2016.4.4~2018.3.1
『平和が忍社会にもたらすこと~仕事編~』
大きな爆音と共に襲い掛かってきた、巨大な土煙。思わず背を向けた瞬間、はっと目を覚ました。
静かな部屋。カーテンの隙間から陽が射していて、私は寝ている。
「夢……」
さっきの光景が夢ということに気付いて、安堵の息を漏らした。
――未だ、戦争の傷は癒えない。
里がどんなに平和になろうとも、他国同士の争いがなくなろうとも、ふとした時に戦争経験者は思い出すのだ。
じんわりと背中まで滲む汗を洗い流したくてシャワーを浴びる。その間も、夢の光景が離れない。
あんな光景は経験がないけれど、戦争は経験がある。第四次忍界大戦を境に世界には平和が訪れた。
それに伴って私は忍を辞めた。
忍の存在について分からなくなってきたからだ。
平和になった今、忍の技がいる?忍の技がないと生きていけない?
……若い世代の中にだって、同じことを疑問に思っている者もいる。
今の忍の仕事は、害獣退治や迷い猫探しなどかつてDランク任務と言われた仕事がほとんどである。
たまにAランクがあっても、恐らく大名の護衛(今はそんなに狙われなくなったが、過激派がまだいるかもしれないし)が主だろう。(辞めたから知らないけど。想像)
それらの点では、忍の技が有利になるだろうけど仕事の数は少ない。
かつて多額の報酬を得られた暗殺任務も、他国同士が仲良くやっている以上ないに等しいと思われる。他国は知らないけど、うちの里は今の火影様がそんなこと絶対しなさそうだ。
里の忍を見ても、ほぼ毎日遊んでいる下忍や忍とは関係ない仕事を兼任している中忍・上忍をよく見かける。
正直、忍だけではやっていても食べていけない日がやってくる。戦争中ずっと考えていた。
(一時的に手を結び、暁を倒すことになっているが元は敵同士の皆も仲良くなりつつある。これは戦争が終わっても変わることがないだろうな。そうなると、平和になるから……必要のない仕事が出てくるわけで……忍の数を考えると、回ってくる仕事はあまりなくなる。うん、戦争が終わったら忍を辞めよう)
そんなことを勝手に心の中で決めた。
平和なことは良いことだ。
あんな悲惨な光景を見ることもない。知らない方が良い。
――私はお風呂から上がり、仕度をすると家を出た。
今の仕事場に行くためだ。
戦後すぐに必要とされた職なだけあって、すんなりと転職できた場所。
私の目の前にそびえ立つのは木の葉病院。多くの患者が早朝からいる待合室を抜けて、端っこに設置された心療内科のドアを開ける。
「先生、おはようございます!」
看護師が皆、笑顔で挨拶してくれる。
「おはよう。今日も忙しくなるよ!」
私は心療内科医だ。
戦争でトラウマを持ったものや家族をなくしたもの、その人たちのケアをするために必要とされた職。
時が経っても忘れられないのは私だけじゃない。
今も多くの患者さんが訪れる。もちろん、戦争関連のこと以外で悩みを抱えている患者さんも増えている。
――世界は沢山の忍が生き方を変えていく時代に入った。
――……‥‥
(ナルト、ちょっといいか)
(ん? どうしたシカマル。そんな険しい顔して)
(今アカデミーから報告があがったんだが、今年の入学人数が昨年の半数だそうだ)
(は? 何で……今まではそんなに一気に減ってなかっただろ)
(それはまだ分からねぇ。調査を開始させた)
□■□■□■□■□■□■
掲載期間:2016/10/7~2016/12/6
大きな爆音と共に襲い掛かってきた、巨大な土煙。思わず背を向けた瞬間、はっと目を覚ました。
静かな部屋。カーテンの隙間から陽が射していて、私は寝ている。
「夢……」
さっきの光景が夢ということに気付いて、安堵の息を漏らした。
――未だ、戦争の傷は癒えない。
里がどんなに平和になろうとも、他国同士の争いがなくなろうとも、ふとした時に戦争経験者は思い出すのだ。
じんわりと背中まで滲む汗を洗い流したくてシャワーを浴びる。その間も、夢の光景が離れない。
あんな光景は経験がないけれど、戦争は経験がある。第四次忍界大戦を境に世界には平和が訪れた。
それに伴って私は忍を辞めた。
忍の存在について分からなくなってきたからだ。
平和になった今、忍の技がいる?忍の技がないと生きていけない?
……若い世代の中にだって、同じことを疑問に思っている者もいる。
今の忍の仕事は、害獣退治や迷い猫探しなどかつてDランク任務と言われた仕事がほとんどである。
たまにAランクがあっても、恐らく大名の護衛(今はそんなに狙われなくなったが、過激派がまだいるかもしれないし)が主だろう。(辞めたから知らないけど。想像)
それらの点では、忍の技が有利になるだろうけど仕事の数は少ない。
かつて多額の報酬を得られた暗殺任務も、他国同士が仲良くやっている以上ないに等しいと思われる。他国は知らないけど、うちの里は今の火影様がそんなこと絶対しなさそうだ。
里の忍を見ても、ほぼ毎日遊んでいる下忍や忍とは関係ない仕事を兼任している中忍・上忍をよく見かける。
正直、忍だけではやっていても食べていけない日がやってくる。戦争中ずっと考えていた。
(一時的に手を結び、暁を倒すことになっているが元は敵同士の皆も仲良くなりつつある。これは戦争が終わっても変わることがないだろうな。そうなると、平和になるから……必要のない仕事が出てくるわけで……忍の数を考えると、回ってくる仕事はあまりなくなる。うん、戦争が終わったら忍を辞めよう)
そんなことを勝手に心の中で決めた。
平和なことは良いことだ。
あんな悲惨な光景を見ることもない。知らない方が良い。
――私はお風呂から上がり、仕度をすると家を出た。
今の仕事場に行くためだ。
戦後すぐに必要とされた職なだけあって、すんなりと転職できた場所。
私の目の前にそびえ立つのは木の葉病院。多くの患者が早朝からいる待合室を抜けて、端っこに設置された心療内科のドアを開ける。
「先生、おはようございます!」
看護師が皆、笑顔で挨拶してくれる。
「おはよう。今日も忙しくなるよ!」
私は心療内科医だ。
戦争でトラウマを持ったものや家族をなくしたもの、その人たちのケアをするために必要とされた職。
時が経っても忘れられないのは私だけじゃない。
今も多くの患者さんが訪れる。もちろん、戦争関連のこと以外で悩みを抱えている患者さんも増えている。
――世界は沢山の忍が生き方を変えていく時代に入った。
――……‥‥
(ナルト、ちょっといいか)
(ん? どうしたシカマル。そんな険しい顔して)
(今アカデミーから報告があがったんだが、今年の入学人数が昨年の半数だそうだ)
(は? 何で……今まではそんなに一気に減ってなかっただろ)
(それはまだ分からねぇ。調査を開始させた)
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掲載期間:2016/10/7~2016/12/6