第8章 闇と光
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この小説の夢小説設定主人公はイタチとサスケの姉という設定。
その他、名前変換可能のオリキャラ登場します。
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三代目火影が用意してくれたアパートで、サスケと二人暮らしが始まって数十日が経っていた。
「姉さん」
早朝、いつものように玄関から出ようとすると背後から呼ぶ声。
振り返ると、眠そうに目を擦るサスケの姿が。
「ごめん、起こしてしまったね」
「今日も任務?」
「そう。朝ごはん、いつもように冷蔵庫に入ってるから温めて食べてね。お弁当もテーブルの上に置いてあるから」
あの日から、龍厦はサスケを食べさせるために任務ばかりの生活になった。自分から三代目に仕事を増やして欲しいとお願いしたのである。
アカデミーの授業料や教材費は里が出してくれるが、ご飯のお金までは出してはくれない。当然、家の光熱費や個人的な買い物は自分たちで工面する。
サスケはアカデミー生でまだ自分の稼ぎはない。龍厦がやるしかないのだ。
その為、ほぼ毎日早朝からサスケの朝ごはんやお弁当を作る。そして寝ているサスケを置いて出て行く。夜も遅いことが多く、顔を合わせるのは休日や早く任務が終わった時などしかなかった。
「分かってるよ……。行ってらっしゃい」
ほぼ一人暮らしのような生活を送るサスケに寂しい思いをさせているのは分かっていた。
一緒に過ごせる日も笑顔は昔より減ったし、何かを考えていることが多くなった。
しかし、自分しかいないのだ。この生活を支えられるのは。
龍厦は見送るサスケに微笑みかけ、玄関を出た。
――……‥‥
任務ばかりの日々が始まった頃。同じ暗部のアサやタナシに「もう大丈夫なのか」と何度も心配された。
「何が?」と問えば「だって……あんなことになって……」ととてもはっきりとは言いづらそうに顔を歪める。
正直、龍厦自身は過去の事より今目の前の生活の方が死活問題なのだ。
それに、イタチが見せてくれた数々の出来事。イタチの身に掛かる辛さも痛いほどに分かっていた。一族が消えたことより、そちらの方に心が痛んでいた。勿論、父と母がいなくなったことも辛いものはあるが。
しかしイタチのことを誰にも言うことは出来ない。
ただただ、心配してくれる仲間に「もう大丈夫。ありがとう」と返すしかないのだ。
悩んだって、一族が帰ってくるわけでもない。仲間にいつものように接してもらい、任務を熟していくことがこれからの自分とサスケの生活支えることにもなる。
アサとタナシも次第に前のように接してくれるようになった。
――だが、問題は今日。任務の待ち合わせ場所に行くと、もうその姿はあった。
あの日以降、初めて会う。龍厦は一回、深呼吸をして近付いた。
「おはよう」
「!」
至って普通の態度だと思う。目を見開いた二人に龍厦は言葉を続けた。
「久しぶり」
「あー……そうだな。久しぶり」
目を逸らしたのは龍我だった。言いたいことは分かる。
気まずそうな龍我から視線を外し、今度はハナを見た。
「久しぶりだね」
ハナは一瞬息を呑んだが、すぐににこやかに対応した。
「……あー、えっと……もう平気か?」
「龍我!」
「いや、けどよ」
ハナの慌てた表情。龍我の納得がいかないような表情に、龍厦は首を傾げた。
「どうしたの?」
「いや、何でもねぇ」
「……何なの。気になるんだけど」
ここ数十日。幾度となく知り合いに会う度に同じような空気を感じて来た。
その度に、暗い空気が漂うのだ。
龍厦はいい加減はっきりしないその様子に苛立ちを覚えた。
眉間に皺を寄せる龍厦に、ハナがしょうがないというように息を吐いた。
「龍我と話し合ったんだ。龍厦にどう接するかってことで。どんな言葉をかけていいか分からないから、ずっと悩んでた。龍我は特にいつになく真剣にね」
「龍我が?」
視線を向けると、少し恥ずかしそうに顔を背けた。
「で、さっき漸く決めたの。別に普通で良いんじゃないかって。龍厦が来ても、いつものように接した方が良いんじゃないかって話になった」
「……」
龍厦は僅かに目を見開いた。
「でも、この馬鹿は。何であれほど話し合ったのに言っちゃうのか……はぁ……」
「っ、そうは言っても! 俺だって分かってた。けど、やっぱ龍厦の顔見たら何か言わなきゃって思ったんだよ。……全く触れないってのも、逆に気を使ってる感丸出しになっちまうから良かったんだよ!」
「開き直った……」
龍厦はそんな二人に救われた気分になった。
他の人とは違う。ずっと三人で組んで来たからか、この二人は龍厦のことを考えてくれていたのだ。
「龍我、ハナ」
「ん?」
「何?」
「ありがとう」
今度は、二人が驚く番であった。
目を閉じて微笑む龍厦の表情に、龍我は顔をほんのり赤めた。
「お、おぅ……」
「龍我、顔赤いよ?」
「! ハナ、うるせぇよ!」
しかし龍厦が目を開けた時、二人は別の意味で息を呑んだ。
その表情は真剣そのものだったからだ。これは任務の顔だった。
「そろそろ任務の詳細を話す」
今日は三人だけの任務だった。