タバコの男 二部
名前変換とあらすじ
この章の夢小説設定【概要】
現パロ。タバコの男 一部
の続編。
土方に裏切られ、激しく
傷ついた。同じタバコの
臭いがすると、思わず振
り返ってしまう。そして
貴女は土方に復讐を決意
していたのだった。
【ページ数】
全9ページ
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ついに本性を現したトシは、更に続ける。
「まさかこの広い世界でこんな偶然あるとは、恐ろしいぜ」
偶然ではない。
確かに最初は偶然見つけた。だけど、そのあとは仕組ませてもらったもの。
と、言いたいがそこはグッと堪えた。
このトシを然るべき場所へ送るためにね。
私は鞄のポケットからゆっくりとスマホを出した。
「聞きたいことがあるの」
「なんだよ」
あの日のメールは取ってある。ササッと操作して当時送られて来たメールを眺めた。
「トシは、最後に私にメールをくれた。子供の頃は私を好きだったと言ってくれたけど、あれは本当なの? 私を騙したのは思い付きだって言ったけど、本当は子供の頃から計画してたことじゃないの?」
どうしても聞きたかったこと。
昔から私はトシを好きだった。だから私の予想が当たってないことを信じたい。
「これだけは嘘偽りなく教えてほしい」
トシは私をじっと見つめた。
そして真剣な面持ちのまま答えた。
「昔は好きだったってのは本当だ」
トシは嘘つきだから、その言葉も本当かどうか分からない。
だけど少し安心する自分がいた。
「でも、純粋に好きだったのはガキの頃の話だ」
「騙そうと決めたのは……」
「メールでも言った通りだ。三年前、思い付いちまったんだよ。思い付く前は、テメェの傍は居心地がよく本当の俺でいられた。だけどな、やっぱ金には負けるんだよ。……難しかったぜ。俺の本当の姿知ってるお前を騙すのは」
最後は勝手に通帳から金を取っちまったが、とトシは付け加えた。
「……この三年、女の子をずっと騙し続けてたの?」
「それ聞いてどうすんだよ。分かってんだろ?」
「一体どれくらいの子を騙したの。千鶴ちゃんに辿り着くまでも相当騙してきたんでしょ」
「さぁな。だが、知ってるだろ。俺が時間かけて一人の女に手を掛けることを。そんな多くはないぜ」
小鳥遊さんのことも追及したいが、それを言うと今までの計画と何か企んでいることがバレてしまうので言えない。
「許せない……。他人に対して身分偽造は簡単にできても、私は小さい頃からトシを知っているから騙せないよ」
「騙せねぇ? 現にてめぇは騙されたじゃねぇか。その幼馴染の男に」
「そうね。でも私は貴方が“土方歳三”だって知ってるのよ」
「だから何だ。例え俺の本名や素顔を知ったところで、てめぇに何が出来る? どうせ警察行ったんだろ? どうだった。無駄だったよな?……そういう風に計算してんだよ、こっちはな」
勝ち誇ったような顔で語るトシに苛立ちを覚える。
「確かにトシが犯人っていう確たる証拠はないでしょう、とか顔写真もないんじゃあねとか色々言われて相手にしてもらえなかった。でも!……絶対許さないから」
「てめぇに何が出来る」
「出来るよ。だって――」
「早苗ちゃん!」
千鶴ちゃんが突然私の名を叫ぶように口にした。
彼女を見て、私は一気に冷静さを取り戻す。
危なかった。思わず口にしてしまうところだったのだ。千鶴ちゃんに目で「ごめん」と合図を送る。
ちゃんと千鶴ちゃんはそれを受け取ってくれたような気がした。
そして、トシに向かって千鶴ちゃんが口を開く。
「もう止めましょう。徳島さんが私を騙してたのは分かりました。お金のために私に近付いて良い顔してたんですね……」
「……」
寂しい顔をする千鶴ちゃんは本当に演技派だ。
私は、千鶴ちゃんの手を掴んで軽く引き寄せた。
「トシ、初めてでしょう。失敗したの」
「あぁ」
「……ショックじゃないんだ。今までの完全記録を打ち破られて」
「今回は運が悪かったんだよ。まさか千鶴がてめぇのダチだったとはな。それにここで会わなきゃ、俺は勝てたと思うぜ」
「……とにかく絶対許さないから」
「そうかよ。精々、頑張るこったな」
トシはそのまま私たちの横をすり抜けて店を出て行った。
やっぱり嫌な臭いだ。