第十一章
名前変換
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「ごちそうさまでした」
手を合わせて朝餉の時間を締めると膳を持って立ち上がった。
「あ、ういさん――」
部屋を出る直前、平助に呼ばれたけど私は振り返らなかった。
――……‥‥
「もう一年だな」
月を眺めるため、縁側に座っていると隣に原田さんがやってきた。
断りもなく座る原田さん。いつもなら胸が高鳴るが、今の私はそんな現象さえ起きなかった。
「一年って何が?」
いつもならこんな言葉使い原田さんにはしない。
「俺がここに来て、お前と出会って一年だなって思ってよ」
そういえばそうだった。
一年前の皐月に彼はやってきた。初めて会ったのは江戸の町中。
町人同士の喧嘩を止めようとしたら、そういうのは男に任せておけ的なことを言って代わりに止めに入ったのが原田さんだった。
「一年ありゃ、皆がどんなやつなのかだいぶ分かって来るよな」
原田さんは、それまで両足を下に投げおろしていたが片膝を立てるような体勢をとった。
「でもまだ分からねぇこともある」
庭を見つめたまま続けた。
「何で、お前はそんなに“女”ということを嫌う?」
私は自然と眉間に皺が寄るのを感じた。
「……いや、違うな。“女だからと言われること”か」
「原田さんも貶すの?」
「そうじゃねぇよ。ただお前は、執着しすぎだと思ってな」
分かってる。でも自分でもよく分からない。
本当は、心の中で矛盾に気付き始めてる。
「斎藤といざこざがあってから、皆ういに話しかけにくいって言ってるぜ?」
「……」
「最近ずっとお前他の奴とそんなに関わろうとしてねぇよな」
「……」
「俺が思うに、お前は化粧とか女物の着物とか花とか……そういうもんが嫌いなわけじゃねぇ。むしろ、そっちには興味があるんだろ?」
原田さんの指摘にドキッとした。
「何で、それを……」
「花は、花見の時にお前嬉しそうに眺めてたじゃねぇか」
「!」
ま、まさか見られていたとは――!
「化粧とか着物は、総司の姉さんに聞いた」
ミツさんと買い物した日の事を思い出した。
まさか原田さんに話していたとは。
「だから、男になりたいとか思ってるわけじゃないよな。……なぁ、何でそんなに男と並ぼうとするんだ?」
覗き込むように見てくる原田さんに、私は俯いたまま視線を逸らした。
「俺に話しちゃくれねぇか?」
膝の上で拳を強く握った。
「相談くらい乗ってやるよ」
原田さんは優しく告げると、私の頭をぽんぽんと軽く叩いた。
心臓が少し跳ね上がり、顔がほんのり熱くなるのを感じた。
手を合わせて朝餉の時間を締めると膳を持って立ち上がった。
「あ、ういさん――」
部屋を出る直前、平助に呼ばれたけど私は振り返らなかった。
――……‥‥
「もう一年だな」
月を眺めるため、縁側に座っていると隣に原田さんがやってきた。
断りもなく座る原田さん。いつもなら胸が高鳴るが、今の私はそんな現象さえ起きなかった。
「一年って何が?」
いつもならこんな言葉使い原田さんにはしない。
「俺がここに来て、お前と出会って一年だなって思ってよ」
そういえばそうだった。
一年前の皐月に彼はやってきた。初めて会ったのは江戸の町中。
町人同士の喧嘩を止めようとしたら、そういうのは男に任せておけ的なことを言って代わりに止めに入ったのが原田さんだった。
「一年ありゃ、皆がどんなやつなのかだいぶ分かって来るよな」
原田さんは、それまで両足を下に投げおろしていたが片膝を立てるような体勢をとった。
「でもまだ分からねぇこともある」
庭を見つめたまま続けた。
「何で、お前はそんなに“女”ということを嫌う?」
私は自然と眉間に皺が寄るのを感じた。
「……いや、違うな。“女だからと言われること”か」
「原田さんも貶すの?」
「そうじゃねぇよ。ただお前は、執着しすぎだと思ってな」
分かってる。でも自分でもよく分からない。
本当は、心の中で矛盾に気付き始めてる。
「斎藤といざこざがあってから、皆ういに話しかけにくいって言ってるぜ?」
「……」
「最近ずっとお前他の奴とそんなに関わろうとしてねぇよな」
「……」
「俺が思うに、お前は化粧とか女物の着物とか花とか……そういうもんが嫌いなわけじゃねぇ。むしろ、そっちには興味があるんだろ?」
原田さんの指摘にドキッとした。
「何で、それを……」
「花は、花見の時にお前嬉しそうに眺めてたじゃねぇか」
「!」
ま、まさか見られていたとは――!
「化粧とか着物は、総司の姉さんに聞いた」
ミツさんと買い物した日の事を思い出した。
まさか原田さんに話していたとは。
「だから、男になりたいとか思ってるわけじゃないよな。……なぁ、何でそんなに男と並ぼうとするんだ?」
覗き込むように見てくる原田さんに、私は俯いたまま視線を逸らした。
「俺に話しちゃくれねぇか?」
膝の上で拳を強く握った。
「相談くらい乗ってやるよ」
原田さんは優しく告げると、私の頭をぽんぽんと軽く叩いた。
心臓が少し跳ね上がり、顔がほんのり熱くなるのを感じた。