2011.3.1~2011.12.31

『今、何とおっしゃいました?』




「サソリ。何か欲しいものある?」

「テメェに買ってもらうほど金欠じゃねぇよ」

「いや、まだ買うなんて言ってないからね。私」


サソリの部屋に突撃という名の訪問をし、質問を投げる。普通なら、いきなり何だと言うところだ。しかし、流石サソリというべきか。
前置きもなしに、ぶっつけた質問に先読みして答えたのだ。


「聞くってことは、何かくれるんだろ?」


ヒルコの姿だと、表情が分からないから、何を思っているのか不明だ。


「でも、高いのはダメだよ」


そう告げると、サソリは品物を挙げていく。


「……傀儡用油(350両)」

「高い」

「仕込みクナイ×1000(1000両)」

「もっと高い」

「チッ」

「舌打ちすんな。私の財布がなく」

「毒草抽出エキス×3本(500両」)

「……栗ご飯で良いね。OK」

「オイ。人に聞いといて、それはねぇだろうが」

「え、人? サソリは人形の間違い……イタイ。イタイデスヨ、サソリサン」


人の足を尾で押さえ付けるのは、止めてほしい。もちろん、鋭く尖った先ではないだけマシなのだが――。


「私の財布が泣くの。私この先、一生貧乏生活になってしまうのヨ」

「……知ったこっちゃねぇな。こっちは誕生日なんだ。欲しいもん貰えるってのが普通だろ?」


多分、本体はニヤリと笑っていることだろう。


「わぉ。覚えてたんだ。サプライズが出来ないじゃないか」


まぁ、栗ご飯の時点でサプライズもクソもないけど。

いつまで経っても離してくれないサソリに私は、控え目に声を発す。


「あのー……離して?」

「断る」


何で、と半泣きで声を上げればサソリは、調子にのったよう。更に、尾を足の上で押さえ付けてきた。


「痛い! 痛いって!」


金属製のヒルコの尾。それに加え、押さえ付ける力。痛い以外に、感想はない。


「とりあえず、そうだな。油を買ってもらおうか」

「痛い! だから、お財布が……っ!!」


動かそうとしても動かない足。耐えるしかなく、苦痛に顔を歪めていると


「もし、生活が出来ねぇ状態になったら、俺が養ってやるよ」

「え……?」

「さっさと行け」


まるで、何もなかったかのようにサソリは尾を離し、私の背を押した。
早々に部屋を追い出され、私の頭は放心状態。

赤くなった足の甲が、さっきの事実を物語る――。




――……‥‥

(で、デイダラッ)
(おぉ、旦那のプレゼント聞いてきたか? うん)
(プ、プロポーズされたっ……!)
(はぁ!?)



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掲載期間:2011/11/1~2011/12/1
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