2012.1.1~2013.1.1

『16年目の仇討ち~新たな命~』




「てめーには必ずジャシン様のバチが当たる!! ジャシン教により大いなる裁きがお前にィィ――」

「そんなもん怖かねーんだよ」


一人の不死身男が、バラバラになった。大穴に、石と共に埋もれている。
その男は、自分をこんな目に合わせた敵を見上げて叫んだ。しかし、敵の男は表情一つ変えず言い放った。


「オレとお前じゃ、信じてるモンが違う」


そして、穴の入口から遥か下の不死身男に強く示した。


「オレが信じてんのは“火の意志”だ」


と。


「……だが、てめーの神はそのくだらねぇジャシン様でもなんでもねぇ。今はこのオレだ。オレが裁きを下す!」


起爆札付きのクナイを投げた瞬間、不死身男の上に大量の岩の雨が降って来たのだった。




――……‥‥

ふと、嫌な予感がした。

一緒に居た、鬼鮫とイタチが「どうした」と問い掛けて来る。
その時、私の腕に付いたブレスレットが音を立てて、契れた。


「っ……」


バラバラになり、地に落ちるそれは以前、飛段がたまたま手に入れたからと言ってくれたもの。
灰色と透明の玉が散らばっている様子に、嫌な予感は一層、高まる。


「不吉ですねぇ……」


鬼鮫が、そう呟くと丁寧に拾ってくれる。イタチは何を考えているか、分からないがその赤い瞳でブレスレットを見つめる。


「これで全部ですか」

「……鬼鮫、ありがとう」

「行くぞ」


私は後で直そうと、ポーチにブレスレットの玉を入れた。

――それから、1時間程歩いた時だった。背後でメキメキと音がしたのだ。
私たちが、同時に振り返ればそこにはゼツがいた。


「何か……?」


鬼鮫が口を開けば、黒い方のゼツが淡々と告げた。


「飛段ト角都ガ、木ノ葉ニヤラレタ」

「……え」


何を言っているのか、理解出来なかった。
飛段は不死身で、角都は心臓沢山あるのに死ぬわけない。角都はともかく、飛段は何しても死なないはず――。様々な、考えと思いがグルグルと頭を巡る。


「リーダーが、これから話し合いをするって。だから、準備してね」


白いゼツが、そう指示すると消えていった。
イタチも鬼鮫も、理解したらしく近場の岩に腰掛ける。

私は、動けないでいた。が、二人に名前を呼ばれ、まだ気持ちの整理がつかないままとりあえず座り、印を結んだ。




――……‥‥

二、三ヶ月経った。私は、あの報告を聞いてから、体調を崩してしまった。忍として失格なのは分かっているが、それどころではない。
あまりに酷いため、現在は小南さんの所で療養中だ。


「一向に体調が良くならないから、医者に行こう」


そして、小南さんの計らいにより、私は医者にかかることになった。


「大丈夫か?」

「うん、平気……」

「無理はするな」


雨が止まないこの里だが、傘をこうして差し歩くのも悪くない。

漸く医者にたどり着いた。病院に入って見ると、何故か子どもや妊婦さんが多い。中には、骨折している人もいたが少数派だ。
あまりの多さにぶつかって、怪我でもさせたら大変なので慎重に歩き受付を済まそうとする。しかし、小南さんが


「貴女は座っていて。私が受付を済ませてくる」


と、勝手に行ってしまった。
仕方なく待っていると、小南さんは帰ってきて、外で待っていると言って出ていってしまった。

何なんだ本当に、とため息をついて周りを見渡せば本当に人が多い。この分じゃ、まだまだなのに何で出て行ったのだろう、と考える。

しかし、すぐに看護師らしき人が来てこっそり「こちらです」と案内された。
何で、先に来た人達は、と疑問に思ったが医者に通され理由を聞かされれば、小南さんの凄さが改めて感じ取られたのだった。


「診察結果ですけども」


診察が終わった。医者は、にっこり笑って私に告げた。
それを聞いた瞬間、看護師にティッシュを持って来てもらうほどに泣いてしまった。

それから、お金を払おうとすれば小南さんが先に払っていたらしくいらないと言われた。
外に出て、小南さんが迎えてくれたのに感極まった私は抱き着いてしまった。


「小南さん……ありがとう」

「それを言うなら、私にではない」


優しく頭を撫でてくれる彼女は、天使に見えた。




――……‥‥

(ブレスレット、直そう)
(ありがとう、飛段――)



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掲載期間:2012/4/1~2012/5/1
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