苦手だけど嫌いではない
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「こんなクソ溜めみてぇな場所に生まれて酷い話だ」
リヴァイがぽつりと呟いたのを、ファーランは聞き逃さなかった。
金を数えるのに動かしていた手をとめると、赤ん坊の泣き声がかすかに聞こえた。
大きさから、少し遠いがこの辺だろう。
リヴァイの言うことを理解するのに時間は要さなかった。
明日をもしれぬ命。毎日どこかで飢餓や病気で命を失う者が、この地下には大勢いる。
……この声の赤ん坊が、これから地下のどこにいても貧困に苦しむ運命を辿るのは目に見えていた。
「リヴァイはいつ生まれたんだ?」
「あ?」
小さな窓の外を眺めるリヴァイに問いかけると、その鋭い眼光がファーランを射抜く。
「睨むなって。……俺は自分がいつ生まれたかなんて知らない。親も早くに死んだし、俺の生まれた日を教えてくれるやつなんていなかったからな」
目を伏せて語りだしたが、その真剣な雰囲気にリヴァイは口を挟むことなく静かに聞く。
「でも今まで会ったやつの中には、自分の生まれた日を知っているやつもいた。物はやれないし、何もできないけど……その日は盛大に祝いの言葉を送るんだ。だからリヴァイ、お前の生まれた日を教えろよ」
期待するような目を向けられ、リヴァイは一瞬眉をひそめたがすぐにそれも元に戻る。
そしてファーランから視線をそらすと
「断る」
と言い放った。
「え!? 何でだよ! 良いだろ、減るもんじゃないし!」
「断る」
まさか拒否されるとは思っていなかったファーランは、驚きの表情を隠せないでいる。
「はー……断られたの初めてなんだけど」
「そうか。良かったな、断られるのも経験出来て」
視線を合わせようとしないリヴァイに、ファーランはある予測が過ぎった。
「まさかとは思うがリヴァイ……お前恥ずかしいのか?」
その言葉にリヴァイはまたこちらを向いたが、その目は不快感を含んでいるようであった。
「だからそう睨むなって。……生まれた日はおめでたいことだろ?」
「……ここは祝われるような場所じゃねぇ。皆、明日を生きるのもやっとなんだ。お前だって知ってるだろう」
「そりゃな。けど、だからこそ次の歳を重ねるまで生き延びたお祝いは悪くないと思うんだ」
生き抜いたお祝いだとファーランは言う。
リヴァイは何か言いたそうだったが、どことなく穏やかな表情を浮かべるファーランを見て言葉を呑んだ。
「……それがお前の信じるものならそうなんだろうな」
「ん? どういうことだ?」
「何でもねぇよ」
立ち上がるリヴァイに、ファーランは慌てて声をかける。
「ちょ、教えてくれないのか!? 今のはそういう流れだろ!?」
「それとこれは別だ。俺は祝われる気はない」
「やっぱ恥ずかしいからだろ!?」
「違う。俺は、自分の生まれた日なんざどうでもいい。ただ生きるだけだ」
リヴァイはそう告げると、隠れ家を出た。
リヴァイがぽつりと呟いたのを、ファーランは聞き逃さなかった。
金を数えるのに動かしていた手をとめると、赤ん坊の泣き声がかすかに聞こえた。
大きさから、少し遠いがこの辺だろう。
リヴァイの言うことを理解するのに時間は要さなかった。
明日をもしれぬ命。毎日どこかで飢餓や病気で命を失う者が、この地下には大勢いる。
……この声の赤ん坊が、これから地下のどこにいても貧困に苦しむ運命を辿るのは目に見えていた。
「リヴァイはいつ生まれたんだ?」
「あ?」
小さな窓の外を眺めるリヴァイに問いかけると、その鋭い眼光がファーランを射抜く。
「睨むなって。……俺は自分がいつ生まれたかなんて知らない。親も早くに死んだし、俺の生まれた日を教えてくれるやつなんていなかったからな」
目を伏せて語りだしたが、その真剣な雰囲気にリヴァイは口を挟むことなく静かに聞く。
「でも今まで会ったやつの中には、自分の生まれた日を知っているやつもいた。物はやれないし、何もできないけど……その日は盛大に祝いの言葉を送るんだ。だからリヴァイ、お前の生まれた日を教えろよ」
期待するような目を向けられ、リヴァイは一瞬眉をひそめたがすぐにそれも元に戻る。
そしてファーランから視線をそらすと
「断る」
と言い放った。
「え!? 何でだよ! 良いだろ、減るもんじゃないし!」
「断る」
まさか拒否されるとは思っていなかったファーランは、驚きの表情を隠せないでいる。
「はー……断られたの初めてなんだけど」
「そうか。良かったな、断られるのも経験出来て」
視線を合わせようとしないリヴァイに、ファーランはある予測が過ぎった。
「まさかとは思うがリヴァイ……お前恥ずかしいのか?」
その言葉にリヴァイはまたこちらを向いたが、その目は不快感を含んでいるようであった。
「だからそう睨むなって。……生まれた日はおめでたいことだろ?」
「……ここは祝われるような場所じゃねぇ。皆、明日を生きるのもやっとなんだ。お前だって知ってるだろう」
「そりゃな。けど、だからこそ次の歳を重ねるまで生き延びたお祝いは悪くないと思うんだ」
生き抜いたお祝いだとファーランは言う。
リヴァイは何か言いたそうだったが、どことなく穏やかな表情を浮かべるファーランを見て言葉を呑んだ。
「……それがお前の信じるものならそうなんだろうな」
「ん? どういうことだ?」
「何でもねぇよ」
立ち上がるリヴァイに、ファーランは慌てて声をかける。
「ちょ、教えてくれないのか!? 今のはそういう流れだろ!?」
「それとこれは別だ。俺は祝われる気はない」
「やっぱ恥ずかしいからだろ!?」
「違う。俺は、自分の生まれた日なんざどうでもいい。ただ生きるだけだ」
リヴァイはそう告げると、隠れ家を出た。
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