五、噂の出所 (☆)
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やたらと見られている気がする。
百乃はいつものように町に出ると、そう感じた。
正確には、朱い衣に身を包んでいるため見られているのはいつものことであるが、それとは違う“見られている”なのである。
と、同時に町の人から避けられている気もした。
見られているからと視線を向ければ、相手からは目を逸らされ体ごと向きを変える。
これが一人だけではなく、何人も続いた。
この前まではこんなことなかったのに、どういうことだろうか。
そう思って町の人に話しかけてみると皆、無視はしないがよそよそしい対応をしてきたのである。
世間話に「今日は天気がいいですね」と言えば「え、あ、あぁ……そうですね。それじゃ、俺急ぐんで」と立ち去る若者。
「可愛いお子さんですね」と言えば「え、えぇ……まぁ……」とじわじわ遠くに行く、赤子を背負った母親。
それが、初対面ならまだしも贔屓の人にまで同じような態度をとられたのである。
百乃の心は不思議と焦りと疑問でいっぱいであった。
「どういうこと……」
誰もまともに相手をしてくれないので、百乃は本当によく知った人々がいる長屋に向かった。
――……‥‥
長屋がある場所に入ると、百乃もよく知った男に最初に出会った。
「五平さん」
「ん? あ! 百乃様!」
駆け寄ったその男は以前、妻が呪詛によって寝込んでしまい百乃に解決を頼んだ五平である。
あの出来事以来、五平を始め長屋の人々は百乃を慕っているのである。
五平の今までと変わらぬ態度に百乃は、軽く胸を撫で下ろした。
「今日はどうしたんですか?」
「ちょっと聞きたいことがありまして」
「聞きたいこと、ですか。ここではあれなんで、うちに寄って行ってください。妻も会いたがっております」
五平の家へと向かう最中、長屋の人々が百乃に気付き元気に挨拶をしてくれた。
それだけで救われた気がした。
「コウ! 百乃様が来てくれたぞ」
家に着き、五平が中に向かって声をかけると奥から女性が出て来た。
「まぁ! 百乃様! ご無沙汰しております」
輝くような笑顔で迎えたこの女性は、五平の妻・コウである。
世間一般的に、コウは美人の類だ。
「コウさん、元気そうで何よりです」
「お陰様で、とても元気に過ごしております」
「コウ、百乃様は聞きたいことがあるそうだ」
「そうなのですか? とりあえず、上がってください」
――……‥‥
コウは三人分のお茶を湯呑に入れて持って来た。
それを百乃と五平の前に置くと、残り一個を手に取り盆を傍らに置いて座った。
「それにしても、あの時は本当にお世話になりました」
「いえ、本当にお元気になって良かったです。あれから変わりないですか?」
「ええ、全く平和に過ごしております」
世間話を軽くかわしたところで、五平が口を挟んだ。
「それで……聞きたいこととは何でしょう?」
「それなんですが――」
百乃は先程の町の人々の態度について話しをした。
百乃はいつものように町に出ると、そう感じた。
正確には、朱い衣に身を包んでいるため見られているのはいつものことであるが、それとは違う“見られている”なのである。
と、同時に町の人から避けられている気もした。
見られているからと視線を向ければ、相手からは目を逸らされ体ごと向きを変える。
これが一人だけではなく、何人も続いた。
この前まではこんなことなかったのに、どういうことだろうか。
そう思って町の人に話しかけてみると皆、無視はしないがよそよそしい対応をしてきたのである。
世間話に「今日は天気がいいですね」と言えば「え、あ、あぁ……そうですね。それじゃ、俺急ぐんで」と立ち去る若者。
「可愛いお子さんですね」と言えば「え、えぇ……まぁ……」とじわじわ遠くに行く、赤子を背負った母親。
それが、初対面ならまだしも贔屓の人にまで同じような態度をとられたのである。
百乃の心は不思議と焦りと疑問でいっぱいであった。
「どういうこと……」
誰もまともに相手をしてくれないので、百乃は本当によく知った人々がいる長屋に向かった。
――……‥‥
長屋がある場所に入ると、百乃もよく知った男に最初に出会った。
「五平さん」
「ん? あ! 百乃様!」
駆け寄ったその男は以前、妻が呪詛によって寝込んでしまい百乃に解決を頼んだ五平である。
あの出来事以来、五平を始め長屋の人々は百乃を慕っているのである。
五平の今までと変わらぬ態度に百乃は、軽く胸を撫で下ろした。
「今日はどうしたんですか?」
「ちょっと聞きたいことがありまして」
「聞きたいこと、ですか。ここではあれなんで、うちに寄って行ってください。妻も会いたがっております」
五平の家へと向かう最中、長屋の人々が百乃に気付き元気に挨拶をしてくれた。
それだけで救われた気がした。
「コウ! 百乃様が来てくれたぞ」
家に着き、五平が中に向かって声をかけると奥から女性が出て来た。
「まぁ! 百乃様! ご無沙汰しております」
輝くような笑顔で迎えたこの女性は、五平の妻・コウである。
世間一般的に、コウは美人の類だ。
「コウさん、元気そうで何よりです」
「お陰様で、とても元気に過ごしております」
「コウ、百乃様は聞きたいことがあるそうだ」
「そうなのですか? とりあえず、上がってください」
――……‥‥
コウは三人分のお茶を湯呑に入れて持って来た。
それを百乃と五平の前に置くと、残り一個を手に取り盆を傍らに置いて座った。
「それにしても、あの時は本当にお世話になりました」
「いえ、本当にお元気になって良かったです。あれから変わりないですか?」
「ええ、全く平和に過ごしております」
世間話を軽くかわしたところで、五平が口を挟んだ。
「それで……聞きたいこととは何でしょう?」
「それなんですが――」
百乃は先程の町の人々の態度について話しをした。