2013.1.2~2014.4.4
『言葉の力』
「怪談大会しよう」
「はぁ? 何言ってんだこんな真冬に、うん」
「怪談好きに季節はない!」
リーダーの命で、今回はツーマンセルではない。デイダラとサソリと飛段と私でフォーマンセル任務。任務内容は、雪山にあるとされる村の壊滅。この村は不思議な力があり(正確には周辺の山)、村人は皆その力に助けられ生活しているのだとか。
その任務を終えたところで、“村だった”場所で休憩中に私は話を持ちかけた。
この極寒の地に来て怪談話はないだろ、とデイダラは文句を口にしたが私はしたい。
「最早、飛段の存在が怪談だろ」
「そうだよな! 流石はサソリの旦那。ということで怪談はなしだ!」
「そんなの理由になんない! それともデイダラとサソリは恐いの?」
私の挑発的な一言は、二人を動かすのに十分だった。
――昔、まだ五大国が出来る前。
ある山奥に一人の女がいた。女は身重だったが、姑から執拗な嫌がらせを受けていた。掃除に洗濯、料理……全てその女がやっていたが、男共が出稼ぎに行っていることを良いことに姑がそれを全て自分の手柄にしていた。
舅も夫も姑の話を信じ、女に「身重だから大目に見るけども、年老いた母に家事をやらせるなんて」と口癖のように呟く。
そのうち、女は気を病んでしまい子を流してしまう。
舅も姑も夫も、女を「出来そこない」「ちゃんんとしないから罰が当たった」と攻めた。
女はそのことで恨みつらみを抱きながら、自分で命を断った。
しかし、女はただでは死なない。女は隠していたが忍だったのである。流れた子供の亡骸にチャクラを与え続けたのだ。
そして、チャクラが尽きかけたところで自分の喉元を切り裂き、血を亡骸の上にかけた。
その瞬間、女の技が完成したのである。
女を死に至らしめた家族の許へ夜な夜な子供の泣き声が響いた。最初は、赤子の声だったがそれは次第に成長をしているようだったという。
そして、最初の泣き声がしてから100日目。
子供の泣き声がいつものように聞こえる。家族は恐がり、寝たふりを続けたがその日はいつもと違った。
泣き声が止んだのだ。
どうしたのか、と家族が顔を見合わせた瞬間
「……やっと戻ってこれた」
と女の声が、それぞれの耳元で聞こえた。
翌日、村の者が家族を尋ねると三人が恐怖に襲われたような顔で血まみれになって死んでいた。
――私が話し終わると、デイダラは青ざめた顔をしていた。
「怖かった?」
と、からかってみれば「そんなわけないだろ! そんなわけない、うん」と繰り返した。
怖がっているデイダラをよそに、サソリが一言。
「くだらねぇ」
と悪態をついた。
「くだらないって何よ」
「くだらねぇもんはくだらねぇ。第一、何でその家族の体験したこと詳しいんだよ。死んじまったんなら、女の声が聞こえたとか、誰も知るわけねぇだろ」
それもあってか、デイダラがそうだよなと元気になった。
すると、今まで儀式で黙っていた飛段が口を開いた。
「なぁ、すっげー言いにくいんだけどよ……」
「飛段、終わったの?」
「あぁ。……んで、儀式してる最中にガキの声が聞こえた気がするんだけど、気のせいだよなァ?」
その言葉に、私も恐らくデイダラも背筋が凍った。
「え、き、気のせいだよ」
「そうだぜ。怖いこと言うんじゃねぇよ、うん」
「だよなァ! いや、オレも話聞いてたからそんな気がしただけかもな!」
安心したように笑う飛段にホッと息を吐く。
その時であった。私の背後から、ガサッという音がしたのだ。
「ひゃあああ!」
思わず前に飛んだ。振り返るが、誰もいない。そこには壊れた家だけ。
「いいいいいい今の聞こえた!?」
「ききき気のせいだろ、うん!」
「気のせいかァ? オレも聞こえたぜェ」
飛段の言葉に震え上がるが、サソリが
「雪が崩れただけだろ」
と冷静に言い放った。そうだよね、と無理やり納得させようとしたが、家の陰で何か動いたような気がした。
「やややややっぱり何かいるううう!」
「おおお落ち着け! 見間違いだ! うん!」
「てめぇら二人落ち着け。……ガキだ」
サソリの視線を辿ると、そこには村の生き残りらしき子供がいた。こちらを睨んでいる。
「親を殺されたからな」
「何だ、子どもか。吃驚した。どうする?」
「どうするって、生かしておくわけにはいかないだろ」
「じゃ、オレが儀式してやる。ジャシン教の力で親の許に送ってやる。あぁ、オレって優しくね!?」
「ジャシン教の力だったらジャシン様とやらのとこに行くんじゃないの?」
そう話しているうちに、子供が駆け出した。
「あ、逃げるぞオイ!」
「チッ、生かしとくわけにはいかねぇな」
サソリがすかさず傀儡を使って子供を追う。傀儡はあっという間に子供に追いついた。
そして、子供にクナイを放つ。
しかし――
「!?」
「なっ!」
「オイオイ、どういうことだァ?」
クナイが子供の体を通り抜けたのである。
そして、子供が振り返った。その顔を見た瞬間、まるで金縛りにあったかのように体が動かなくなってしまったのである。
ただ、口だけは動いた。
「ちょっと私、体動かない」
そう告げると、皆も同じような状況だという。
「何かの忍術かァ?」
飛段が口走った時だ。子供の傍にすうっと何かが浮かび上がった。
それは靄のようだったが、やがて女の姿になった。
「ゆゆゆゆ雪女!?」
「そんなわけないでしょ!」
女がゆっくりとこちらに顔を向けた。
「嘘……」
「おおおおおおい、あれってお前がさっき話した女じゃないのか!! うん!」
女の首からはだらだらと血が流れ、白い着物を赤に染め上げていた。女はニタァっと笑い、子供の手を引いてゆっくりと接近してくるではないか。
「ぎゃあああああ!!! こっちくんな!!!!!」
デイダラの悲鳴。私は、体を捩じるもビクともしない。
そうこうしているうちに、女はもう数メートル先。
白目を向き、笑っている表情に戦慄が走った。
私は渾身の力でチャクラを練り上げた。何故そうしたのかは分からない。
チャクラを全身に流し、体を捩じった。
すると、金縛りのようなものは溶けた。
視線を戻すと、そこに女と子供はいなかった。
「ちょ、来るんじゃねェエエエエエ!」
飛段が叫ぶ。見れば、三人ともまだ空を見ている。
その瞬間、私は察した。慌てて飛段に駆け寄り、彼の体に触れチャクラを流し込んだ。
ハッとする飛段。きょろきょろと辺りを見回し、怪訝そうな顔を見せる。
同様に、デイダラとサソリにもチャクラを流した。
「一体、なんだったんだァ?」
「幻術よ」
私が答えると一同、目を見開いた。
「ちょっと待ってくれよ。幻術って、誰かがオイラたちに幻術をかけたってことか?」
「あー、ごめん。多分、私のせい」
そう告げると、説明しろとうるさい。
「さっきの話、正直言うと作り話なんだよね」
「ハァ!?」
「だけど、その作り話に幻術性が出たって言うか……」
私のチャクラはかなりの幻術向き。
だから多分、私の言葉に幻術がかかったんだと思う。
勿論、普段は制御しているがこの村の“不思議な力”とされるものもあってか知らず知らずの内に――。
私の告白に、一同激怒した。
「いや、本当にごめん。でも私自身が幻術にかかる程、不思議な力だからリーダーも危惧したんだよ! だから殲滅命令が……」
「開き直るんじゃねぇよ。てめぇ、傀儡にしてやろうか」
「嫌! ごめん! 本当に傀儡だけはなりたくない!!」
結局その後、許してもらえた私は誓った。今度から怖い話を作るときは作り話だと最初から言っておこうって。
――……‥‥
(ねぇねぇ、怖い話――)
(いや、もういい。お前の話なんて聞きたくない!)
(え、でも作り話なんだけど)
(それでも絶対に聞かないからな! うん!)
□■□■□■□■□■□■
掲載期間:2013/12/7~2014/2/2
「怪談大会しよう」
「はぁ? 何言ってんだこんな真冬に、うん」
「怪談好きに季節はない!」
リーダーの命で、今回はツーマンセルではない。デイダラとサソリと飛段と私でフォーマンセル任務。任務内容は、雪山にあるとされる村の壊滅。この村は不思議な力があり(正確には周辺の山)、村人は皆その力に助けられ生活しているのだとか。
その任務を終えたところで、“村だった”場所で休憩中に私は話を持ちかけた。
この極寒の地に来て怪談話はないだろ、とデイダラは文句を口にしたが私はしたい。
「最早、飛段の存在が怪談だろ」
「そうだよな! 流石はサソリの旦那。ということで怪談はなしだ!」
「そんなの理由になんない! それともデイダラとサソリは恐いの?」
私の挑発的な一言は、二人を動かすのに十分だった。
――昔、まだ五大国が出来る前。
ある山奥に一人の女がいた。女は身重だったが、姑から執拗な嫌がらせを受けていた。掃除に洗濯、料理……全てその女がやっていたが、男共が出稼ぎに行っていることを良いことに姑がそれを全て自分の手柄にしていた。
舅も夫も姑の話を信じ、女に「身重だから大目に見るけども、年老いた母に家事をやらせるなんて」と口癖のように呟く。
そのうち、女は気を病んでしまい子を流してしまう。
舅も姑も夫も、女を「出来そこない」「ちゃんんとしないから罰が当たった」と攻めた。
女はそのことで恨みつらみを抱きながら、自分で命を断った。
しかし、女はただでは死なない。女は隠していたが忍だったのである。流れた子供の亡骸にチャクラを与え続けたのだ。
そして、チャクラが尽きかけたところで自分の喉元を切り裂き、血を亡骸の上にかけた。
その瞬間、女の技が完成したのである。
女を死に至らしめた家族の許へ夜な夜な子供の泣き声が響いた。最初は、赤子の声だったがそれは次第に成長をしているようだったという。
そして、最初の泣き声がしてから100日目。
子供の泣き声がいつものように聞こえる。家族は恐がり、寝たふりを続けたがその日はいつもと違った。
泣き声が止んだのだ。
どうしたのか、と家族が顔を見合わせた瞬間
「……やっと戻ってこれた」
と女の声が、それぞれの耳元で聞こえた。
翌日、村の者が家族を尋ねると三人が恐怖に襲われたような顔で血まみれになって死んでいた。
――私が話し終わると、デイダラは青ざめた顔をしていた。
「怖かった?」
と、からかってみれば「そんなわけないだろ! そんなわけない、うん」と繰り返した。
怖がっているデイダラをよそに、サソリが一言。
「くだらねぇ」
と悪態をついた。
「くだらないって何よ」
「くだらねぇもんはくだらねぇ。第一、何でその家族の体験したこと詳しいんだよ。死んじまったんなら、女の声が聞こえたとか、誰も知るわけねぇだろ」
それもあってか、デイダラがそうだよなと元気になった。
すると、今まで儀式で黙っていた飛段が口を開いた。
「なぁ、すっげー言いにくいんだけどよ……」
「飛段、終わったの?」
「あぁ。……んで、儀式してる最中にガキの声が聞こえた気がするんだけど、気のせいだよなァ?」
その言葉に、私も恐らくデイダラも背筋が凍った。
「え、き、気のせいだよ」
「そうだぜ。怖いこと言うんじゃねぇよ、うん」
「だよなァ! いや、オレも話聞いてたからそんな気がしただけかもな!」
安心したように笑う飛段にホッと息を吐く。
その時であった。私の背後から、ガサッという音がしたのだ。
「ひゃあああ!」
思わず前に飛んだ。振り返るが、誰もいない。そこには壊れた家だけ。
「いいいいいい今の聞こえた!?」
「ききき気のせいだろ、うん!」
「気のせいかァ? オレも聞こえたぜェ」
飛段の言葉に震え上がるが、サソリが
「雪が崩れただけだろ」
と冷静に言い放った。そうだよね、と無理やり納得させようとしたが、家の陰で何か動いたような気がした。
「やややややっぱり何かいるううう!」
「おおお落ち着け! 見間違いだ! うん!」
「てめぇら二人落ち着け。……ガキだ」
サソリの視線を辿ると、そこには村の生き残りらしき子供がいた。こちらを睨んでいる。
「親を殺されたからな」
「何だ、子どもか。吃驚した。どうする?」
「どうするって、生かしておくわけにはいかないだろ」
「じゃ、オレが儀式してやる。ジャシン教の力で親の許に送ってやる。あぁ、オレって優しくね!?」
「ジャシン教の力だったらジャシン様とやらのとこに行くんじゃないの?」
そう話しているうちに、子供が駆け出した。
「あ、逃げるぞオイ!」
「チッ、生かしとくわけにはいかねぇな」
サソリがすかさず傀儡を使って子供を追う。傀儡はあっという間に子供に追いついた。
そして、子供にクナイを放つ。
しかし――
「!?」
「なっ!」
「オイオイ、どういうことだァ?」
クナイが子供の体を通り抜けたのである。
そして、子供が振り返った。その顔を見た瞬間、まるで金縛りにあったかのように体が動かなくなってしまったのである。
ただ、口だけは動いた。
「ちょっと私、体動かない」
そう告げると、皆も同じような状況だという。
「何かの忍術かァ?」
飛段が口走った時だ。子供の傍にすうっと何かが浮かび上がった。
それは靄のようだったが、やがて女の姿になった。
「ゆゆゆゆ雪女!?」
「そんなわけないでしょ!」
女がゆっくりとこちらに顔を向けた。
「嘘……」
「おおおおおおい、あれってお前がさっき話した女じゃないのか!! うん!」
女の首からはだらだらと血が流れ、白い着物を赤に染め上げていた。女はニタァっと笑い、子供の手を引いてゆっくりと接近してくるではないか。
「ぎゃあああああ!!! こっちくんな!!!!!」
デイダラの悲鳴。私は、体を捩じるもビクともしない。
そうこうしているうちに、女はもう数メートル先。
白目を向き、笑っている表情に戦慄が走った。
私は渾身の力でチャクラを練り上げた。何故そうしたのかは分からない。
チャクラを全身に流し、体を捩じった。
すると、金縛りのようなものは溶けた。
視線を戻すと、そこに女と子供はいなかった。
「ちょ、来るんじゃねェエエエエエ!」
飛段が叫ぶ。見れば、三人ともまだ空を見ている。
その瞬間、私は察した。慌てて飛段に駆け寄り、彼の体に触れチャクラを流し込んだ。
ハッとする飛段。きょろきょろと辺りを見回し、怪訝そうな顔を見せる。
同様に、デイダラとサソリにもチャクラを流した。
「一体、なんだったんだァ?」
「幻術よ」
私が答えると一同、目を見開いた。
「ちょっと待ってくれよ。幻術って、誰かがオイラたちに幻術をかけたってことか?」
「あー、ごめん。多分、私のせい」
そう告げると、説明しろとうるさい。
「さっきの話、正直言うと作り話なんだよね」
「ハァ!?」
「だけど、その作り話に幻術性が出たって言うか……」
私のチャクラはかなりの幻術向き。
だから多分、私の言葉に幻術がかかったんだと思う。
勿論、普段は制御しているがこの村の“不思議な力”とされるものもあってか知らず知らずの内に――。
私の告白に、一同激怒した。
「いや、本当にごめん。でも私自身が幻術にかかる程、不思議な力だからリーダーも危惧したんだよ! だから殲滅命令が……」
「開き直るんじゃねぇよ。てめぇ、傀儡にしてやろうか」
「嫌! ごめん! 本当に傀儡だけはなりたくない!!」
結局その後、許してもらえた私は誓った。今度から怖い話を作るときは作り話だと最初から言っておこうって。
――……‥‥
(ねぇねぇ、怖い話――)
(いや、もういい。お前の話なんて聞きたくない!)
(え、でも作り話なんだけど)
(それでも絶対に聞かないからな! うん!)
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掲載期間:2013/12/7~2014/2/2