2013.1.2~2014.4.4

『元廃墟のアジトで起きたこと』




もう一年も前の話だ。
当時、飛段はデイダラと一緒になって人を怖がらせるのが好きだった。
まぁ、飛段の場合は一人でも人を怖がらせるけども。

その日は、雨が降っていた。
任務も休みで久々にアジトに行くと、同じく休みだった飛段と角都がいた。
昼寝をするから、と二人に言って私は部屋に引き下がる。簡易ベットで仮眠をとった。

その部屋は石の壁と床で、窓もない。でも、暑くもなく寒くもなく、快適な温度ではあった。
アジト自体はリーダーが見つけた場所なのだけど、それまでは廃墟だったらしい。人も近寄らず、草も生えまくってるし暁のアジトとしては良かった。(念のため、結界は張ったけど)

――私が、寝てどれくらいだったか。
ふと、足首を誰かに掴まれている感覚がした。目を開けてみると、確かに誰かいる。が、眠すぎて良く見えない。
私は横向きで、丸まって寝ていたから自分の足首が見えるのだが、手らしきものがあることは確認できた。

今、アジトにいるのは私以外に飛段と角都のみ。角都はそんなことしないし、当時悪戯大好きだった飛段だと思った。


「飛段、やめてよー」


とにかく眠かった私はそう言って、寝ようとした。しかし、足首は依然として掴まれたまま。
しかもだんだん力が強くなっている。
ちょっと痛くなってきたかなと感じたので、私は「止めて!」と強く言った。

一瞬にして、力が緩められたが今度は私の足裏を指でなぞる感触。
もはや気持ち悪いとさえ感じていた私は、足の裏に溜めたチャクラを一気に放った。

チャクラの衝撃波に驚いたのか、私の足から手は遠のいた。


「もう、次に寝ているときにやったら切り刻まれると思いな」


そう告げて、私は今度こそ二度寝した。




――結局、陽が落ち始めて起きた私は二人と合流する。どこかへ出かける様子だったので聞くと、飛段がお腹が空いたとうるさいので近くの小さな町に行くと言うのだ。
なので、一緒に行くことにした。

ついたのは、こじんまりとした居酒屋。
適当に頼んで、雑談をする。といっても、角都は無口なので時折、私と飛段の会話に口を挟む程度だ。

お酒も丁度いい具合に入ってきたとき、私はあの話をした。


「そういえば、飛段。悪戯するのは良いけど、人の睡眠妨害は本当に止めてよね!」

「は? 何のことだよ」

「飛段、お前……」

「いやいやいや、角都もそんな目すんなよ! オレは知らねェよ?」


しらばっくれる飛段に私は「ばれてるんだからね」と言い放った。


「ハァ!? ふざけんなよ! オレは知らねェし!」

「うわ、しらばっくれるんだー? 聞いてよ、角都ー。飛段ね、今日私の寝ている間に足に悪戯したんだよ!」


角都が眉間に皺を寄せた。飛段はなおも声を挙げて否定する。
私は最初、飛段がしらばっくれるのを押し通そうとしていると思っていた。しかし、飛段の真剣な表情と否定を見ると少々不安になってくる。


「……だって、飛段しかいないし? まさか角都が悪戯なんて」

「くだらん」

「……だよね。ってなると、飛段しかいないんだけど?」


そう指摘すれば、飛段は


「そんなことしねェって! 第一、そんなつまんねェ方法で悪戯するわけねェだろ! やるならもっと……そうだなァ、おっぱい揉むとか!」

「きゃー! 最低! 不潔! 飛段の変態!!」

「んな棒読みで叫ぶんじゃねェよ……。とにかく、オレなわけねェ! 夢なんじゃね?」


夢のはずがない。というのも、私は今話していて見つけたのだ。
ここは、掘り炬燵になっているので足が見えるのだけど私の足首にはっきりと痣が出来ているのだ。

飛段と角都は向かい側に座っているので見えない。


「じゃあ、ちょっと私の足首見てよ」


わざわざ覗いて見るように催促した。
飛段が身を横に倒して、下を覗く。


「ほら、ここ」

「ン?……マジかよ……。ちょ、角都も見てみろって!!」


そう言われ、角都は嫌そうな顔をしたが見てくれた。
そして、三人とも顔をあげて互いを見る。


「ね、今さっき気付いたんだけどこれって指の跡だよね?」

「ホント、指の跡だぜェ……怖ェな」

「え、本当に飛段じゃないの?」


そう問えば、はっきりと「違ェって言ってんだろ」と口にした。
すると角都が


「お前の足の指の跡。飛段の手の大きさと比べれば良い」


と提案した。


「おぉ、それ良いな。んじゃ、足をオレの方に出せよ」

「は!? 何か恥ずかしいじゃん!」

「ンなこと言われても、オレだって疑い晴らしてェし!」


私は仕方なく、片足を(痣があるのは両足だけど)飛段の方に突き出した。
私からは見えないが、角都も見ている。


「角都ゥ……どうだァ?」


飛段の手の指が、私の足首の痣と重なるように置かれているらしい。


「これ、明らか違ェよな?」

「……飛段の指の方が細い。大きさも、飛段の方が小さい」

「何だか、貶されてるような気ィすんだけど」


そこで、私はガクブル。だったら、あれは誰だったのか。
アジトに侵入しようもんなら二人が気づかないはずはない。


「なァ、お前はそいつの顔見たのかァ?」

「え?」

「だから、この痣をつけたやつの顔」


そういえば、見ていない――。気配と、手らしきもの。それだけだ。


「うわ、それでオレを疑ったのかよ!?」

「ごめん。でも、飛段しかいないと思って……」


足首を今度は自分の方へ寄せてみる。掘り炬燵から足を出して見ると、これでもかっというくらいに強く絞めなければつかない程の、内出血。


「結局、その変な野郎? は、どうしたんだ?」

「あ、うん。結局、足の裏を指で触ってきたから足の裏からチャクラを一気に放って撃退した。……ねぇ、それよりアジトに帰りたくないんだけど」

「……」

「……」


飛段も角都も無言だった。
やがて、飛段が


「ま、大丈夫だろ! もう来ねェだろうしな!」


と笑った。


「何で?」

「いや、何でもだよ! そんな気ィすんだよ! 気にするな! なー、角都」

「……あぁ」


ちょっと腑に落ちなかった、一年前の出来事――。




――……‥‥

(ねぇ、リーダーあの元廃墟のアジトなんだけど)
(何だ)
(聞いてくれ、クソリーダー!こいつにこの前疑われたんだぜェ! 斯く斯く云々)
(ちょ、飛段っ)
(あぁ……あそこは元は死体換金所だ)
((え))



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掲載期間:2013/8/1~2013/10/2
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