2010.1.1~2010.8.26

『気持ちは変わる』




「あー……暑い」


七月上旬ともなれば、毎日が暑い。
特に、今年は雨がまだ降る時期で蒸し暑いのである。


「そんなこと言うな。こっちまで暑くなるだろーがよ」

「だって暑いもんは暑い。……ねぇキバ、クーラーつけて」


そう言うのも私は今、犬塚キバの家に遊びに来ているからだ。


「却下だ」


しかし、キバはクーラーをつけることを却下する。
これはここ最近、毎日だ。
――“毎日”というのも、六月中旬から毎日遊びに来てるから分かる。


「何で?」


毎日、遊びに来ている理由は簡単。
六月中旬、私はめでたくキバと付き合い始めたからである。
告白は、キバから。

だけど、それまで友達以上恋人未満な関係で過ごしてきた私たちにとって付き合う前と後、どちらも変わらない気がする。

つまり、付き合ってなかった頃と今では大して変わりがないということだ。
変わりがあったといえば、遠慮なくキバと毎日遊べるということくらいだ。


「赤丸が風邪ひいて、まだ病み上がりだからよ」

「そっか、なら赤丸のために我慢するー」

「わりぃな」


このやりとりを毎日続けている私たちは相当、暇人だ。

ふと、カレンダーに目をやる。――というより、視界に入っただけなのだが。


「あ、キバの誕生日が来るね」

「ん? あぁ、そうだな」


暑さのため、棒読みな私たち。


「七夕と一緒だね」

「おー……赤丸も七夕なんだぜ?」

「え!? 赤丸も一緒の誕生日!?」

「おぅ」


初めて聞く事実に私は、驚いた。
キバと赤丸に何をあげようか、考えていると、今はもう里にいない男の顔が浮かんだ。


「サスケ……」

「……は?」


サスケの名を口にした時、明らかにキバの声色が変わった。


「……サスケも七月だ、って思い出しただけだよ」


その瞬間、キバが私を抱きしめてきた。


「キバ!?」


親友だった頃は、抱きしめられることなんてなかった。
だから、キバが違う人に見えてしまう。


「もう、忘れろよアイツのことはよ……今は、俺がいるだろ?……俺の前で、昔好きだった男の話すんな」


キバが嫉妬してると分かった時、同時にキバの彼女なんだと改めて実感させられた。

付き合う前は絶対に、なかったキバの態度と言葉にドキドキしながらも、私は冷静に口を開いた。


「……うん、そうだね。今は、キバが大好きだよ」


――そして、これからも。

静かに、影が重なった。

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掲載期間:2010/7/5~2010/8/3
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