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2013.1.2~2014.4.4

『巻き込まれた女』




「目が覚めたか」

体中が痛い。暗い空間で、どこか分からない。


「何か喋ってみろ」


顎を掴まれ、漸く声の主を“男”と認識した。痣になっているのか、怪我をしているのか顎を掴まれただけで頬が痛い。


「……ここは?」

「ふん、目が覚めたのならいい。今から質問をするから答えろ」


手を離され、声の主である男が離れる気配がした。部屋中を歩き回る様子はあるが、見えないためどんな男かは不明だ。

やっと自分の身に起こっていることを理解した。突然、後頭部に感じた痛みの後の記憶がない。私はこの男か、関係者に気絶させられ今から拷問か尋問かされるのだろう。

手首は縛られているし、私が何をしたというのだろうか?


「暁……知っているな?」

「暁? 誰それ」

「とぼけるな! お前が五日前、暁の連中と一緒にいるのを見たんだ!」


五日前?
記憶を巡らし――


「あ」


と、気付いた。


「もしかして、あの変な黒い生地に雲の模様が入った服を着ていた人のこと?」

「そうだ、それだ!」


その言葉を聞いて私は笑ってしまった。何が可笑しい、と口にする男に私は言ってやった。


「あんなのが知り合いだと思ってるわけ!? あんな変人、知り合いでもなんでもない!」




――五日前


「なぁ、一晩泊めてくれよ」


そう口走ったのは、知らない男だった。


「は?」

「頼む! 宿がねェんだ!」

「いやいや、貴方誰よ?」


いかにも知り合いです、というような態度で話しかけてくる男。私は当然泊めるのを拒んだ。


「オレは――まァ、良いじゃねェか! とにかく泊めてくれよ!!」


近付いてくる男に私は思わず平手打ちをした。


「イテッ、何すんだっ」

「近づかないでよ、変態! 変人! 水影様に告げ口するわよ!」

「ハァ!? ここは忍里じゃねェだろ!」

「ここは、水の国なんですー! 当たり前でしょー。もう近づかないでよ!」


そう言って、私は持っていた袋に手を突っ込み小さい粒を一掴みすると男に投げつけた。


「イテッ! 何すんだ! これ、豆!?」

「こないでよ! 鬼! 悪魔! 変態!」

「イテテテテテテ! 何だよ、クソ女! もう頼まねーよ!!」


そう叫んで去って行った男が来ていた服が今、同じ部屋にいる男の言っている特徴だった。


「……というわけで、私は何も知らない。解放して」

「……」

「ちょっと、聞いてる?」

「そうはいかない」


え、と周りを窺った時だった。誰かがいる気配が全くなくなったのだ。相手は忍か。
気配を消したらしい。

しかし――


「うっ」


次に聞こえたのは、男のうめき声。
私は自分の両手首を労わりながら言い放った。


「私を人里離れた地に住む女だと侮った貴方が悪いのよ」


私の目が暗闇で、金色に光っているだろう。男の体温が徐々に下がっていくのがはっきりと見えた。


「貴、様は……」

「水影様に信頼を得てあの場所に住んでいるんだからね」


放っておいても死ぬだろう男に背を向け、私は立ち去った。

私の眼は、いかなる場所でも人を体温で感知出来る特殊なもの。今となっては私しかこの力を使える人はいないから、一族を増やすまで死ぬわけにはいかないのだ。




――……‥‥

(はぁ……はぁ……この力使うと疲れるの、どうにかならないのかな)
(あ! テメェはいつかのクソ女!)
(?! あんた、この前の変態! っ)
(オイ、大丈夫か? 死にそうじゃねェか! オレが家まで運んでやるよ)
(何で、そんなに優しいの……?)



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掲載期間:2014/2/2~2014/4/4
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