第二章
名前変換
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平助が試衛館にやってきて、早二月程。
皐月の香があちこちから匂ってくる。それでも、道場は相変わらず熱気が篭っていて――。
「ぅわぁあああ!」
「はい、ういちゃん反則ね」
「いや、今のは思わず……」
「剣で勝負って言ったのに、素手は反則だよ」
平助と手合せしていたけど、私はたまに素手で相手を投げ飛ばしちゃう癖がある。小柄な平助なら簡単、総司でもギリギリいける。
投げ飛ばしたら、相手の剣を奪うことが出来る。
「でも――」
「でもじゃないよ。これはういちゃんの剣技向上のためでもあるんだよ。相手を投げ飛ばせない時どうするのさ。そこで剣技が下手だったらその前に死んじゃうんだからね、なのに投げちゃ……練習の意味ないじゃない」
いってぇ、と打った腰をさすりながら立ち上がる平助を横に総司の視線が突き刺さる。
「はい、もう一回」
「え!? もう一回!? 総司替わってくれよ! 俺、もうういさんについていけない……」
「嫌だ」
即答する総司に平助は文句ばかり口にしていた。
――……‥‥
「近藤さん! またあんたは――!」
夜、廊下を歩いていると近藤さんの部屋から土方さんの声が耳に届いた。
立ち止まり、こっそり部屋の様子を窺う。
「行く宛てのない奴を次から次へ誘ってくるのは止めてくれ! ただでさえ金がねぇってのに。それじゃあ迎え入れても、辛い思いさせるだけだ!」
「だが、帰る家もないというんだ。可哀想だろう」
「可哀想可哀想って、あんた平助ん時もそう言ってただろ。あいつはまだガキだししょうがないとしてもだ、今度は十八の男。一人でなんとか出来るだろうが」
この流れは、また誰かを近藤さんが連れてくるのだろうか。
「十八と言っても、行く宛てのない者には変わりはない」
「あのなぁ……近藤さん、いちいちそんなの受け入れてたら、そのうちここは廊下まで寝るとこになるんだぞ!?」
すると近藤さんは少し焦ったように唸った。
「そうなっては困るだろ?」
「い、いやしかし彼もなかなか強いみたいだし……」
「また手合せしたのか!?」
「いや、実を言うと町で乱闘騒ぎがあってな。それを止めたのがその若者だったんだ」
すると土方さんはため息を吐いた。私は声を聞いているだけだから分からないけど、土方さんの苦虫を潰したような顔が目に浮かんだ。
「それで、実は明日から来ることに――」
「!? 何度も言うが、相談する前に勝手に決める癖どうにかなんねぇのか! 確かに、道場主はあんたで権利はあるだろうよ。けどな相談するなら、決める前にしてくれよ。近藤さんのやってることは相談じゃなくて、報告だな」
「む……す、すまん」
すると、土方さんは再びため息を吐き「分かった」と言った。
「誘っちまったもんはしょうがねぇ。今更、やっぱ無理だなんてことは道場の名をも落としかねないからな」
「トシ……!」
「まぁ、道場に誰を迎えるかは主である近藤さんの勝手だし、俺も少し言いすぎた。悪かったよ」
――感動した。このほのかに見える友情に。
私は目を潤ませながらも、総司の部屋に突撃した。
「総司総司総司!!!! 聞いて!!!!!」
勢いよく、総司の部屋を開ければそこには平助もいた。
「どうしたのさ、うるさくて耳が変になりそうじゃない」
「いつもの嫌味も今は聞き流せるくらい私は感動しているのだよ!!」
「ういさん、どうしたんだよ? 目が潤んでるけど」
平助の言葉を待ってました、とでも言うように私は先ほどの出来事を熱く語った。
皐月の香があちこちから匂ってくる。それでも、道場は相変わらず熱気が篭っていて――。
「ぅわぁあああ!」
「はい、ういちゃん反則ね」
「いや、今のは思わず……」
「剣で勝負って言ったのに、素手は反則だよ」
平助と手合せしていたけど、私はたまに素手で相手を投げ飛ばしちゃう癖がある。小柄な平助なら簡単、総司でもギリギリいける。
投げ飛ばしたら、相手の剣を奪うことが出来る。
「でも――」
「でもじゃないよ。これはういちゃんの剣技向上のためでもあるんだよ。相手を投げ飛ばせない時どうするのさ。そこで剣技が下手だったらその前に死んじゃうんだからね、なのに投げちゃ……練習の意味ないじゃない」
いってぇ、と打った腰をさすりながら立ち上がる平助を横に総司の視線が突き刺さる。
「はい、もう一回」
「え!? もう一回!? 総司替わってくれよ! 俺、もうういさんについていけない……」
「嫌だ」
即答する総司に平助は文句ばかり口にしていた。
――……‥‥
「近藤さん! またあんたは――!」
夜、廊下を歩いていると近藤さんの部屋から土方さんの声が耳に届いた。
立ち止まり、こっそり部屋の様子を窺う。
「行く宛てのない奴を次から次へ誘ってくるのは止めてくれ! ただでさえ金がねぇってのに。それじゃあ迎え入れても、辛い思いさせるだけだ!」
「だが、帰る家もないというんだ。可哀想だろう」
「可哀想可哀想って、あんた平助ん時もそう言ってただろ。あいつはまだガキだししょうがないとしてもだ、今度は十八の男。一人でなんとか出来るだろうが」
この流れは、また誰かを近藤さんが連れてくるのだろうか。
「十八と言っても、行く宛てのない者には変わりはない」
「あのなぁ……近藤さん、いちいちそんなの受け入れてたら、そのうちここは廊下まで寝るとこになるんだぞ!?」
すると近藤さんは少し焦ったように唸った。
「そうなっては困るだろ?」
「い、いやしかし彼もなかなか強いみたいだし……」
「また手合せしたのか!?」
「いや、実を言うと町で乱闘騒ぎがあってな。それを止めたのがその若者だったんだ」
すると土方さんはため息を吐いた。私は声を聞いているだけだから分からないけど、土方さんの苦虫を潰したような顔が目に浮かんだ。
「それで、実は明日から来ることに――」
「!? 何度も言うが、相談する前に勝手に決める癖どうにかなんねぇのか! 確かに、道場主はあんたで権利はあるだろうよ。けどな相談するなら、決める前にしてくれよ。近藤さんのやってることは相談じゃなくて、報告だな」
「む……す、すまん」
すると、土方さんは再びため息を吐き「分かった」と言った。
「誘っちまったもんはしょうがねぇ。今更、やっぱ無理だなんてことは道場の名をも落としかねないからな」
「トシ……!」
「まぁ、道場に誰を迎えるかは主である近藤さんの勝手だし、俺も少し言いすぎた。悪かったよ」
――感動した。このほのかに見える友情に。
私は目を潤ませながらも、総司の部屋に突撃した。
「総司総司総司!!!! 聞いて!!!!!」
勢いよく、総司の部屋を開ければそこには平助もいた。
「どうしたのさ、うるさくて耳が変になりそうじゃない」
「いつもの嫌味も今は聞き流せるくらい私は感動しているのだよ!!」
「ういさん、どうしたんだよ? 目が潤んでるけど」
平助の言葉を待ってました、とでも言うように私は先ほどの出来事を熱く語った。