タバコの男 二部
名前変換とあらすじ
この章の夢小説設定【概要】
現パロ。タバコの男 一部
の続編。
土方に裏切られ、激しく
傷ついた。同じタバコの
臭いがすると、思わず振
り返ってしまう。そして
貴女は土方に復讐を決意
していたのだった。
【ページ数】
全9ページ
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私のトシ探しは主に夜だ。
彼はお金が目当て。ちょっとした金持ちが集まりそうなお洒落なバーや、夜の繁華街に出ている。
仕事した後で疲れがあるし、そんなに長くは出来ない。
今日は雰囲気の良いバーに行ってみた。
「いらっしゃい」
お客さんは少ない。パッと見、トシらしき人物はいない。
「何にしますか?」
「……飲みやすいカクテルを。フルーツ系で」
「かしこまりました」
何も飲んで帰らないのは気が引けるので、必ず一杯は頼むことにしている。
それに、後で来るかもしれないじゃない?
「お待たせしました。ギムレットです」
「これは……」
「ジンとライムジュースをシェイクしたもになります。1890年頃、イギリス海軍の軍医であったギムレットという人物が、将校のジンの飲みすぎを防ぐためにライムジュースで薄め飲むことを推奨したことから出来たものです」
飲むと、少し辛口のお酒であったが爽やかな酸味もある。
「美味しい……」
「それは良かった。ちなみに、カクテルには花言葉のように意味があるのはご存知ですか?」
「え、そうなんですか?」
初耳だった。ここのバーテンは丁寧なのだろうか。他のところでは説明されたことがなかった。
「このお酒にはどういう意味があるんですか」
「……遠い人を想う」
「!」
「貴方も誰かを想っていますか?」
偶然とは怖いものだ。
三年会ってないトシを探すためにたまたま入ったバーで、おまかせで出て来たカクテルの意味がまさかそんな……。
でも――
「……そんな甘酸っぱい想いじゃないです」
その時、ふと香ってきた臭い。それはトシの煙草の臭いだった。
バーテンの「いらっしゃいませ」という声。
まさか、と思って振り返る。
「何にしますか」
「ビールで」
「かしこまりました」
そこには知らないダンディそうなおじさんがいた。
なんだ、と胸を撫で下ろす。
私は、あの日からトシと同じ煙草を吸っている人に敏感だ。
あの日、空っぽの部屋に染みついた煙草の臭いが今でも忘れられない。大好きな人の吸う煙草の“匂い”が思い出と共に“臭い”に変わった瞬間だった。
結局、他にも何件か見たがトシは見つからず私は今日も断念せざるおえなかった。
――……‥‥
「千鶴ちゃん、買い物付き合ってくれてありがとね」
「そんなこと……! 私も楽しかったし、誘ってくれて嬉しかったよ」
休みの日、千鶴ちゃんと買い物に行った。こういう息抜きの日も必要だ。
ずっと復讐に駆られていると、体も精神もおかしくなってしまうからね。
良い天気に良い青空、散歩も兼ねて少し遠回りをして家に帰ることにした。土手を千鶴ちゃんと歩いていると、多くの家族連れが河川敷で遊んでいる様子が目に入った。
別に集団と言うわけではない。それぞれ遊びに来ている家族のようだった。
「ここって結構、家族で遊びに来るには持って来いの場所なのかな」
「最近、公園もボール遊びとかうるさいから……遊べる場所が限られて來るのかもね」
「今度、二人で遊びに来て見る?」
ちょっと冗談っぽく言ってみたら、千鶴ちゃんも「それいいね」と乗ってくれた。
二人で笑いあった。
こんな穏やかな日が凄く良く思えた。
しかし、視線を多くの家族連れに戻したところで私の足は止まった。
「……早苗ちゃん?」
不審に思った千鶴ちゃんの声も、私には届いていなかった。
そんなまさか、と胸のバクバクが止まらない。
こんな昼間にこんな場所で――
「……見つけた」