タバコの男 二部
名前変換とあらすじ
この章の夢小説設定【概要】
現パロ。タバコの男 一部
の続編。
土方に裏切られ、激しく
傷ついた。同じタバコの
臭いがすると、思わず振
り返ってしまう。そして
貴女は土方に復讐を決意
していたのだった。
【ページ数】
全9ページ
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「え?」
私の鋭い視線の先に千鶴ちゃんも目を向ける。
二人して見た先に、彼はいた。
しかも――
「……子連れとは」
「え? まさか、早苗ちゃん……あれが?」
小学校一年か二年くらいの男の子とボール遊びをするトシ。その傍らで微笑み立つ、女性。
光景は家族そのものだが、子供の年齢からしてトシの子ではないだろう。
となると、今のターゲットは母子家庭の親子か。
ふつふつと湧いてくる怒りと悲しみ。
今すぐにでも行って殴り飛ばして、詐欺師野郎と叫びたかった。
だけど、それをやってしまうと復讐は難しくなる。下手したらこっちが頭のおかしい悪者だ。
ぐっと堪えていると、千鶴ちゃんが静かに私の生を呼んだ。
彼女の方を向くと、その瞳は強いものだった。
「頑張ろうね。一緒に」
「うん……!」
私たちは急いで家に帰った。そして荷物を置くと、再びあの河川敷に行く。
ついに決行の時が来たのだ。長きに渡り、千鶴ちゃんと練った計画。
それを実行する第一歩を踏み出そうとしていた。
千鶴ちゃんと合流すると、彼女は先程とは違いある物を身につけている。
そう、それはブランド品だ。ちょっとしたネックレスや小さいイヤリング等、お金を持っている人が買うようなブランド品。
トシはブランドに詳しいから絶対わかるはずだ。
河川敷ではまだトシたちは遊んでいたが、遠くから様子を探り彼らが動き出すのをじっと待った。
すると、日も傾き始めた一時間後に漸く彼らは河川敷を後にする。幸い歩きの様で、尾行するには楽だった。
それから一件の家に辿り着く。そこは大きめの家で、外装も綺麗だった。庭には花が飾ってあり、高そうな車も止まっていた。
「今日はありがとう。楽しかったわ」
「あぁ。いつでも呼んでくれ」
「おじさん、また遊んでね! 今度はサッカーがいい!」
「サッカーか、良いな。楽しみにしてるぜ」
子供の頭を撫でるトシは笑顔だ。
……誰だあれ。
本当にそう思うくらい別人を演じている。あの親子もまた騙されているのだろうか。
「早苗ちゃん、私行って来るね」
「千鶴ちゃん、ごめん。こんなことに巻き込んで」
「ううん。私が早苗ちゃんのためにやりたいって思ったことだから、気にしないで」
「ありがとう。……気を付けてね。トシは頭も良いから」
「任せて!」
そう言うと、千鶴ちゃんは走って行く。
私は陰から様子を見守る。復讐の始まりだ!
まず第一に、千鶴ちゃんがトシに軽くぶつかる。
「キャッ……! ご、ごめんなさい!」
「こっちこそ悪い。大丈夫か?」
この日のために色んなパターンを考えた。トシが一人でいるパターン、誰かといるパターン。多少、千鶴ちゃんの臨機応変が必要だが大体がシミュレーション済みだ。
「はい。すみません、急いでたもので……あっ、服にファンデーションが……! す、すみません! クリーニング代出しますので!」
「いや、良いって。これくらい洗えば落ちるだろ」
「いえ、私の使っているファンデーションは水じゃ落ちないんです! 奥様もすみません、今すぐクリーニング代をお支払いいたしますんで」
さりげなくブランドの財布を出す。
何となくトシの目が鋭くなった気がした。
「え、いや、私、奥さんじゃないですから……」
「え?」
「おじさんは友達なんだよ! ね!」
「あ、あぁ。それより、本当に気にしなくて良いんだぜ」
「でも……」
「どうせ安もんの服だし、大丈夫だ」
千鶴ちゃんは少し悩むふりをして、ブランドの鞄から可愛いメモ用紙とペンを取り出した。
そしてサラサラと書いてトシに差し出す。
「分かりました。ですが、本当に特殊な化粧品なので……もし落ちなかったら連絡ください。いつでもお支払いいたします」
これでトシは千鶴ちゃんの連絡先を手に入れたわけだ。
「本当に気にしなくて良いんだぜ?」
「いえ、それでは私の気が済みませんから。あっ、それでは私は急いでいるので……!」
最後にメモ帳とペンを収める際に、鞄から少し高そうなハンカチをわざと落とす。
「あっ」
トシがバッチリそれを確認したところで、千鶴ちゃんはハンカチを拾い軽い挨拶をして足早に去った。
私はその後、トシの連れの親子がその家に入って行くところを見届けてその場を立ち去った。