一、闇を祓う才女 (☆)
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――安政元年。
黒船が来航して一年経ったこの年、京の都は邪気に覆われ人々はこの世の終わりだと絶望した。
都のあちこちでいざこざが続き、暴動が起きようとしていた。
朝廷は、何としてもこの事を収めなければと京で一番の陰陽師一族である、安倍家に闇払いを願い出た。
「何者の仕業か分からぬのか」
「今はまだ分かりませぬ。しかし、このまま放っておけば都だけでなく……日ノ本全土が瘴気に覆われ、各地で争いが起きるでしょう」
「行昌、何としてでも止めよ」
「御意にございます」
――……‥‥
安倍行昌は、安倍家現当主であり今回の祈祷を仕切る立場にあった。
しかし、彼自身は闇払いを行わず代わりに十五になった息子の政久に託したのである。代わりと言っても、政久は元服を終え陰陽師の次期当主になれるような実力を持っていた。
父の行昌だけでなく、親戚一同が政久に託したのである。
大勢の安倍家陰陽師が並び祝詞を唱える中、政久はその中心に座り呪を口にし続けた。
その様子を遠くから眺めている少女が一人。
「百乃、さぁ中に入って」
少女――百乃の母親が、その小さな肩に手をそっと置いた。
「母様、兄様は大丈夫かな」
「きっと大丈夫よ」
「でも、空が黒いの全然変わらないよ」
空に指さし百乃は母親の夕月 を見上げる。
「難しいことなのよ。でも直に空は青くなるわ」
夕月は百乃にそう言いながらも、どこか不安そうな顔で遠くで頑張る息子を眺めた。
(政久……)
百乃はふと庭に目をやった。
そこには二人の人物。……いや、二人の式神がいた。
いつの頃からか、安倍家代々を見守って来た式神。母には見えぬ存在。
その二人が何やらひそひそと真剣な面持ちで話している。祈祷をする方を見ていることから、きっとそのことだろう。
「良くないのかな……」
「え?」
「あ、ううん。何でもない。母様、中に入ろう?」
夕月と共に部屋の中に入る際、庭にいる式神と目が合った。彼らは少し驚いた表情を見せた気がした。
黒船が来航して一年経ったこの年、京の都は邪気に覆われ人々はこの世の終わりだと絶望した。
都のあちこちでいざこざが続き、暴動が起きようとしていた。
朝廷は、何としてもこの事を収めなければと京で一番の陰陽師一族である、安倍家に闇払いを願い出た。
「何者の仕業か分からぬのか」
「今はまだ分かりませぬ。しかし、このまま放っておけば都だけでなく……日ノ本全土が瘴気に覆われ、各地で争いが起きるでしょう」
「行昌、何としてでも止めよ」
「御意にございます」
――……‥‥
安倍行昌は、安倍家現当主であり今回の祈祷を仕切る立場にあった。
しかし、彼自身は闇払いを行わず代わりに十五になった息子の政久に託したのである。代わりと言っても、政久は元服を終え陰陽師の次期当主になれるような実力を持っていた。
父の行昌だけでなく、親戚一同が政久に託したのである。
大勢の安倍家陰陽師が並び祝詞を唱える中、政久はその中心に座り呪を口にし続けた。
その様子を遠くから眺めている少女が一人。
「百乃、さぁ中に入って」
少女――百乃の母親が、その小さな肩に手をそっと置いた。
「母様、兄様は大丈夫かな」
「きっと大丈夫よ」
「でも、空が黒いの全然変わらないよ」
空に指さし百乃は母親の
「難しいことなのよ。でも直に空は青くなるわ」
夕月は百乃にそう言いながらも、どこか不安そうな顔で遠くで頑張る息子を眺めた。
(政久……)
百乃はふと庭に目をやった。
そこには二人の人物。……いや、二人の式神がいた。
いつの頃からか、安倍家代々を見守って来た式神。母には見えぬ存在。
その二人が何やらひそひそと真剣な面持ちで話している。祈祷をする方を見ていることから、きっとそのことだろう。
「良くないのかな……」
「え?」
「あ、ううん。何でもない。母様、中に入ろう?」
夕月と共に部屋の中に入る際、庭にいる式神と目が合った。彼らは少し驚いた表情を見せた気がした。