2011.3.1~2011.12.31

『捕われた、私』




目の前には、痛々しいほど顔に物を突き刺した男がいる。
彼は、目が特殊で普通の人ではないということが直ぐにうかがえる。


「あんた、誰?」


そもそも、私が何でこんなところにいるのか分からなかった。
まぁ、俗に言う“誘拐”だ。


「俺の名はペイン」


見た目通りの名前だった。


「ペイン……何で私はここにいる?」

「お前を連れて来たからだ」

「うん、それは分かってる。だから、何で連れて来た?」

「お前には、我が組織に協力してもらう」

「協力? 組織?」


すると、ペインの後ろから、二人の男が現れた。


「20分程遅いぞ。飛段、角都」

「しゃーねーだろーが。角都の、下らねぇバイトのせいで……」

「違うな。俺のせいではない。飛段の儀式が長すぎるんだ」

「ハァ!?」

「二人とも、黙れ」

「……」

「……」


これから起ころうとしているのは、どういうことなのか。
想像すら出来なかった。


「飛段、角都。これから、この女をお前たちと同行させる」

「は!?」

「……」


声をあげる、オールバックの男とは違い、いかにも恐そうな男は黙って眉間にシワを寄せた。


「この女は、我々の目的に欠かせない」

「忍かァ?」

「違う」

「忍でなければ、俺達の足手まといだ」

「そう言うな、角都。この女は、人柱力の居場所を察知できる能力を持っている」


そこで初めて、やつらが私をどう利用するか分かったのだ。


「わ、私は! 協力なんかしませんっ!!」

「してもらわねば困る」

「そんなっ、人柱力がいる場所は確かに察知出来ます。けど、私はそれだけで、忍でもないし……」

「それで良いのだ。お前はその能力を発揮さえすれば良い」

「協力なんか……っ!?」


その時、あのいかにも恐そうな男が私の前にやって来て言った。

それは、とても逆らえるような声質ではなかった。
恐怖を覚えた私は、ただ頷くしか術がない――。


「手間をとらせるな。殺すぞ……」

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掲載期間:2011/5/1~2011/6/2
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