2012.1.1~2013.1.1

『記憶にも遺らない、小さな芸術』




――愛してる。ずっと好き。だから、一緒にいようね。

なんて、約束したのは夢だったのか。目をそらしたくなるような現実が、私に突き付けられた。


「なん、で……?」

「……ごめん、けど」


私が精一杯、愛した男は何だったのか。
裏切り――いや、違う。騙された。そういうことだ。


「私はっ、私のお腹にはっ……」

「……」

「全部、嘘だった。そういうことなの……?」


問い詰めるように下から睨みあげれば、彼から冷たい視線が下る。そう。忍の目だ。


「……答えてよ!」


叫んだ拍子に、溜まった涙が頬を伝う。それでも、顔色一つ変えないこの男は、鬼畜か。


「オイラは、好きだったぜ。うん」


じゃあ何で、と見上げれば彼は言った。


「任務だから」

「っ」

「どうしようもないんだ」


相変わらず、表情一つ変えない様子に私は願う。


「一緒に……逃げよ?」

「……」

「逃げて、逃げて、どこかで一緒に……」


切なる想いが、湧き出る水の如く。溢れ出した分は、涙となって落ちる。


「オイラは、好きだったけど……愛まではいかないな。うん」


それを聞いた瞬間、私は息が詰まる。

じゃあな、と振り向きもしないで去る後ろ姿が恨めしい。憎くて、悲しくて、それでも愛しくて――。

無気力となった私は、お腹に芽吹く命と共に散る。




――……‥‥

(ちっぽけな爆発だ)
(まぁ、盛大にする必要もねぇな)
(そう割り切ったのに、なんで)
(オイラの胸に、濁った塊が巣くうのか――)



□■□■□■□■□■□■

掲載期間:2012/3/2~2012/4/1
4/11ページ