2012.1.1~2013.1.1

『16年目の仇討ち~面影~』




暁を辞めたのは、自分の意思でもありリーダーや小南さんの配慮でもある。
人里離れた森の中にある、小屋が私たち親子の家だ。

小屋と言っても、しっかりとしていて雨風を凌げるのだ。台所もあり、何年も住むのは平気だ。


「にんじゃに、なうー」


まだ「る」が上手く言えない娘。3歳になったばかりだ。見比べる子もいないので、この子の成長が遅れているのか早いのか、それは分からない。
けど、特に体は問題もなく、すくすくと育っているので良しとする。

この子は、やはりと言うべきか。忍者になりたがっている。
本当は、そんな危ない目に合わせたくない。しかし、もしも敵に襲われた時に何も出来なかったら――?

最初は、私が守るから良い。だけど、いつか私は死ぬしこの子が大きくなったら、いずれ一人で生きていかなければならないだろう。そうすれば、やはり術は教えておきたいものだ。


「今日は、チャクラの練り方の続きね」

「うん!」


外の陽気な陽射しが、私らを包む。


「あんまり走ると、こけるよー」

「らいじょうぶ!……うわっ!」

「!」


慌てて駆け寄ると、その小さな膝から血が流れていた。

しかし、娘は泣かない。


「痛い?」

「っ、へいきだよっ」


痛みを我慢しているが、うっすらと桃色の瞳に涙が浮かぶ。


「おかーさん、しゅぎょーやう」

「……そうだね」


この子は、私に中身が似た。
私と同じ、栗色の髪をを撫でれば、愛する人に似た笑顔が咲く。


「おかーさん?……ないてうの? いたいの?」

「んー、痛くないよ。さ、頑張ろうか」

「うん! ちゃくら、ねう!」


最近思うのだ、飛段のあの能力は遺伝するんじゃないかって。


「がんばりゅぞ!」


膝の傷が、まるで飾り物かのように娘ははしゃいだ。




――……‥‥

(おかーさん)
(どこ行ってたの! ちょっ、何で血だらけなのっ!?)
(いたい……たかい木からおちちゃった)
(え? 嘘だよね?)
(ホントー。でも、へいきー!)



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掲載期間:2012/5/1~2012/6/1
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