敵討ちのために
名前変換とあらすじ
この章の夢小説設定【概要】
貴女のお姉さんは新選組
女性隊士だったが、ある
日お姉さんは遺体となっ
てかえってきた。
剣術に優れている貴女は
病弱だった兄の遺言で敵
討ちを決意。京に向かい
名前と正体を偽り新選組
に入隊するのであった。
【ページ数】
全12ページ
【備考】
・恋愛要素は少なめです
が多少あります。
・後半が原田寄り。
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「は、原田さん!」
隊士の一人が声をあげた。何事かと、原田と一緒に雪野も立ち上がった。
隊士が一斉に同じ方向を見ている。
視線を追うと、そこには雪野にとって見たことない人が立っていた。
(誰? 皆は知っているみたいだけど……)
「てめぇはっ!」
その男は、奇妙な形をしていた。まず着物を着ていない。いや、決して裸ということではない。日本の着物ではない。
髪も日本人独特の黒色とは違った。(それを言ったら新選組幹部らのほとんども異形だが)
肌の色も、日焼けしすぎというほど黒い。
異国の人かと雪野は思った。しかし
「こんなとこで奇遇だな」
男はしっかりと日本語を話していた。
「てめぇ……今度こそしとめてやる!」
原田が男と対峙する。
隊士の一人が「副長に報告してきます」と走った。
「別に今日は戦いに来たわけじゃねぇよ。たまたま通りかかっただけだ」
「こっちはな、てめぇにお返ししなきゃなんねぇんだよ……なぁ、不知火!」
男は不知火というらしい。雪野が、それを知ったところで誰とも分かるはずなかった。
だから、他の隊士に聞いた。
あれは誰だと。
不知火を睨む隊士は、快く教えてくれた。
「あいつは、俺たち十番組の隊士を八人もやったんだ!」
「えっ」
「芦田、お前が来る前のことだよ」
――ということは。
雪野は不知火をまじまじと見つめた。
この男が、雪奈の命を奪ったのだ。
銃弾で喉をやられ、息絶えた姉の無念を晴らす時がついにやってきたのである。
不知火は原田しか眼中にないようで、雪野の視線には気が付かない。
「まぁ、てめぇが相手だとちょっとは楽しめるしな。良いぜ、遊んでやる」
銃を取り出す不知火に、原田は容赦なく向かっていった。
不知火も引き金を躊躇いなく引いた。
(凄い。原田さん全部避けてる)
雪野は、原田の戦いぶりに関心を寄せた。しかしすぐに目的を思い出す。
そして、雪野は歩んだ。
両者が動きを一旦止めたのを見計らい、雪野は二人の間に入る。
「あ? 何だ」
「鉄太っ、引っ込んでろ!!」
「……」
他の隊士も、雪野の行動に慌てた。
その時、屯所に走って行った隊士が援軍を引き連れ戻ってきたのだ。
「左之! 無事か!」
「新八……って、おい何で皆来てんだ」
そこには、土方を始め沖田・斎藤・藤堂・永倉・斎藤。
「って、風間はいねぇのか」
「不知火だけだぜ」
原田の答えに舌打ちをする土方。沖田も顔を顰めている。
「何だよ、てっきりあいつら全員いるんかと思って着いてきたのに」
「平助に同感だ」
すると不知火。
「残念だったな。今日は俺様だけだ。っていうか、俺は戦うつもりじゃなかったんだけどな」
「うるせぇ! 俺はお前を倒して、お前に殺された仲間の仇を討つだけだ」
「あぁ、そうだったな。何て言ったっけ……雪奈、だったか?」
その名前に、全員の殺気が増した。
すると今まで黙っていた雪野は、静かに刀を抜いた。
そして、不知火に突きつけるようにして刀の先を向けた。
「ぁあ? さっきから何なんだ」
「鉄太、退け! こいつは駄目だ!」
原田が雪野を掴み、後ろに後退させようと引っ張った。しかし雪野は動かない。
「おいっ」
「……原田さん。離していただけますか。私は、この日を待っていた」
「は?」
そして原田の手を振り切ると、一歩前に出る。
不思議なのは不知火である。目の前の、弱そうな新選組隊士が自分に刃を向けているのだ。
だが、その状況は逆に不知火の興味を引く。
「てめぇ、面白そうだ。俺様に勝てると思ってんのか?」
「勝たなければならない」
「……」
そして雪野は刀を構えた。それは、新選組隊士が知っている雪野の構え方ではなかった。
ただ、全く知らないというわけではなくそこにいる誰もが軽く狼狽した。
雪野は目を瞑り、深呼吸をする。
そして父親との会話を思い出した。
「雪野、お前はこれから自分を別の人間で隠さなければならない。名を偽り、正体を偽るというのはそういうことだ」
「はい」
「しかし、真剣勝負……仇を討つ時は本当の自分を曝け出すのだ。偽った名や正体という皮を脱ぎ、ありのままを。それが戦いの作法だ」
ゆっくりと意識が浮上する。
雪野は、目を開き不知火を見つめた。
それは鋭く、雪野の決意と意思が宿っていた。
「なるほどな。真剣勝負ってとこか……。俺の名は不知火匡。てめぇの名と目的、聞いてやろうじゃねぇか」
ついに来た――。
「私の名は、桜田雪野! 我が姉、桜田雪奈の仇を今こそ果たす!」