タバコの男 二部
名前変換とあらすじ
この章の夢小説設定【概要】
現パロ。タバコの男 一部
の続編。
土方に裏切られ、激しく
傷ついた。同じタバコの
臭いがすると、思わず振
り返ってしまう。そして
貴女は土方に復讐を決意
していたのだった。
【ページ数】
全9ページ
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幼馴染は結婚詐欺師だった。私はその正体を知っていて、彼が騙してきた女性の話も聞いていた。
何年もそういう生活を続けた後、彼は言った。詐欺師を辞め、身を固めようと思うと。
そしてこれからの伴侶として私を選んでくれた。
幼馴染だから、よく知っているから。その思い込みのせいで全然気付かなかった。
私も騙されていたのだ。
結婚式一週間前に、彼にお金を全部盗られ逃げられた。それ以来、一度も会っていない。どこにいるかも分からない。
――……‥‥
あの日から三年。
寿退社をした以上、もう同じ会社には戻れなかった私は今現在別の会社で再就職をした。
しばらく友人の家でお世話になっていたが、今は一人暮らしを何とかやっている。
時間が経って冷静になった今、思うことがある。
私を騙したトシは「子供の頃は純粋に好きだった」と最後に言ったが、あれも嘘だったのではないかと。
騙された後に言われたことだから、嘘を吐く理由があるか分からないけど……。
でも昔から口が上手かったから、子供の頃からもしかしたら詐欺師のようなところがあったかもしれない。もしかしたら実は私が彼の一番最初のターゲットで、長年に渡って騙されていたのではないかと思い始めていた。
「絶対に見つけて復讐してやる」
その言葉が私の口癖になっていた。
騙された直後に、お世話になった友人と話すときや一人になった時……トシを思い出す度に口にした。
普通なら友人はうんざりするだろうけど、意外にも協力的な態度を見せてくれた。
今彼がどこにいるか分からないけど、見つけたらどうするか度々話を持ち出してくれた。
「ありがとう、千鶴ちゃん」
「ううん。私にできることがあるなら何でもやるよ。話しを聞いてて本当に許せないもの……!」
雪村千鶴ちゃん。騙された直後から私を家に泊めてくれ、再就職のサポートまでしてくれた友人だ。
「でも、どこにいるんだろう。その土方さん」
「んー……分からない。会社に就職したって言うのも結局嘘だったし」
「会社自体はあったんだよね?」
「うん。だけど、土方歳三って人は在籍してないって」
千鶴ちゃんは割と金持ちで三年前、一文無しの私に探偵を雇う費用を貸してくれたのだ。
「警察も動いてくれないんだよね」
千鶴ちゃんの言う通りだった。
三年前、幾度となく警察には行った。
でも「通帳からお金が消えたと言われても……婚約者がおろしてるんですよね?」とか「その土方さんという人が結婚詐欺師っていう証拠はないんですよね?」とか「顔写真がないって、幼馴染で婚約までしたのに?」とか言われ、動けないと追い帰された。
トシは写真が嫌いだった。それは常々言ってた。
「こういうことをしている以上、写真なんかのこせねぇ。顔晒すことは出来ねぇよ」と。
私と付き合い出してからは写真を撮ろうとすると「やめてくれ。慣れてねぇから少し……恥ずかしい」と拒否していた。
「子供が出来たら家族写真撮れないじゃん」って言ったら苦い顔して「……それまでには何とかする」と。
本当は、私もターゲットだったからなんて。悲しくてしょうがなかった。
「……絶対見つけて復讐してやる」
「うん。早苗ちゃんを騙したこと、絶対後悔させよう? もし見つけたら真っ先に教えてね」
「ありがとう。絶対見つける」
――とはいえ、昼間働きながらのトシ探しは結構きつい。
SNSでも、彼は詐欺をする度に名前を変えてアカウントを作り直すから見つからない。内容もでっちあげで完全に別人だ。
もうこれ以上、誰かを雇うお金もない。千鶴ちゃんに借りても、返せなくなっちゃうから自分でやるしかないのだ。
だけど、私には最大の強みがある。
それは名前だ。彼の本名が土方歳三ということを知っていることが、他の被害者とは違う。
それに彼の家族も知っている。絶対に何が何でも見つけて、彼からお金を取り返し罪も償ってもらう。