「そこで、私たちジャシン教信者は、儀式を少し変えた。意味があるのかどうかは、分からない。同時に、不死の研究が始まった」


何人もの信者が実験を受け、失敗し命を落とした。


「未だ、成功は一つもない。成功すれば、不死身を手に入れられる。首を跳ねられようが、心臓を潰されようが、生き続ける。あの技の、本当を出来るやもしれん。研究は完成している。だが、それが適合する人物がいないのだ。もしも、適合する人物がいたのなら、その人物は……」


――ジャシン様に一番近い存在となる。


「……！」


飛段は、一瞬にしてその言葉に落ちた。まるで、恋をしたかのような衝撃。飛段は、次にはもう口にしていたのだ。


「自分も実験を受ける」


と。


「死ぬかもしれないよ？」

「それでも、ジャシン教のためならオレは何だってしてやる」

「……君は、最高の信者だ」


それから飛段は、ジャシン様に魅入られた存在となった。




――……‥‥

洞窟を飛び出した飛段は、ジャシン教を広めると同時に手に入れた新しい身体を楽しんだ。
殺しても殺しても、死なない身体はまさにジャシン様への生贄を捧げるには、最高だった。

痛みを知り、中途半端な儀式をしない、完全な存在。
死という恐怖もないので、どこそこ構わず突っ込み体中刺し傷だらけになった。

そして、生贄と称し殺しまくった飛段は“暁”という組織に誘われたのであった。

今まで心から望んだような任務を与えてくれる暁。暁内以外でのジャシン教布教活動も許してくれるここは、飛段の居場所となったのである。




――……‥‥

「つーわけだ」


飛段の過去と、湯隠れの歴史を聞いた美奈穂は言葉が出なかった。

もう周囲の客は、入れ替わり立ち替わり。美奈穂と飛段だけが、居座っている状態だ。
といっても、美奈穂はまだ食べているが。


「どーしたァ？　暗すぎて言葉も出ねぇか？」

「あ、いや……その」

「何だよ？」

「飛段はさ、その身体になって満足してる？　良かった？」

「んー？　どうだろうなァ？　でも、いろいろと便利だぜェ」

「そっか……」


宗教を捨てた里と、それを信じ続けた飛段。結局、信じ続けた飛段がブラックリストに載るようになってしまった。
美奈穂も、ブラックリストに載る人物だが、何となく飛段が切ない気がした。


「まぁ、死ねねぇってのも辛いもんがあるけどな」

「そうなんだ……」

「つか、お前！　早く食えよ！　チンタラしてんじゃねェ！」

「はぁ！？　さっきと言ってること矛盾してるし！」

「遅すぎるんだよ！　そんなんじゃ、角都とは組めねぇな！」

「別に角都と組まないし！」


美奈穂が、急いで食べると即座に店を出たのだった。