三、憑りつく闇 (☆)
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「ん?」
町の人々に囲まれた百乃は、ふと視線を感じた気がした。
しかし、辺りを探ってもそれらしき人物はおらず首を傾げる。
「どうかしましたか?」
町の人が訊ねてきた。
「いや、気のせい……かな。何でもないです」
その時だ。
遠くからぞろぞろと此方に向かって来る集団が目に入った。
浅葱色の羽織に身を包んだ、新選組であった。目立つその色は、当然町の人の目にも入る。
「新選組や……」
誰かが呟いた。
自然と百乃を囲む人々が端に避ける。
目の前を通る集団に、皆怪訝な顔していた。
「物騒やわ……」
「あんな子供みたいな奴でも人を殺すんやろうか……」
「関わらん方がええで」
皆、声を潜めて囁くが彼らには聞こえているのかもしれない。
睨みつけてくるように見てくる隊士もいたのだから。
しかし百乃は、そんなことよりある一人の男を見つめていた。
先頭を歩く男――少年と言った方がしっくりくるだろうか。可愛い顔立ちでも、キリッとした表情で歩く様は堂々たるもの。
百乃はじーっと彼だけを見つめていた。その様子に一人の町民の男が気付く。
「朱巫女様?」
「……」
答えない百乃を不思議に思い、今度は目の前で手を振った。
すると漸く百乃が、男の方を向いた。
「……え? どうしたんですか?」
きょとんとする百乃に、男はますます意味が分からないという顔をした。
「どうしたんはこっちの台詞ですわ。じっと新選組を見とったんは、朱巫女様やないですか」
「あ、あぁ……いや……別に何でもないです。それより、私は巫女じゃなくて陰陽師なんですけど」
そう訂正を入れるものの、
「そうやったっけ? まぁ、どっちでもええやないですか!」
と気にもとめていない態度を示される。
何度訂正しても、町の一部の人々は百乃を朱巫女と呼んでくるのであった。
それは、百乃がいつも朱い服を着ているからなのだが――。
新選組が去った後、町の人は再び百乃を取り囲んだのであった。
――……‥‥
後日、百乃は陰陽師の格好をせず町娘の装いをして京の町中にいた。
(意外と気付かれないものだなぁ……)
茶屋で団子を食べながら、そんなことを考えていた。
着物だけじゃなく、髪を結い上げて化粧の仕方を少し変えるだけで案外陰陽師の百乃だとは気付かれないものであった。
(……っと、来た)
団子を食べながらさり気なく見ると、新選組があの時と同じように列を成して歩いてくる。
そして町の人々も緊張が走っているようだった。
(あの時と同じ子か……)
その隊の先頭を歩くのは、前に見た少年だった。
そして彼らが目の前に来た時、百乃ははっきりと視たのだ。
少年の背後にぴったりとくっつく怨霊達の姿を。
(よくもまぁあれだけの霊をつけて……)
百乃には視えていたのだ。
彼に斬られた人々の怨念が集合体となっている。遠くから見ると靄みたいに視えるが、近くで視ると一人一人の顔まではっきりと分かった。
(だけど、本人はまだその影響を実感していない。まだ、そんなに数がいないから……)
他の隊士に目をやるが、先頭を行く少年の方が圧倒的に怨霊の数が多かった。
「やっぱり、ちょっと気になるな」
彼らが遠くなった頃、百乃は立ち上がった。
少年――新選組八番組組長・藤堂平助が、百乃の意識を新選組へと向けたのであった。
町の人々に囲まれた百乃は、ふと視線を感じた気がした。
しかし、辺りを探ってもそれらしき人物はおらず首を傾げる。
「どうかしましたか?」
町の人が訊ねてきた。
「いや、気のせい……かな。何でもないです」
その時だ。
遠くからぞろぞろと此方に向かって来る集団が目に入った。
浅葱色の羽織に身を包んだ、新選組であった。目立つその色は、当然町の人の目にも入る。
「新選組や……」
誰かが呟いた。
自然と百乃を囲む人々が端に避ける。
目の前を通る集団に、皆怪訝な顔していた。
「物騒やわ……」
「あんな子供みたいな奴でも人を殺すんやろうか……」
「関わらん方がええで」
皆、声を潜めて囁くが彼らには聞こえているのかもしれない。
睨みつけてくるように見てくる隊士もいたのだから。
しかし百乃は、そんなことよりある一人の男を見つめていた。
先頭を歩く男――少年と言った方がしっくりくるだろうか。可愛い顔立ちでも、キリッとした表情で歩く様は堂々たるもの。
百乃はじーっと彼だけを見つめていた。その様子に一人の町民の男が気付く。
「朱巫女様?」
「……」
答えない百乃を不思議に思い、今度は目の前で手を振った。
すると漸く百乃が、男の方を向いた。
「……え? どうしたんですか?」
きょとんとする百乃に、男はますます意味が分からないという顔をした。
「どうしたんはこっちの台詞ですわ。じっと新選組を見とったんは、朱巫女様やないですか」
「あ、あぁ……いや……別に何でもないです。それより、私は巫女じゃなくて陰陽師なんですけど」
そう訂正を入れるものの、
「そうやったっけ? まぁ、どっちでもええやないですか!」
と気にもとめていない態度を示される。
何度訂正しても、町の一部の人々は百乃を朱巫女と呼んでくるのであった。
それは、百乃がいつも朱い服を着ているからなのだが――。
新選組が去った後、町の人は再び百乃を取り囲んだのであった。
――……‥‥
後日、百乃は陰陽師の格好をせず町娘の装いをして京の町中にいた。
(意外と気付かれないものだなぁ……)
茶屋で団子を食べながら、そんなことを考えていた。
着物だけじゃなく、髪を結い上げて化粧の仕方を少し変えるだけで案外陰陽師の百乃だとは気付かれないものであった。
(……っと、来た)
団子を食べながらさり気なく見ると、新選組があの時と同じように列を成して歩いてくる。
そして町の人々も緊張が走っているようだった。
(あの時と同じ子か……)
その隊の先頭を歩くのは、前に見た少年だった。
そして彼らが目の前に来た時、百乃ははっきりと視たのだ。
少年の背後にぴったりとくっつく怨霊達の姿を。
(よくもまぁあれだけの霊をつけて……)
百乃には視えていたのだ。
彼に斬られた人々の怨念が集合体となっている。遠くから見ると靄みたいに視えるが、近くで視ると一人一人の顔まではっきりと分かった。
(だけど、本人はまだその影響を実感していない。まだ、そんなに数がいないから……)
他の隊士に目をやるが、先頭を行く少年の方が圧倒的に怨霊の数が多かった。
「やっぱり、ちょっと気になるな」
彼らが遠くなった頃、百乃は立ち上がった。
少年――新選組八番組組長・藤堂平助が、百乃の意識を新選組へと向けたのであった。