刀の手入れをしていたら、すっかり遅くなってしまった。
皆はもう寝静まっているだろう。もっとも、左之と新八は夜の巡察に出ているが。

喉が渇いたので、俺は水を飲みに台所へ向かった。
しかし、そこには既に先客があった。
誰だろうか、何をしているのだろうか。

俺は、疑問を解決すべくそっと入り口に立った。


「何をしている」

「あ、斎藤さん」


そこにいたのは、最近屯所に働きにきた陽菜と、その腕に抱き留められている左之の子どもの茂であった。


「陽菜か。茂もこんなところで何をやっている」

「……」

「斎藤さん。すみませんがこの子、怯えてるんで睨むの止めてもらえますか？」


俺としては普通のつもりだったが、知らず知らずのうちに睨んでいたのか。そういえば、よく副長や総司にも言われる。


「す、すまない。そういうつもりではなかったのだ……」

「すみません、ありがとうございます」

「ところで、何をしているんだ」


そうして聞いた内容は、茂が自分を母だと言って抱き着いてきたというもの。そして泣き出したらしい。

それから陽菜は、少し寂しい表情をした。