2016.4.4~2018.3.1

『雨はまだ降り続ける』



梅雨――。

曇天か雨天か、そのような毎日だったが嫌いではなかった。

一人、廃れた小屋で雨宿り。外の水たまりが波紋を広げていく様子を眺めながら思い出す。


「この季節は昔を思い出すわ。毎日危険の中を生きていたあの頃を……」


かつて、共に同じ組織にいた女性の言葉だった。彼女は雨隠れの里で天使様と呼ばれていた。
雨がずっと降る雨隠れの里でその時も生活をしていたのに、なぜ梅雨一つで昔を思い出すのか分からなかった。

聞いてみたこともあったけど、よく分からないことを言っていたので忘れた。

――でも今となってはそんなことはどうでもいい。

彼女ももうこの世にはいない。


「……またか」


外に忍の気配。
私は見つからないように隠れた。

別に彼らは私を探しているわけではない。しかし、見つかったらやっかいかもしれない。

忍世界は今や平和。少し前に忍連合軍と暁の戦、第四次忍界大戦があったばかり。
暁はメンバーがどんどん減り、目的を達成するための準備段階がほぼ完了した時には、私一人抜けても放っておかれた。
しかし、それでもその前まで所属していた私の顔は忍里中に広まっている。

元暁である以上、今はまだ隠れてやり過ごすのが得策だろう。別に忍里と対立したいわけでもないけど、一応ビンゴブックに載っているんでね。


「……行ったか」


外がまた雨音だけに包まれる。
いつまで一人で身を隠しながら生きていくのか、皆目見当もつかない。

体操座りをし、冷え切った足の指先を手で温めた。
私の人生はしばらくこの梅雨空のように先が見えない日々が続くだろう。






――……‥‥

(でもいつか梅雨が明ける時が来る)
(それまでの辛抱よ……)



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掲載期間:2016/6/5~2016/8/8
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