2010.1.1~2010.8.26

『恋してるから臆病でも頑張れる』




「先生!」


そう元気よく言ってみると、先生は振り返った。
そして、いつもと変わらない感じで、私に接してきてくれる。


「どうした?」


きっと先生は、私が授業内容で困ってるから話しかけたと思っているだろう。
だが、それは違う。


「先生、今日誕生日でしょ?」


さっきも頑張って先生を呼び止めた私も、普段は臆病。
いきなりプレゼントを渡すことが出来ないから、先に今日が誕生日であるか知ってるのに、聞いてしまう。


「どうして知ってるんだ?」

「聞いた」

「聞いた?」

「うん」


そう言えば“誰に”と聞かれる。“秘密”と答えた。
勿体ぶらずに教えてくれ、なんて言うものだから、耳打ちして教えてあげた。


「チョウジとナルトに」


そして、先生の反応を見ずに私は急いでプレゼントを渡した。


「これは……」

「あ!! 間違えた、こっちじゃなくてこっち」


急いでいたから私は間違えて、お菓子の袋を渡してしまったらしい。これは、今月一日のチョウジの誕生日を忘れていて、昨日思い出して買った物だった。

焼き肉味のポテトチップス二袋を見て、先生は何を思っただろうか。


「ち、違うんです!! 私が食べるんじゃありませんよ!」


恥ずかしくなって、私は先生に本来のプレゼントを押しつけ、ポテチの袋を奪い、もうダッシュで逃げた。

律儀な先生は次の日、お礼を言いに来たので、私は申し訳ないと思いながらも“おめでとうございます”と言った。

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掲載期間:2010/5/1~2010/6/4
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