イェーガー家の秘密の風習
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「まさかアンタがバレンタインを知っていたとはね……オニャンコポンから聞いたの?」
まさかお菓子を渡した相手がバレンタイン知っているとは思わなかったアニ・レオンハートは、少し照れたように視線をそらした。
受け取った男――アルミン・アルレルトは彼女の反応をかわいいと感じながらも、受けた質問に答える。
「オニャンコポンからは、そのイベントがバレンタインっていう名前であることだけ聞いたんだ」
「……どういうこと?」
「僕が初めてこのイベントを知ったのは、エレンと出会って初めての2月14日だったよ」
巨人の力は消えた。
生き残った104期と生き残ったマーレの戦士だった者達がパラディ島と世界の架け橋となるべく、共に旅をして初めての2月14日。
船上で迎えたこの日、アルミンは自分が抱えるその秘密をアニに打ち明けることにした。
「何それ。その話が正しければ、アンタがバレンタインを知ったのは子供の頃ってこと?」
「うん。やっぱり驚くよね」
「そりゃあね。なんせ、あそこにはそんな文化なかったはずだから」
「気になる?」
「……別に。でもまぁそうだね。暇つぶしに聞いても良いよ。まだ目的地には着きそうにないし」
素直になればいいのに、とアルミンは思った。
「じゃあ暇つぶしに付き合ってもらおうかな」
そう言ってからアルミンは昔を思い返すのであった。
――……‥‥
アルミンがエレンと出会って、友達になるには時間はかからなかった。
エレンの友達はアルミンだけだったし、アルミンの友達もエレンだけだった。
だからほぼ毎日、いつも二人で遊んだ。ミカサがそこへ加わるまでいつも二人、色んなことをして遊んだ。
そんな毎日の中で、エレンがある日突然お菓子を持ってきたのである。
人気のない場所にアルミンを連れていき出した包みからは、甘い香りがした。
「やる」
ただ一言。
しかし何故くれるのかアルミンは理解出来なかった。エレンだってお菓子は食べるのを知っていたからだ。
甘いものが嫌いなわけではない。
ではなぜ自分にだけくれるのか。アルミンが色々思考を巡らせ、出た言葉が
「何で?」
だった。
もっと何かあっただろうと思い返せば毎回思うのだが、当時のアルミンにはその言葉しか出なかった。
「何で、って……そういう日だから」
「そういう日って?」
本気でわからないアルミンに、エレンはただでさえデカい目を更に大きくさせ信じられないという顔をした。
しかしそれは一瞬で、エレンはうーんと唸って腕を組んだ。
「エレン?」
「アルミンが知らないとなると、本当にど田舎の風習なのか?」
「えっと……?」
受け取った包みをそのまま手にして立ち尽くすアルミンに、エレンは声を潜めて伝えた。
「まず、それは姉ちゃんからだ」
「え!? マーラさんから!?」
エレンの姉、マーラとは面識があり何度か話したこともあった。
「何から話せばいいかわかんねぇけど……父さんが生まれ育った地域に伝わる風習らしい」
「イェーガー先生の故郷?」
「ああ。だけどこの風習は外で話しちゃ駄目なんだと。特に憲兵には聞かたら駄目だって」
それを聞いてアルミンは青ざめた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。それってかなりまずいんじゃ……! 僕に話して大丈夫なの!? そ、それより憲兵が駄目ってことは禁止風習ってことなんじゃ……!」
「落ち着けって。大丈夫だ。ここらには憲兵あんまいねーし。それにアルミンは他人に喋らないだろ? アルミンは信用できるから、父さんも良いって言ってた」
「で、でも!」
「それにただの菓子だぜ? 菓子を作ることとかあげることとかは禁止されてるわけじゃないから大丈夫だって」
そう言われ、確かにとアルミンは冷静さを取り戻した。
そして手元の包みを軽く胸元に引き寄せた。
「本当に貰っていいの?」
「ああ。姉ちゃんがお前のためにあげるって言ってたやつだし」
「じゃあお礼しないと……!」
「あー、それも今じゃなくていい。お礼は一ヶ月後なんだ」
エレンの言葉にアルミンは首を傾げた。
一ヶ月後という決まりがあるなんて、どういう風習なんだろうか?
知らないことを知りたい欲の強いアルミンは、エレンに尋ねた。
まさかお菓子を渡した相手がバレンタイン知っているとは思わなかったアニ・レオンハートは、少し照れたように視線をそらした。
受け取った男――アルミン・アルレルトは彼女の反応をかわいいと感じながらも、受けた質問に答える。
「オニャンコポンからは、そのイベントがバレンタインっていう名前であることだけ聞いたんだ」
「……どういうこと?」
「僕が初めてこのイベントを知ったのは、エレンと出会って初めての2月14日だったよ」
巨人の力は消えた。
生き残った104期と生き残ったマーレの戦士だった者達がパラディ島と世界の架け橋となるべく、共に旅をして初めての2月14日。
船上で迎えたこの日、アルミンは自分が抱えるその秘密をアニに打ち明けることにした。
「何それ。その話が正しければ、アンタがバレンタインを知ったのは子供の頃ってこと?」
「うん。やっぱり驚くよね」
「そりゃあね。なんせ、あそこにはそんな文化なかったはずだから」
「気になる?」
「……別に。でもまぁそうだね。暇つぶしに聞いても良いよ。まだ目的地には着きそうにないし」
素直になればいいのに、とアルミンは思った。
「じゃあ暇つぶしに付き合ってもらおうかな」
そう言ってからアルミンは昔を思い返すのであった。
――……‥‥
アルミンがエレンと出会って、友達になるには時間はかからなかった。
エレンの友達はアルミンだけだったし、アルミンの友達もエレンだけだった。
だからほぼ毎日、いつも二人で遊んだ。ミカサがそこへ加わるまでいつも二人、色んなことをして遊んだ。
そんな毎日の中で、エレンがある日突然お菓子を持ってきたのである。
人気のない場所にアルミンを連れていき出した包みからは、甘い香りがした。
「やる」
ただ一言。
しかし何故くれるのかアルミンは理解出来なかった。エレンだってお菓子は食べるのを知っていたからだ。
甘いものが嫌いなわけではない。
ではなぜ自分にだけくれるのか。アルミンが色々思考を巡らせ、出た言葉が
「何で?」
だった。
もっと何かあっただろうと思い返せば毎回思うのだが、当時のアルミンにはその言葉しか出なかった。
「何で、って……そういう日だから」
「そういう日って?」
本気でわからないアルミンに、エレンはただでさえデカい目を更に大きくさせ信じられないという顔をした。
しかしそれは一瞬で、エレンはうーんと唸って腕を組んだ。
「エレン?」
「アルミンが知らないとなると、本当にど田舎の風習なのか?」
「えっと……?」
受け取った包みをそのまま手にして立ち尽くすアルミンに、エレンは声を潜めて伝えた。
「まず、それは姉ちゃんからだ」
「え!? マーラさんから!?」
エレンの姉、マーラとは面識があり何度か話したこともあった。
「何から話せばいいかわかんねぇけど……父さんが生まれ育った地域に伝わる風習らしい」
「イェーガー先生の故郷?」
「ああ。だけどこの風習は外で話しちゃ駄目なんだと。特に憲兵には聞かたら駄目だって」
それを聞いてアルミンは青ざめた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。それってかなりまずいんじゃ……! 僕に話して大丈夫なの!? そ、それより憲兵が駄目ってことは禁止風習ってことなんじゃ……!」
「落ち着けって。大丈夫だ。ここらには憲兵あんまいねーし。それにアルミンは他人に喋らないだろ? アルミンは信用できるから、父さんも良いって言ってた」
「で、でも!」
「それにただの菓子だぜ? 菓子を作ることとかあげることとかは禁止されてるわけじゃないから大丈夫だって」
そう言われ、確かにとアルミンは冷静さを取り戻した。
そして手元の包みを軽く胸元に引き寄せた。
「本当に貰っていいの?」
「ああ。姉ちゃんがお前のためにあげるって言ってたやつだし」
「じゃあお礼しないと……!」
「あー、それも今じゃなくていい。お礼は一ヶ月後なんだ」
エレンの言葉にアルミンは首を傾げた。
一ヶ月後という決まりがあるなんて、どういう風習なんだろうか?
知らないことを知りたい欲の強いアルミンは、エレンに尋ねた。
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