生きた証
名前変換とあらすじ
この章の夢小説設定【概要】
第四次忍界大戦。カ
ブトによって穢土転
生された貴女は、か
つて木の葉でも手練
れの忍びだった。
勝手に動く身体に戸
惑いつつも、貴女は
ある気がかりを抱え
ていた――。
【ページ数】
全8ページ
【備考】
三人称。
捏造設定あり?
恋愛ではありません
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――……‥‥
木の葉隠れに生を受けたサオリは、アカデミー時代から忍の素質が満載であった。
順調に人生を歩んできたサオリが中忍になったとき、二つ年上の男性と出会い恋に落ちた。
しかし、すぐに結婚をすることはなくサオリが二十歳になったら結婚しようと約束をした。
その間に、サオリは上忍へと推薦され沢山のSランク任務をこなした。
が、二十歳になったばかりの頃。サオリは妊娠してしまったのだ。相手はもちろん、結婚を約束した男。結婚は子どもが生まれてからにしようと決め、サオリは産休に入った。
そして、ついに子どもが生まれる日――。事件が起こったのである。
「ちょ、これ何!?」
陣痛が始まってすぐだった。自宅出産を希望していたサオリは、産婆の声で大地が揺れていることに気付いた。
地震――そう感づいた瞬間、揺れは一層増した。
外からは人々の悲鳴が聞こえる。
(何もこんな時にこなくても……)
長く続いた揺れで、家具は倒れ非常に危険な状態。
産婆はサオリに避難を提案した。
「でも、生まれちゃう……!」
「だけどこのままだと危ないわ。病院に行きましょう!」
「でもっ、この地震じゃ怪我人もいて病院はいっぱいだってっ」
「それでも、ちゃんとしたとこに行かないと!」
そういうのも、サオリの家は決して立派とは言えず。耐震性が危ぶまれていたのだ。
「余震が来る前に避難しないと。陣痛が本格的にならないうちに!」
その言葉で、サオリはゆっくりと外に出た。
未だ混乱が残る中、忍が一般人の誘導を行っている。怪我人、怪我していない人等、状況に応じて指示をしていた。
サオリと産婆は、忍に事情を話し病院までの道のりを急いだ。
しかし、二度目の揺れが間もなく来たのだ。最初の地震よりも揺れている気がした。
「痛いっ」
「サオリ!?」
うずくまるサオリに、産婆は目を見開いた。
――破水。
もう一刻の猶予もなかった。
「どこか……」
辺りを見回す産婆の目に入ったのは、木の葉図書館であった。
既に無人であったが、一番近い。
産婆はサオリを支えながら移動した。
そして、図書館の休憩室にあったポッドに気付く。幸い、お湯が入っていた。産婆は少ないが、やるしかないとポッドを持ちサオリのところへ戻った。
その時である。
三度目の揺れが起こった。
そして、建物が軋んだ。
産婆が叫んだ時にはもう、図書館は崩れていた――。
「大丈、夫……?」
「!? サオリは!?」
「私は、大丈夫っ、でもっお腹痛いっ」
崩れる瞬間、サオリが土遁の術で防壁を作ったのだ。
しかし、狭かった。産気づき、練れるチャクラも僅か。崩れから守れた範囲はお産には厳しかった。
それでも
「この子は、絶対守る」
サオリは強く呟いた。
それから、出産がその場で始まった。
図書館は既に避難が終わっていた場所。誰も気づくはずがなかった。
何で、ここを選んでしまったのだろう。産婆は後悔した。
しかしサオリはそんな産婆の心境を察してか、励ました。
出産する側が励ます。そんなことおかしな話で、産婆も気をしっかり持たなくてはと決意した。
そしてサオリの痛みが最高潮に達したとき、もはやサオリは産婆のことは考えられなかった。が、産婆は落ち着いてサオリに声をかけ続けた。
「頭、見えたよ」「もう少し、大丈夫だからね」「赤ちゃんも頑張ってるよ」「何が何でも私が、元気な子を取り上げるからね!」
そして、生まれた――。
「男の子だよ!」
元気よく産声をあげる子に、サオリは安堵の息を吐いた。
「よく頑張ったね。さぁ、顔を見ておやり」
サオリに似た子だった。
漸く生まれてきた。約十か月お腹にいた我が子にやっと会えたのだ。
そして手を伸ばす。柔らかな頬の感触を指先に感じた瞬間――四度目の揺れが襲った。
「!?」
「また!?」
激しく泣き出す赤ん坊。チャクラ不足のサオリが作った防壁にひびが入る。
「崩れる」
「え?」
「危ないっ」
産婆が目を開けたとき、サオリは彼女に覆いかぶさっていた。
「え……?」
「……じょ、ぶ」
「サオリ!?」
サオリは、我が子と産婆を庇った。その背には二、三本の木(図書館は木製だった)が刺さっていたのだ。
「かな、らず……私が、まも、るから……」
「すぐ病院に!!」
産婆が叫んだが、サオリは自分がもう助からないと察した。
「その子は、貴女が……あの人、に」
結婚するはずだった男は、子どもの誕生を楽しみにしていた。
だからこそ、きちんと育ててくれると信じた。
「サオリっ」
「ぜっ、たい……大きくなって、もらわないと」
そして、薄れゆく意識の中「ごめんね」と子を撫でた。
「その、子の……名は……」
考えていた名前。それをはっきりと伝えたサオリは、その場に倒れた。
産後の疲れと、後処理不足。そして木が刺さり血を流しすぎた。
それが死因だった。