生まれた日
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「いいいいだあああいいいいい!!!」
木ノ葉病院の分娩室に響き渡るのは、今まさに出産しようとしているうちはミコトの苦しみであった。
初めての出産。ミコトは叫ぶタイプの人間だったらしく、その声は廊下にまで丸聞こえだ。
「もうダメー!!!!」
廊下のイスに座って待つのは、夫のフガクとその父・イオリであった。
「落ち着け、フガク」
つるつる頭のイオリが、どっしりと構えてそう言った。
「落ち着いてるさ」
「いや、落ち着いていないな」
イオリの視線の先には、貧乏ゆすりが激しいフガクの脚があった。
「だが気持ちはわかる。お前が生まれる時のオレがそうだった」
「父さんが……?」
目を見開いてじっと父の顔を見つめた。
フガクの中で、父はいつも冷静で何事にも動じないと思っていたからだ。
「母さんも、ミコトさんと同じように痛いと叫んでいた」
今は亡き妻の事を思い出しながら、イオリは語る。
「助けてやりたいが、助けてやれない。オレにはどうすることも出来ない。やるせない気持ちだった。だからどうしてもそわそわしてしまう。分娩室に入る前も、陣痛が来てまだまだと言われたあの時間も含めると、相当長いこと苦しむんだなぁと知った。こっちが落ち着かない」
「父さんが……。意外だ」
「オレも実は父さん……お前の爺さんに同じことを言われ、同じように意外だと思ったよ」
それから、ほんの一時間後だった。
分娩室から新しい命の産声があがったのは。
――……‥‥
フガクは、生まれたばかりの小さな体をそっと抱き締めた。
しかしその手つきはぎこちなく、そばで見ていたミコトやイオリそして後からやって来たミコトの父母は気が気ではなかった。
「フガク、落とすなよ」
「お、落としはしないさ」
「ぎこちないわねぇ……」
潰してしまいそうなくらい小さい存在を抱くあげる力加減なんか、分かるわけなかった。
フガクには弟がいたが、そんなに年は離れていないためこれが赤ん坊抱く初めてだったのだ。
「名前はもう決めたの?」
ミコトの母が聞いた。
「そうねぇ……どう?」
「名前はもう決めてある」
どういう名前?
誰も口にしなかったが、そういう雰囲気が漂っていた。
そして、まだ目も開かない我が子の顔を見つめて言った。
「龍厦。この子の名前は、うちは龍厦だ」
父親似の女の子だと、先ほど話をした。
龍厦と名付けられたこの子は、これからどんな人生を歩んでいくのか。幸せになってほしいと、誰もが願った。
「龍厦。いい名前ね。これからよろしくね」
ベッドに腰かけたフガクの腕にいる、龍厦の頬をミコトが軽くつついた。
すると、龍厦は声をあげてもぞもぞ動く。
「!」
「ちょ、あなた! 落とさないでよ!」
「す、すまん……」
あまりにも軽く抱いていたせいで、落としそうになるフガク。
一同ヒヤッとした。
「もう任せられないわ」
そう言って、ミコトが龍厦を奪うように取る。
少し悲しくなったフガクだが、ミコトの龍厦を見つめる姿に母親の影を見て、すぐに微笑ましさを感じた。
「……漸く会えたな」
「ええ。……私たちの所に生まれて来てくれてありがとう」
――……龍厦。
「……?」
ふと懐かしい母と父の声が聴こえた。
振り返ってみるが、そこに姿はない。
「気のせい、か……」
父も母も死んだのだ。
幻聴以外のなにものでもない。龍厦は気丈に振舞っているが、時々とても寂しくなってしまう。
「龍厦、どうした」
仲間が寄る。
そこで今は任務中だったと思い出した。
「……何でもない。行こう」
暗部の面をつけ、龍厦は歩き出す――。
2019年2月12日
「生まれた日」終了
●あとがき●
皆さん、お久しぶりです……(消え入るような声)
すみません。気付けば、最終更新から一年四ヶ月経ってました……。
忘れてたわけじゃないですよ!ずっと書こう書こうとは思っていました。
気付けばそれだけの年月が経ち、信じられないです……。申し訳ない。
さて、今回は主人公の生まれた時の話を番外編で書いてみました!
余談ですが主人公は、生まれた時は父親似で成長するにつれ母親に似てきたという設定です!
以上です!(笑)
木ノ葉病院の分娩室に響き渡るのは、今まさに出産しようとしているうちはミコトの苦しみであった。
初めての出産。ミコトは叫ぶタイプの人間だったらしく、その声は廊下にまで丸聞こえだ。
「もうダメー!!!!」
廊下のイスに座って待つのは、夫のフガクとその父・イオリであった。
「落ち着け、フガク」
つるつる頭のイオリが、どっしりと構えてそう言った。
「落ち着いてるさ」
「いや、落ち着いていないな」
イオリの視線の先には、貧乏ゆすりが激しいフガクの脚があった。
「だが気持ちはわかる。お前が生まれる時のオレがそうだった」
「父さんが……?」
目を見開いてじっと父の顔を見つめた。
フガクの中で、父はいつも冷静で何事にも動じないと思っていたからだ。
「母さんも、ミコトさんと同じように痛いと叫んでいた」
今は亡き妻の事を思い出しながら、イオリは語る。
「助けてやりたいが、助けてやれない。オレにはどうすることも出来ない。やるせない気持ちだった。だからどうしてもそわそわしてしまう。分娩室に入る前も、陣痛が来てまだまだと言われたあの時間も含めると、相当長いこと苦しむんだなぁと知った。こっちが落ち着かない」
「父さんが……。意外だ」
「オレも実は父さん……お前の爺さんに同じことを言われ、同じように意外だと思ったよ」
それから、ほんの一時間後だった。
分娩室から新しい命の産声があがったのは。
――……‥‥
フガクは、生まれたばかりの小さな体をそっと抱き締めた。
しかしその手つきはぎこちなく、そばで見ていたミコトやイオリそして後からやって来たミコトの父母は気が気ではなかった。
「フガク、落とすなよ」
「お、落としはしないさ」
「ぎこちないわねぇ……」
潰してしまいそうなくらい小さい存在を抱くあげる力加減なんか、分かるわけなかった。
フガクには弟がいたが、そんなに年は離れていないためこれが赤ん坊抱く初めてだったのだ。
「名前はもう決めたの?」
ミコトの母が聞いた。
「そうねぇ……どう?」
「名前はもう決めてある」
どういう名前?
誰も口にしなかったが、そういう雰囲気が漂っていた。
そして、まだ目も開かない我が子の顔を見つめて言った。
「龍厦。この子の名前は、うちは龍厦だ」
父親似の女の子だと、先ほど話をした。
龍厦と名付けられたこの子は、これからどんな人生を歩んでいくのか。幸せになってほしいと、誰もが願った。
「龍厦。いい名前ね。これからよろしくね」
ベッドに腰かけたフガクの腕にいる、龍厦の頬をミコトが軽くつついた。
すると、龍厦は声をあげてもぞもぞ動く。
「!」
「ちょ、あなた! 落とさないでよ!」
「す、すまん……」
あまりにも軽く抱いていたせいで、落としそうになるフガク。
一同ヒヤッとした。
「もう任せられないわ」
そう言って、ミコトが龍厦を奪うように取る。
少し悲しくなったフガクだが、ミコトの龍厦を見つめる姿に母親の影を見て、すぐに微笑ましさを感じた。
「……漸く会えたな」
「ええ。……私たちの所に生まれて来てくれてありがとう」
――……龍厦。
「……?」
ふと懐かしい母と父の声が聴こえた。
振り返ってみるが、そこに姿はない。
「気のせい、か……」
父も母も死んだのだ。
幻聴以外のなにものでもない。龍厦は気丈に振舞っているが、時々とても寂しくなってしまう。
「龍厦、どうした」
仲間が寄る。
そこで今は任務中だったと思い出した。
「……何でもない。行こう」
暗部の面をつけ、龍厦は歩き出す――。
2019年2月12日
「生まれた日」終了
●あとがき●
皆さん、お久しぶりです……(消え入るような声)
すみません。気付けば、最終更新から一年四ヶ月経ってました……。
忘れてたわけじゃないですよ!ずっと書こう書こうとは思っていました。
気付けばそれだけの年月が経ち、信じられないです……。申し訳ない。
さて、今回は主人公の生まれた時の話を番外編で書いてみました!
余談ですが主人公は、生まれた時は父親似で成長するにつれ母親に似てきたという設定です!
以上です!(笑)
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