顔見せないでなにやってるの!?」と怒っていたっけ。
実家に帰る度に、トシの両親からの元気か。うん元気だよ。のやりとりがとても悲しかった。
「……結局、警察から知らされる羽目になったがな」
そう。結局、私が言えずにいたことも筒抜け。何で言わなかったの、とも強く聞かれた。
「やっぱり、私は……」
トシのこと恨んだし、許さないと事を起こしたけどそれでも私はまだ彼の事を――。
「……大馬鹿だな、てめぇは」
辛くて、俯いていると
「751番、時間だ」
警務官が時間を告げる。立ち去ろうとするトシに私は最後に何か言わなきゃ、と思いっきり立ち上がる。
でも何も浮かばなくて、トシの背中を見つめることしか出来なかった。
しかし、急にトシが立ち止まった。そして少しだけこちらに顔を向けた。
「もうここには来るんじゃねぇ」
「え?」
「いや……二度と、会わない方がいい」
どういうことかと聞こうとした。
だけど、トシはそのまま行ってしまった。
「馬鹿……」
――あれから七年。
時間と共に私の中であれが過去のものになった。だけど今でも、ふとあの匂いがすると辺りを見回してしまう。
千鶴ちゃんはとっくに結婚したというのに、私は未だ独身だ。それどころか彼氏すら出来ない。
忘れたくても、忘れられない私は本当に大馬鹿だ。
あ、ほら。今もあの香り。やっぱり気になって探ってしまう。
「え?」
数メートル先にいたのは……。
END
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