敵討ちのために

名前変換とあらすじ

この章の夢小説設定
【概要】
  貴女のお姉さんは新選組
  女性隊士だったが、ある
  日お姉さんは遺体となっ
  てかえってきた。
  剣術に優れている貴女は
  病弱だった兄の遺言で敵
  討ちを決意。京に向かい
  名前と正体を偽り新選組
  に入隊するのであった。
【ページ数】
  全12ページ
【備考】
  ・恋愛要素は少なめです
  が多少あります。
  ・後半が原田寄り。
本名(名前)
本名(苗字)
偽名(名前/男の名)
偽名(苗字)
姉の名前
兄の名前



(どうしよう、どうしよう。自信あると言ったものの……私のとこ田舎だし。そこでは誰にも負けない自信があったけど)

「土方さんも鬼畜だよな……よりによって総司と対戦させるなんて」

「平助の言うとおりだぜ! 全く何考えてんだかねー」

「しんぱっつぁん、いてぇから!! 頭! 頭が潰れる!!」


道場にはわらわらと見物客が集まっていた。(といっても全部隊士だけど)
雪野は、持ってきた稽古用の着物に着替えて座って待っていた。近藤と土方、そして沖田はまだ来ていない。


(あぁー……父上にあれほど“世界は広い。お前より強い者はたくさんいる。特に京は都だ。強い者もたくさん集まっているだろう”って言われてたのに!! 沖田さんってさっきの人だよね……やっぱ強いのかな? まぁ、即負けるってことはないよね)


その時、道場が静かになった。
雪野が見上げると、近藤と土方と一緒に沖田も入ってくるところだった。

そして、近藤が定位置につくと声を出した。


「えー……これからトシの計らいで、総司とこの入隊希望者の芦田君の試合を始める。芦田君が総司に勝つことが出来たら入隊を認め、総司が勝ったなら諦めてもらう」


そこまで言うとあちこちから「無理だろ」という声が密やかに上がる。


「さ、両者位置について」


雪野は立ち上がり、位置についた。一方、沖田も位置につく。
余裕のある笑みと、その緑色の瞳が何もかもを見透かされているようだった。

お互いに礼をし、挨拶を交わす。
そして構える。


「それでは……始め!」


近藤の一声で試合は始まった。

――しかし、両者一歩も動かない。

次第に観客が「どうしたんだ」とざわめき始める。
それに便乗したように沖田も「どうしたの?」と声を発した。


「来ないなら、こっちから行くよ?」

「――え」


一瞬、何が起こったか分からなかった。
沖田が動いたと認識するころに、雪野は漸く自分の首に木刀の切っ先が来ていることを理解した。


「……話になんねぇな」


土方が呟いた。近藤も「あー」と気まずそうだ。

観客である隊士たちからは「まぁ沖田さんだしな」「当たり前か」などと言葉が漏れる。


「これで諦めがついただろ。帰れ」


土方は冷酷に言い放ち、部屋をあとにしようとする。
「待ってください」そう言いかけた時、意外にも沖田が土方に「待ってくださいよ、土方さん」と声をかけたのである。
そして、雪野の方を向き


「君、緊張しすぎ。田舎の出身でしょ? あんまり多くの人に見られることになれてない。……違う?」


と問い掛けた。


「総司、そいつは負けたんだ。緊張してようが何だろうが、これが実践だと死んでたんだ。そんなやつは新選組にいらねぇんだよ」

「確かに、そうですけど。実践で役に立たないようなやつは新選組としてやっていけない。初めての斬り合いで早々に死んじゃうだけだって、分かってますよそんなこと」

「だったら」

「でも、本当の実力を見ないうちに帰して、後で実は凄い強かったーなんてこと、あるかもしれないですよ? それに、実戦で役に立つように鍛えてあげるって手もありますけど」


沖田の言葉に、土方は目を見開いた。そして


「分かった。あと一戦だけ見てやる」


と元の位置に戻ったのである。
これには雪野、沖田に礼を言わねばと口を開いた。しかし沖田はそれを遮って告げた。


「あ、勘違いしないで。僕はただ君が面白そうと思っただけだから」

「お、面白そう?」


首を傾げる雪野に沖田は笑う。


「だってさっき門の前で“入れてくれるまで帰りません。ここにずっと居座ります”って座り込みを決めちゃうんだから相当面白いなって」

「は、はぁ……(意味不明だ)」

「てめぇら! 雑談してねぇで、とっとと始めやがれ!」

「はーい。じゃあ、近藤さん宜しくお願いします」


そして、再び対戦が始まった。


(二度目はない……!)


雪野は集中した。今度こそ、沖田の動きを見逃すわけにはいかないのだ。
始まりの合図がかけられ、またもお互い一歩も動かなかった。


「良いね。君、さっきより真剣さが伝わってくるよ」

「それはどうも。今度はこっちから行きます」

「……来なよ」


瞬間、雪野は地面を蹴った。
足の速さには自信がある。あっという間に、沖田の懐に近づき脇腹目掛けて木刀を振るった。

沖田は小さく「へぇ」と呟くと、そのままそれを木刀で受け止めた。
雪野にとって、これは予想外でもなんでもなく次には沖田から見て左側に抜ける。
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